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大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

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大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍
大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍 大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

リアクション

 その少し前の事。
 高円寺とセレンとセレアナ、柚とパートナーの杜守 三月(ともり・みつき)らのグループは江戸城近くの橋の近くの往来に居た。
 男性二人が近くで橋の上で聞き込みをしている傍ら、姫君の扮装の二人とお付きの侍女の扮装をした女性陣は橋の袂で二人を見ながら待っている。
「この方がお姫様とSPって感じで自然でいいかなーって思ったけど……
 ぶっちゃけ暇ねぇ〜っ」
 そう言いながら、セレンは折角の着物がはだける勢いで橋の欄干に体を乗せ、ごろごろ猫のように左右に転がっている。
「セ、セレン姫様。はしたのうございまする。ほら、ビシ! っとしてくださいませ」
 着物の直しだけは何とか阻止したいセレアナは、セレンをまっすぐ立たせる事に必死だ。
「(セレンったら、自分が何しに来てるのか判ってる?)」
 セレンの肩を掴んで姿勢を正させていると、まさにその隣に見本のように真っ直ぐ立っている少女が居る事に、
セレアナは少し恥ずかしい気持ちでため息をつく。
「ほら、柚姫様を御覧下さいな。 
 まだお若いのにこんなにしっかりなさって――」
「あ! セレアナ見て、あれ」
「セレンまだ話し中よ」
 セレアナが今扮している侍女のキャラクターを忘れかけていると、セレンはそれを聞かずに橋の真ん中まで走って行き、
欄干から落ちんばかりに身を乗り出し、どこかへ向かって手を振り回した。

「よーしーぱーらーさーーーーん!!」
 皆がセレンの手の降る方を見てみると、その先にあの資料の表紙に描かれていた姿が目に飛び込んできた!

 悪趣味なショッキングピンクの羽織に、某Mドナルドテーマカラーの如き黄色の着物とと赤い袴の組み合わせ。
 トドメに中学生男子が授業中に教科書の隅に適当に書いたような間抜け面。
 目を細めなければ見つけにくい程かなり遠くに居るものの、その見るものを不快にするほどの異様な出で立ちは、
大江戸将軍ランドのメインキャラクター”八代将軍吉刃羅”に間違いなかった。

 工事関係者を救出しようとして逆にミイラ取りがミイラになってしまった警備員達からの連絡は、
”こちらに変な機晶ロボットが走って来る! あれは……ヨシパラ!!?”の声と共に通信が断たれている。
 つまり警備員を駆逐したのは、この吉刃羅の可能性が一番高いのだ。

 ――このままではトラブルが起きてしまうかもしれない。
 そうすれば隠密行動をしてサーバーを止めに行くことは不可能になる。

「どうする? 警備ロボットにバレる前に奴だけでも叩くか!?」
「こっそり後を追って……」
 高円寺と三月が早口で言い合っていると、
「ってオイもう来てるぞ!」
 豆粒大の位置にいた吉刃羅が驚異的なスピードでこちらへ迫り、既に数件先の建物の横までやってきている。
「へー……。企画書を見た時は全部ふざけた企画だと思ってたけど、
 ”江戸城広場で毎日昼開催、俊足と目にも止まらぬ太刀筋で吉刃羅クンが悪党を懲らしめるスペクタクルアクションショウ”
 っていうのは案外まともに作られた企画だったみたいだ」
「こら海! 関心してる場合じゃないだろ!」
 二人が漫才をやっている間に吉刃羅はその横をすり抜け、あっという間にセレンの前に辿り着いていた。

「きたきた。ヨシパ」
 セレンが言い終わらぬ内に、吉刃羅はその機械の両手で彼女の口を塞いだ。
「ならぬ!」
 吉刃羅の発する怒号に緊張が走る。

 ――抜くか、否か。

 館内に入ってすぐに手に入れていた武器(とは言え土産用のような模造品ではあるが)に手を掛けようか皆が迷っていると、
次に続いたのは意外なセリフだった。

「余の本名を言ってはならぬゾ姫君!」
 言うと吉刃羅は手を離して続ける。
「今の余はより良い市政を築く為に本物の町人の生活を知ろうと、
”世をしのぶ仮の姿の貧乏旗本の三男坊、遊び人のパラさん”としてここで生活を送っているノダ。
 だから余の正体を明かさないよう、ぜひ今だけはパラさんと呼んではくれぬカ?」
「分かったわパラさん、ガッテンショウチノスケよ!」
「ありがとう名も知らぬ姫君よ」
「セレンフィリティよ、セレンでいいわ。こっちは侍女のセレアナ。
 そこのちっちゃ可愛い姫は柚よ。あの欄干の二人の男の子クンは従者の……」
「あー男はヨイヨイ」
「あれそう?」
「それにしても綺麗な姫達ダナ。
 こんな綺麗な女子に頼まれたら余は城も明け渡すかもしれんゾ!」
「(……飛んだ色ボケロボットね。それにこのいい加減さは誰かさん並みだわ」
 セレアナが呆れつつ二人のやり取りを見ていると、二人の輪にそっと柚が入って来る。
「あのぉ……。
 流石にお城は要らないんですが、お願いが……」
「ナンダナンダ? 可愛い柚姫殿ヨ。余に何でも申してミヨ」
「私、一度江戸のお城に入ってみたかったんです!」
「おお! 城に入りたいのか。余に任せておくがヨイ!」
 吉刃羅は右腕にセレンの肩、左腕に柚の肩を抱くと城に向かって歩き出す。


 セレアナと三月、高円寺はその後ろに付いて歩き、小声で話し合っていた。
「一時はどうなる事かと思ったけれど、何とか上手くいきそうね」
「うんうん。あとは城前で警備ロボットの動きを探ってるグループと合流して……。
 関係者の捜索は先輩達に任せてあるからまず大丈夫だろうし」
「そうね、警備ロボットの動きが分かれば侵入も容易いでしょう。
 こっちは吉刃羅と一緒で誤魔化しも利きやすい立場だし」
「その吉刃羅もオモシロイ奴だし」
「ええ、通信が途切れた時にその場に居たのは間違いないでしょうけど、さっきのセレンへの対応を見る限り、
行動はプログラムされていたらしいキャラクターのソレそのものだわ。
 この感じだと吉刃羅が関係者に手を出したとは考えにくいわね」
「セレアナさんの言う通りっぽいよな。な、海」
「……」
「海?」
「あ? 何?」
「何って……僕とセレアナさんの話し聞いてた? 吉刃羅が案外いい奴っぽいって……」
「そうか? 俺は別にそう思わないけどな。
 肩とか組んで妙に馴れ馴れしいし……」
 眉を寄せている海の視線の先は、仲良く会話をしながら歩く吉刃羅とセレンではなく、その反対側。
 セレアナと三月は顔を見合わせると
「……ぷ。 ははは」
「……ぷ。 ふふふ」
「……なんだよ? 何で二人とも笑ってんだよ」
「いや、何でって……」
「ねぇ?」
「何で俺の顔見て笑うんだよ! おい!!」