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大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

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大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍
大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍 大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

リアクション

 木戸の前で合流する少し前の事、刀真と月夜は情報伝達役を任されていた武尊から情報と自転車を貰ってカガチの元へやってきていた。
 武尊はパートナーを連れて色んなグループを回って彼らの情報を集めていたのである。
 そのグループ――アルツール、ヴァイス、透乃は目的は、それぞれパートナーと二人ひと組になって他の者たちと別行動していた。
 その目的はロボット達の行動パターン、プログラム等を秘密裏に探る事だ。
 ホストコンピュータを直す事が出来るのではないか? と自負する程そちらの技術と通じたヴァイスはもちろんのこと、
 幸いにしてアルツールのパートナーの司馬懿 仲達(しばい・ちゅうたつ)は機晶技術のスキルを持っていたので、
多少無茶をしても技術者の振りをしてやり過ごせるだろうという算段である。
 そして徒手空拳の使い手としては一流の技術を持つ透乃らは、くのいちの扮装に身を包み、二つのグループの間を渡歩きつつ、
彼らの背中ががら空きの間フォローするという役割分担だった。
 この三つのグループの連携プレイは見事に上手くいき、幾らかのロボットの情報を警備ロボット――ホストコンピュータにバレずに得る事が出来た。
 こうして得た情報は、囮として悪党ロボットを惹きつけていたカガチらに伝えるべく、自転車を手に入れ機動力のあった武尊に託されたのだ。



 まず武尊と又吉が向かったのは、悪窟国の隣のエリアにある、子供向けエリアだ。
 企画書の子供向けの猫のキャラクターが館内に存在していないように、このエリアもまた悪窟国よりまともに完成されていないようで、
”パラニャンの籠スクーター”という実際ターゲットが喜んでくれるのかすら怪しい子供騙し的なアトラクション一つだけが、
館内でもそこそこの大きさを持つ敷地の中にポツンと立っている。

「こっちだ!」
 耳に入った声に武尊が自転車のブレーキを握ると、キキキキと錆びた音を立てて自転車が急停止する。
 バランスが崩れそうになったところを両足の踏ん張りでなんとか抑え、声がした後ろを振り向けば、
パラニャンスクーターの入口にヴァイスのパートナーのセリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)が僧侶の扮装で立っているの見えた。
 セリカの手にはところどころ欠けてしまっているお椀が乗せられているので、一見すれば托鉢している僧のようで自然――しかし、
「列の奥の操作パネルのところだ」
 と、彼に小さく伝えられた場所へ向かうと、背中のコンソールボックスをむき出しにさせられた悪党ロボットと、
一通り仕事を終わらせたのか長い前髪をかきあげ一息ついている岡っ引き姿のヴァイスが居た。
 
 こちらに気づいたヴァイスはコンソールボックスの扉を開き、武尊の隣に居る武将のような甲冑を付けた三毛猫のゆる族、又吉を注視する。
「あーえーっとなんだっけ。えーー……ニャ●まげ!」
「違う」
「ええ?じゃぁひこ●ゃん」
「ちげーよ。てか●で巧妙に隠したつもりでも何も隠せてねぇし」
「ああ、あれか。ここのキャラクターのねこのやつ」
「ちげーっつってんだろ! つーかあいつ等全裸だから! 基本全裸だから! 生まれたままの姿で何も身につけてないからね!!」
「うん、知ってる」
「知ってんのかよ!」
「正確には首に鈴付けてるけどね。頭にはちょんまげとか兜とかもあるし」
「って随分詳しいな!」
「うん。この籠手型コンピュータの壁紙、鬼帝ちゃんだから」

 猫繋がりだった。


 そして嘘だった。



「この悪党ロボットのシステムはザル」
「……ざる」
「そ。コイツ解析してみたら何となく把握できた」
 話しを普通に聞き流しそうになりながら、武尊はある事に気がついてヴァイスの話しを止める。
「それって……君らどういうシステムかも分からないままロボット一台拉致しちゃったって事?」
「うん。人気のない所に誘導してセリカが捕まえて、オレがちょいちょいっとやって
 強制オヤスミモードになって貰ったら案外簡単にいったよ」
「簡単って……バレてたら今頃大騒ぎだぜ?」
「結果的に大丈夫だったからいっかーみたいな。ふはははは!」
「すげー度胸だな」
 誉められたと気を良くしたのか、ヴァイスはニッ歯を見せてサムアップすると話しを元に戻す。
「ロボット同士がどう繋がってるのか。ホストコンピュータと通信できるのかを調べてみたんだ。
 で。分かったのが、向こう……ホストコンピュータからはアプローチ出来るみたいでさ。
 実際配役っていうの? 幾つかのパターンから日替わり担当みたいに選ばれるシステムになってたみたいね。
 でもこの悪党ロボットからホスト側には報告や通信は出来ないな。そういうプログラムは見つからなかったから間違いないと思う」
「それっておるぁあああああ って壊してもいいってことか?」
「片っぱしからぶち壊しちゃってOK」
 と言いながらヴァイスは手にしていた模造十手でロボットの胴部分を突き破る。
「一応言っとくとココが弱点だぜ。
 あ。壊しといてなんだけど上手く使えば陽動撹乱にもイケっかなー……
 まあ兎に角、オレはセリカと”集合場所”に戻るから、連絡とか後は宜しく」
「分かった、オレも行くよ」
 挨拶の代りにサムアップして返すと、武尊は自転車に跨ってその場を後にした。




 次に訪れたのは警備ロボットを調べていた者のところだ。
 自転車でそれ程広くない館内を探した訳だが、彼らを見つけるには少々骨が折れた。
 何故なら彼らが一か所に留まらずにあちこちを転々としていたからだ。
 やっとの事で見つけた彼らは意外な場所で意外なものに乗っていた。
「ひゃっほおおおおお」
 年上の人間が、まして尊敬に値する人物だろうと踏んでいた人間が、はっちゃけ撒くって子供のように楽しむ姿を見るのは
若い武尊のガラスのハートにはややでかめのダメージだった。
「む? なんだもう終わりか……
 まあ、タダだから仕方ないか」
 ”お江戸のカルーセル”の回転するお馬さんから下りて来たのはアルツールと仲達だ。
 英霊としてとてつもなく長い時を過ごしてきたオッサンと生真面目そうなオニーサンは、二人揃って仲良くメリーゴーランドに乗っていたのだ。

「なんだ、君達か」
 アルツールが彼のパートナー程はっちゃけていないのは、彼の眉間に刻まれている深い皺が証明しているが、
彼の首を囲む襞襟の妙なデカさと、衣装の煌びやかさが現代では何故かその表情すら間抜けに見せてしまう。
 これは勿論和装より洋装が彼に似合うから、ではなく
「このギリギリの線を狙えば、コンピュータはこちらを異分子かどうかを見極めるために、
 長時間に渡り監視と思考のリソースを割かざるを得ないはず」
 という彼の冷静な判断と作戦によるものである。
 そんな訳で仲達もテイストは違うものの、南蛮装束に身を包んでいたのだ。
 しかし見つけた時に二人はアトラクションを満喫中で、館内を必死こいて自転車をこぎ回っていた武尊からすれば、
楽しそうに遊んじゃってちくしょーってな具合である。
 そりゃまあ一言言いたくもなった。
「しかし何でこんなあっちこっち回って……」
「見てわからんのか」
 知的な表情をちっとも崩さずに言うアルツール。
 しかし武尊と又吉が素直に言われた通り見てみても、その出で立ちはふざけた格好で遊園地を満喫する怪しいオニーサンにしか見えない。
 眉根を寄せて考え込んでいると、仲達がフォローをするように口を開く。
「それは貴公、タダで遊園地を楽しんでついでにコンピュータをおちょく……もとい混乱させ」
「向こうはこちらがボロを出したらすぐに排除にかかりたいはずだ。
しかし、こちらは普通にアトラクションを巡っているだけからボロが出るはずが無いというわけだ……」
 仲達のおふざけに若干被り気味になりながら、アルツールが武尊の手に本人も気づかぬ内に握らせたのは
「監視カメラロボの位置だ。
 浮力を持って飛んではいるが、一台が動いて映すのは左右10メートルもない。
 これらは数も数える程しか無かったな。特に関係者入口、搬入口の類は警備が薄い。
 このロボットが重点的に回ってるのは館内の入り口、江戸城の入口、それに万引き等が多発しそう……だった予定の店の中くらいだ。
 何台か惹きつけて上手く”会話”してみたが、会話がまともに成り立ったのは俺達が恐らくロボットの監視映像に映っている時と、
職質を受けた時だけだ。
 そこからみてホストが情報源にしているのは映像と、職質等の会話のみの情報とみて間違いないだろう」
「え、ええっと……」
 話しに今一付いていけなくなった聞き手側が首をひねっていると、アルツールは少し表情を和らげて
「危険な行動をする時は搬入口等の近くで、その際監視映像に映らないよう行動する事。
 他のタイプの警備ロボットは、成るべく周囲を気にして職質をされないよう接触を避ける事。
 その他の警備ロボットの種類は地上を走行している対テロ用のモデルで、頭部と言うのが正しいのか分からんが、
上についたメインカメラで周囲を見ているらしい。装備はビーム兵器と特殊警棒が確認できたが、こちらは我々が怪しい行動を取らなければ問題ないだろう。」
 と、噛み砕いてやる。
「後はそれを皆に伝えるって事だな」
「ああ、先ほど悪窟国というエリアに樹月 刀真達が応援に向かったようだからそちらを先に――」
 会話の途中だったのだが、

 ――トスッ

 と音を立て、風車が地面に突き刺さってきた。
 彼らのサポートをしていた透乃からの合図だ。
 そろそろ時間切れ――反対側を見回っていた監視ロボットがこちらに来ている、という事だろう。
「……では後ほど集合場所で」
 言いながらアルツールと仲達の二人は向かい側のアトラクションの建物へ姿を消した。



「と、言う訳で武尊の話によると悪党ロボットは倒しても問題無かったそうだ」
「へぇ。そいつは好都合だったな」
 カガチは樹月の説明を受けながらドクターハデスを追って歩いている。 
 向かうのは件の集合場所、


 江戸城だった。