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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。

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 面を取ってみれば、とてもこんな悪事を働くように見えない、優男だ。
「なぜ、こんな事をしたんですか?」
 竜胆は尋ねた。
 ウサギ小僧は答えようとしない。
「なぜ、黙ってるんですか?」
 しかし、やはりウサギ小僧はなにも答えなかった。
「ふうーん。なかなか強情だな」
 オルフィナはにやりと笑うと、ウサギ小僧の急所をつねる。
「これでも、強情はれるか?」
 何やら、楽しげだ。ウサギ小僧は一瞬動揺しながらも、眉をひそめて耐えている。そのウサギ小僧にオルフィナ
は更なる罰を加える。しかし、ウサギ小僧は決して口を割ろうとしない。
「ほんとに強情ね」
 セフィーがつぶやいた。そして、
「狼をこれ以上怒らせない方が身の為よ。ウサギさん……」
 と、オルフィナとともにウサギ小僧をお仕置きする。
 その側でエリザベータは剣を抜いて構えていた。正直、オルフィナとセフィーの妖艶な尋問に赤面しそうになる
がプライドで耐えている。

 そこへ、十兵衛が中条小町や天女、そして菊屋を伴って現れた。その背後にはダリルやグラギエスらの姿もある。
 天女はウサギ小僧を見るや否や駆けよって哀願した。
「たのむから、金を返してくれ。あたしにとって、この仕事は重要なんだ。人形師としても成長できるチャンスな
んだよ」
 しかし、ウサギ小僧は答えを与えずせせら笑うだけだ。
 中条小町は冷ややかに言った。
「このような虫けらと話す必要ありません。さっさと奉行所に突き出してしまいましょう」
 その言葉に、ウサギ小僧はつばを吐く。
「突き出したきゃ、とっとと奉行所でもなんでも突き出せよ。すぐに牢抜けしてやるさ。みんな協力してくれるぜ。
なにしろ、俺は義賊様だからな」
 その態度に腹を立てたのか、
「君は、理論づけて俺は悪くないみたいなことを言ってるけど、やってることは泥棒に他ならない。菊屋が悪事を
展開しているという濡れ衣をかぶせて、自分の人気取りをやろうとしているようにしか見えないよ。奇麗事を言っ
ていても君は泥棒という悪党だ。悪事からは足を洗った方がいい」と、永谷が怒る
 さらに、フレンディス・ティラが言った。
「私はウサギ小僧さんの行いに対して罪を問える立場ではありませんので、奉行所に突き出す事は決して致しませ
ん。必要悪もしかりと考えておりますしただ、事の真相を知りたいのと忍びの力を悪戯に使う事が許せないだけで
す。如何な理由であれ忍びの力を用いて悪戯に世間の皆様にご迷惑をおかけしてはいけません! 事情を伺いたい
です。教えて下さい。なぜ、このような事をしたのですか?」
「そこまで言うなら教えてやるさ。俺の懐にあるモノをとってみろよ」
 天女がウサギ小僧の懐に手を入れ、そこには薄い冊子があった。取り出してみて天女は驚く。それは、天女から
盗んだ設計図だったのだ。
「あんたら、外の世界から来た奴らだろ? だったら、その設計図がなんだか分かるよな」
 ダリルがそれを見て言った。
「これは、機晶姫の設計図だな」
「そうだ」
 とウサギ小僧はうなずく。
「そいつは、その女に機晶姫ってのを創らせようとしていたんだ」
「なるほど、それで千ゴルダもかかるわけか」
 一同は納得した。
「しかし、それの何が問題なんだ? 我々の世界では機晶姫は当たり前にいるが……?」
 ダリルの言葉にウサギ小僧は中条を指差して答えた。
「こいつが何の目的で機晶姫を創ろうとしてるか分かるか? 葦原を火の海にするためだ。殺人兵器としての機晶
姫を求めてるんだ。この男は、恐ろしい狂人なんだ。今までも多くの人形職人を騙して殺人用のからくり人形を創
らせて来た事だ。将来的には、それを殺人兵器として使い、葦原城下を火の海にするつもりなんだ。そんな事は許
せないから、材料費も設計図もすべて盗んだ。これで説明完了。OKか?」
「殺人用の?」
 天女は中条小町を見る。
「本当ですか?」
「騙されるな。全てはこの悪党の戯言だ。それが本当だと言うなら証拠を見せてみろ」
 すると、ウサギ小僧は言った。
「証拠が欲しきゃ、地下牢を探してみろ。今まで、開発に加わり失敗した職人達が閉じ込められてるはずだぜ」
 その言葉に応えるように、声が聞こえた。
「探すまでもないぜ」
 見ると、宵一達が閉じ込められていた男達を連れて来る。
「例の地下工房のさらに奥に地下牢が隠されていた。この人達は、そこに閉じ込められていたんだぜ」
 青ざめる中条小町に、ウサギ小僧が言った。
「さあ、これでも嘘だって言うんなら、言い抜けしてみろよ!」
「くそ……」
 中条小町は刀を抜き、家臣どもに呼ばわった。
「こいつらは、くせ者だ。皆殺しにしてしまえ!」
 刀を抜き、襲いかかって来る家臣達。
 しかし、契約者達の敵ではなくあっという間に倒されてしまった。

 こうして、全てが終わると、ウサギ小僧は天女に言った。
「分かったか? お前は騙されてたんだよ」
 そして、設計図を破ろうとする。
「こんなもの創らせるもんか」
 天女はウサギ小僧の手を掴んで言った。
「待って。破らないでくれ」
「どうしてだよ」
「あんたには、悪いけど、やっぱりあたし、その機晶姫っての創ってみたいんだ。人形師としての血が騒ぐのさ。
バカだって思ってもらってもいいよ。でも、約束する。殺人兵器になんぞ決してしないから……だから、それ、破
らないで返してくれ」
「けど、機晶姫というのを創るのにはお金がかかるそうですよ」
 竜胆の言葉に。
「それでもいいんだ」
 と天女は答える。
「あたし、この設計図を見た時わくわくしたんだ。金なら、自分でなんとかするさ」
 ウサギ小僧は、しばらく考えた後一枚の地図を天女に差し出した。
「なんだ? これ」
「地図さ。そこに俺の隠した金が埋まってる。2千ゴルダはあるはずだ」
「え?」
「俺からの寄付さだ。使うも、使わないもお前の自由にしな」
 それから、驚く一同の目の前で、ウサギ小僧は雲のように姿をくらましてしまった。