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ローズガーデンでお茶会を

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 そろそろ、時計の針が夕暮れ時を示している。
 天海 北斗(あまみ・ほくと)は、レオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)と共に庭を散策して居た。
「そろそろ冷えてきたな、戻るか」
「うん……そうだな」
 レオンの言葉に、北斗は少し残念そうに頷く。北斗は、雨さえ降らなければ問題無く活動できるが、レオンはそうもいかないだろう。寒そうに上着のポケットに手を突っ込んでいる。
「な、レオン。これ、渡したかったんだ」
 そう言って、北斗は隠し持っていた包みを取り出し、レオンに差し出した。
「お、バレンタインチョコか?」
 嬉しそうなレオンに、北斗も頷く。
「へへ、ありがとな。じゃあ、俺からも」
 そう言ってレオンは、ポケットに突っ込んでいた手を取りだして、そのままげんこつを北斗の方へ突き出した。
「??」
「いいから、手出して」
 ぎゅっと握られたげんこつの中に入りそうなものといったら、小さな一口チョコレートくらいなのだが。ちょっと不安になりつつ、北斗は言われたとおりに手を差し出した。
 すると。
 チィン、と金属同士が触れあう音がして、小さな物が北斗の手の中に落ちてきた。
 おそるおそる、手の中を見ると。
「レオン、これ……!」
「誕生日のお返しだ」
 北斗の手の中には、シンプルなデザインの、銀の指輪が握られていた。男性が付けても違和感の無いような、少しゴツめのデザインだ。
「ありがとう、レオン! 大切にする!」
 へへ、とレオンは少し照れくさそうに笑った。



 遠き山に日は落ちて。というには少々早いが、ティーパーティーには少々遅いくらいの時間だ。ディナータイムになってしまう。
「皆様、今日はお集まりいただき本当にありがとうございました。トラブルでご迷惑をおかけして申し訳なく思います」
 ホールでパトリックが挨拶をし、本日のパーティーはこれにてお開きとなった。

 そんな中、三々五々散っていく出席者達の人波に逆らうように屋敷へ向かう一つの影。
 漆髪月夜と玉藻前のパートナー、樹月 刀真(きづき・とうま)だ。パートナー達がパーティーに行ってしまったので、一人で買い物に出ていたのだが、そろそろ終わる時間だからと迎えに来た。
「あっ、刀真!」
 玉藻と二人で歩いていた月夜は、刀真の姿を見つけるとぱっと掛けだした。
「お帰り、月夜……?」
 笑顔でパートナーを迎えようとした刀真だったが、いきなり月夜に飛びつかれて言葉を失う。
 月夜は無言のまま、ぎゅーっと刀真に抱きついている。
 なんか、前もこんな事があったなと思いながら、刀真は月夜の後ろから歩いてくる玉藻に目を遣った。
「何かあったのか?」
 しかし玉藻はその問いには答えず、ふふ、と穏やかに笑っている。
 そして二人の元まで歩いてくると、おもむろに刀真の背中に抱きついた。
 ハーレム状態……と言えば羨ましい限りだが、どちらかというと、ちょっと押しくらまんじゅう状態。
「な、なんだ?!」
 目を白黒させる刀真の、右手を月夜が、左手を玉藻が取る。
 手を繋いだ三人の影が、夕日を受けて長く伸びた。


「結構、楽しかったわね」
 満足そうに笑っているのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)。隣にはセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の姿もある。
「そうね。たまには悪くないわ」
 セレアナはそう言って笑うと、おもむろにセレンフィリティに抱きついた。
「ちょ、どうしたのセレアナ?」
 いつもはセレンフィリティの方から仕掛けるばかりなのに、珍しくセレアナの方から抱きついてくるものだから、驚いてしまう。
 そんなパートナーの驚いた顔に少し満足そうに笑ってから、セレアナはパートナーの唇へとキスを降らせた。どんなチョコレートよりも甘くて、愛の言葉よりも優しいキスを。
 今だけは、周囲の視線も気にせずに。


 結局、神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)たちは厨房の片付けまで手伝っていた。
 もうホールに人は残っていない。紫翠と、シェイド・ヴェルダ(しぇいど・るだ)が残っているだけだ。
「お疲れ様でした、シェイド」
 先ほどまで机や椅子の片付けを行っていたシェイドに、紫翠はホットチョコレートの入ったカップを差し出した。お手製だ。
「ああ、ありがとう、紫翠……」
 シェイドは差し出されたカップをゆっくりと傾ける。一日中カップルだらけの空間に居た所為で、少し当てられてしまったようだ。
 ちょいちょい、と紫翠を手招きして、正面からぎゅっと抱きつく。
「シェイド? どうかしましたか?」
「疲れた。……少し、充電させてくれ」
 その一言で事情を察したか、紫翠ははいはい、とシェイドの背中を軽く撫でてやる。
「今夜は覚悟しておけよ?」
 甘やかされながら、シェイドは紫翠の耳元で囁いた。
 え、と驚いた紫翠が顔を上げたところで、不意打ちのように唇をかすめ取る。
 一瞬紫翠は目を見開いて硬直すると、一呼吸のあと、その場にへなへなとへたり込んだ。不意打ちは、苦手だ。
「あ、おい、大丈夫かよ?」
「あ……ちょっと……腰が」
 抜けた。
 暫く立ち上がれそうに無い、と告げると、シェイドはクスッと笑って、その場にしゃがみ込むと、紫翠の体を姫抱きの格好で持ち上げた。
「あ、あの、重いですから……」
 耳まで真っ赤にした紫翠が、消え入りそうな声で言うが、シェイドはそんなこと微塵も気にしない。
「俺の所為だろ? 責任は取るぜ……ベッドまでお連れしよう、姫」
 ちゅ、と頬に唇で触れると、いよいよ紫翠は頭の先から湯気を出しそうな勢いで赤くなり、シェイドの胸に顔を埋めてしまった。姫じゃ無いです、と消え入りそうな声がするが、もはやシェイドの耳にさえ届かないほどだ。
 そして、二人はそのままの体勢で家主に挨拶をすると、屋敷を後にした。


「ふぅ……これで片付けも終わったわね」
 来客全員を送り出したののが、うーん、と背伸びをする。
 片付けの点検を行っていたパトリックも、やれやれ、とため息を吐いた。
 辺りはもうすっかり暗くなってしまった。

「今日はお疲れ様、のの」
「お互いにね、パトリック。さ、本番はここからようふふふ……」
「……は?」
「今日撮りまくった写真の数々を!!」
「あ、ずるッ、お前いつの間に! 俺の分は!」
「有るわけがないッ!! パソコンに取り込みまして!!」
「オイ、流出したら大騒ぎだぞそれ!」
「だいじょーぶネットには繋がっていないパソコンだッ! 眺めまくりまして!!」
「ちっくしょー! どーも今日一日影が薄いと思ったらそーゆーことしてたのか貴様!!」
「次の新刊のネタ出しよぉ! ほほほほほほ!!!」

 ……屋敷の夜は、更けていく。



―幕―

担当マスターより

▼担当マスター

常葉ゆら

▼マスターコメント

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
いつもに増してコメディタッチの強いリアクションとなりました。基本的にはアクションの意図からは外れていないと思うのですが、コメディ色豊かに脚色させて頂いております。お気に召していただけますかどうか、ちょっとドキドキしています。

さて、今回はダブルアクションをオッケーした都合上、一人の方があっちこっちに顔を出しているパターンがちょいちょいございます。どうぞ、全体を通して読んで頂ければ幸いです。

書いている最中にはマスコメにアレ書こうコレ書こう、って思いながら書くのですが、書き上げてしまうとぽーんと飛んでしまいまして。何か思い出したら、マスターページの方に記載致します。

あ、ラストページの、ののの所行についてはまあ、ギャグということで大目に見てやってください。その写真で男性同士カップルを強請るとか、そんなことはありません(笑)……ってとこまで書いて、そんなシナリオも面白そうだなぁとか……思ってない! 思ってないよ!! ぜーんぜん思ってないんだから!

それでは、また次回作でお目もじ出来れば幸いです。
ご参加ありがとうございました!