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取り憑かれしモノを救え―救済の章―

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取り憑かれしモノを救え―救済の章―

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●結界を破壊せよ!

 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は【トレジャーセンス】に反応する勘を元に先頭を走っていた。
 勿論先頭を買って出たのには訳がある。
 資料を見る限り、玉石の形は宝石そのもので、安置されている場所は遺跡の中だという。
 もしからしたらトラップがあるかもしれない。
 でももうずっと隠されてきていた遺跡だから存在していないかもしれない。
 分からないなら、事前に準備をしておくべきだと思ったからだ。
 最短ルートで一直線に。
 他の空き部屋にはわき目も振らず、
「うん、もうすぐみたいだよ」
 後ろからついてきているメンバーに向かってそう言った。
 そうして、遺跡の最奥。
 床には大きく魔法陣が描かれ、中央には、ミスリルの塊があった。
 不自然な形で埋め込まれている血のように赤い宝石を見て、リアトリスは確信した。
「これが、赫玉石……」
 不用意に近づこうとして。
 ゴゴゴと地鳴りにも近い音が辺りに響く。
 ミスリルの塊が盛り上がり、リアトリスの身長の倍ほどの大きさまで膨れ上がった。
「……これが守護者か」
 どこか身軽そうな形状で、右の瞳が爛々と赤く輝いていた。
 しかし、あちこちが風化しているようで、動くたびにミスリル粉が舞い散っていた。
「取り返しのつかないことになっちゃう前に、倒そう!」
 促すようにリアトリスは言った。

     †――†

「確か集会所に戻ってきたのがこっちですから……こっちの方でしょうか……あれ……?」
 そんなリオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)の独り言のような台詞を耳にしながら一同は森の中を進んでいた。
「本当にこっちで合っているのだろうか……?」
 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)清泉北都(いずみ・ほくと)に聞いた。
「うーん、リオンに任せてみれば案外早くつくかなっと思ったんだけど」
 先頭はリオンに任せ、迷子作戦を展開していたのだが、どうも成果は芳しくない。
 道無き道をただひたすら進む一行は、ただただ体力を消耗していた。
「そうですね……確かあの時はリオンを探していましたから」
 村にいたはずなのになぜ森に出てるんだ、という突っ込みはこの際しない。
 方向音痴は得てしてワープ機能を搭載しているものだ。
「地図を広げてみましょう」
 一行は立ち止まりおもむろに地図を広げる。
 ちょっとした探索魔法の応用で、現在地が表示されるようにした地図は、大まかなところ翠玉石の在り処へと進んでいるようではあった。
「大体は合っているようですが……」
 なぜ行き着かないのだろうか。沼地の中にある湖。それだけでも奇妙なものなのに。
 現状では北都の【禁猟区】も何も反応を示さない。
 これは害意に反応する結界だから、現状何の危険も及ばない工程では意味を成さない。
「あっ!」
 北都が声を上げる。
 何かがきらりと光った気がする。
「あっちで何か光ったみたい。行ってみよう!」
 そういって、北都はリオンの手を引きそちらの方へと向かっていく。
「行きましょう」
 涼介もそれにならい後を付いて行く。他の討伐メンバーも同じだ。
 目の前に広がるのは、そこそこに大きな澄んだ湖だった。
 沼地と資料には書いてあったのだが水は澄んでいる。それは、泥が完全に湖底に沈殿しているせいだった。
 そして、湖底と思しきところに明滅する翠色の美しい宝石があった。
 その場いる全員が、確実にそれを翠玉石と認識していた。
「――来る!」
 【禁猟区】が知らせる警鐘を北都は告げた。
 そうして、盛り上がる湖面。
 ゼラチン質の物体がぷるんと揺れる。
 飛び出す水分が、辺りを煙らせる。
 とても巨大なスライムだった。中心には核と思わしき物。翠玉石ではなさそうだった。
「行きましょう……」
 涼介が静かに呟く。それが戦闘開始の合図だった。

     †――†

 目印は大型魔獣の死骸。今では風化し骨だけになっていて、ソレすらもぐずぐずに崩れてしまっているかもしれない。
 赤嶺霜月(あかみね・そうげつ)は調査情報を元にそう考えていた。
 道すがらの護衛として、または説得を試みるものの邪魔をしようとする輩の排除まで考えた。
 だが、その心配は杞憂だったようだ。
 皆に戦意は無い。あるのはただ話をしようと思う心意気だけだった。
「このまま真っ直ぐで大丈夫ですかね」
 霜月は一度立ち止まり言う。
 露払いもかねて地図を持ち先頭を歩いていた。
「ええ、大丈夫ですよ」
 紫月唯斗(しづき・ゆいと)が言った。
 襲い掛かってくるような魔獣もいない道中、最短ルートで突き進んでいる。
 間もなく目的地だった。