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ゾンビ トゥ ダスト

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ゾンビ トゥ ダスト

リアクション

「いやはや、爽快な数ですね。あまり見れた光景ではありませんが、悪い意味で」
 空からゾンビを見下ろしているのは緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)。その光景に圧倒されることもなくただただ見下ろすばかりだ。
「……ひどい臭いですね。これから長時間、これと付き合うことになるとは考えたくもありませんが、仕方ないですかね」
 愚痴を一つこぼしながらも、魔法の詠唱をする遙遠。
「でもまあ、知人にも暴れられている姿を幻視されているようですし、存分に暴れてやりましょうか。それじゃあはい、ブリザードっと」
 一帯に氷の嵐が巻き起こる。複数のゾンビたちを巻き込みある者は傷つき、またある者は凍りつく。瞬く間に遙遠の周りにいたゾンビたちは無力化されてしまう。
「まあ、ゾンビからの攻撃はないものの、臭いまでは防げませんね……。なるべく凍らして戦いたいところですが、せっかくもらったこの聖水も使わないとですね」
 聖水が入った無数の小瓶。特殊部隊の一人からもらったもので、これをどう使うかはもう一つしかないだろう。
「人間にとっては恵みの雨かもしれませんが、あなたちには地獄でしょうね。でも、遠慮はしませんよ? それでは即席攻撃、聖者の涙ってところでしょうか」
 勢いよく、ゾンビが多いところまで移動した遙遠。そこで抱えていた聖水入りの小瓶をばら蒔く。それを上からアイシクルエッジで小瓶を破壊。
 中から零れだす聖水はゾンビを焼き、アイシクルエッジもゾンビを制する。
「これはまた、効きそうな限りですね。聖水もまだありますし、今回は倒す、ではなく固めて行きましょうか」
 そう言う遙遠は【ブリザード】と即席スキル【聖者の涙】の併用で空を駆け回り、ゾンビたちに攻撃していく。暴れていることには変わりはなかった。

 最前線で暴れているカガチの少し後ろでも銃で猛威を振るう者が一人。佐々良 縁(ささら・よすが)だ。
「さあさあ、今日はおおばんぶるまいだから遠慮しないでねー!」
 こちらも飛行アイテム、ストロベリースターに乗り空から空爆のごとく攻撃をしていたのだ。
「鉛弾の雨なんて素敵だよね? 喜んでいいんだよー、ゾンビ君たちよー」
 そう言いながら【クロスファイア】、【ストロベリーステップ】でゾンビたちに鉛弾の雨を降らせていく縁。
 先ほどの遙遠と同じくその姿は、単機で空爆を持続的にする恐ろしい兵器の姿に見える。その姿を見かねた点喰 森羅(てんじき・しんら)がやれやれといったふうに注意をする。
「あまり前に突っ込んで、仕事を増やすんじゃないぞ? この後もわんさかと出てくるのだろうから、おちびの助けをしていられるほど暇じゃあなくなる」
「おーい、遙遠さんも縁ちゃんもなるべく狙いはつけてくれよー?」
 前にいるカガチからも注文が届く。が、
「大丈夫大丈夫、ちゃんと狙いはつけてるよー大まかにっ☆」
「大まかにっておちび、それは狙ってないとも言うんじゃ」
「平気だって! もし当たりそうになってもかがっちゃんなら余裕でよけられるだろーしぃ、細かいこといってないでさっさと蹴散らしに行かないとー」
 森羅の言うことも聞かずどんどん前へと出てゾンビを打ち倒していく縁。
「東條くんはそうだろうが、他の契約者はそうではないかもしれないだろうに」
「私はかがっちゃんの援護だからそっちのほうまで行かないよー、それにみんな強そうだから無問題っ」
「援護するものが援護されるものより目だって戦うなど、前代未聞だろうに」
「細かいことは気にしない☆ さあ次いってみよー!」
「細かいことって……そういうものかねぇ」
 もはや制止も聞かないだろうと森羅も注意するのをやめ元の魔鎧形態に戻った。
「それにしても打っても打っても出てくるなんてすっごいなぁ、でもこれなら打ち放題だよね! よーし、目指せ100点満点だー!」
 こうして、どうなったら100点になるかは縁次第の狙撃ゲームが始まったのだった。

「既に各地点での迎撃が開始されているようだな。我々も後れを取らぬよう、邁進するぞ!」
「それはよいのですけれど一人、錯乱気味の者がいますよ?」
そう話す月島 悠(つきしま・ゆう)浅間 那未(あさま・なみ)の横では、狂乱気味に暴れている麻上 翼(まがみ・つばさ)がいた。
「うあああ、なんでボクが最前線なんですか! こういうのはだめだって言ったじゃないですか!」
「それどころではないのだ。この緊急事態に好き嫌いで戦線を変えるわけには行かないだろう。覚悟を決めろ、翼」
「無理無理無理ですよー! だってあいつら土に埋まってたのに、いきなり蘇ってきて人を襲うんですよ? ありえないじゃないですかー!」
「とか言っている間にも間を詰められて、もう眼前にいるわけですがどうするのですか?」
「ふむ、ではこうしよう」
 そう言った悠は狂乱気味の翼の背中をどんっと押した。
「へっ?」
 押し出された翼の前には、無数のゾンビ。一瞬止まるものの、泣きそうな顔でガトリングを構え、掃射する翼。
「うわぁー!! くぅーーるぅーーーなぁあーーーー−!」
 恐れを攻撃に転じさせ、嵐のような掃射が始まる。その驚異的な攻撃の前にゾンビたちは次々に塵へと変わり土に還って行く。
「うむ、期待した通りの戦果だな」
「さすがです」
「ふざけないでよー! こっちは今にも逃げ出したくて堪らないんだよ!? というかもう逃げてもいいかな!?」
「戦線離脱は許可できない。いいか? 私たち三人の任務は、後ろにゾンビたちを行かせないことだ。我らが抜かれれば負けるものと思え!」
 そう言いきった悠も光条兵器『ガトリング砲』を装備して、翼の隣に立つ。その後ろでは二人のバックアップを担当する那未が構えている。
「理想的な布陣だ。だが、翼がいなくなればそれも無に帰す。だからもう一度言うぞ? 戦線離脱は許可できない」
「そんなこと言って流れ弾に当たっても知らないよ!? いいのー!?」
「大丈夫だ、お前なら当てはしないと信じている。それに当たったとしても那未のヒールがある。何も問題はない!」
「だ、そうです」
「なんでそんなに冷静なんだよぅ!」
「巫女なので」
「関係あるかー! うぅ、もうこうなったらヤケだーって近い近い! うわあああー、くるなってばあああぁあぁ!」
「打ちもらしたゾンビは任せたぞ、那未」
「了解です」
 半狂乱の翼をうまく扱いながら、攻撃を始める悠。打ち逃したゾンビは那未が二刀を持って処理していく。
「いいぞ二人とも! いい働きだ!」
「お褒めに預かり光栄です」
「光栄じゃなくていいよー! むしろ後衛がいいよー!」
「却下だ! さあ撃てー!」
「うあーん! 怖いよー!」
 攻勢は有利なのにも関わらず翼の恐怖は和らぐことはなく、荒れた大地にはゾンビの断末魔と翼の泣き声が木霊するのだった。