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ゾンビ トゥ ダスト

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ゾンビ トゥ ダスト

リアクション

「残念、ここから先は通せないのよ」
 像を破壊しようとしたゾンビを、改造した聖七枝刀で切り払う。数体のゾンビは一瞬で真っ二つになり、塵へと還っていく。
「最後の最後をとっておくものなのよ、人間はね!」
 そう言って像の前に仁王立ちするのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。今までは対ゾンビの罠の作製や武器の改造などを行っていた。
 彼女の作った罠はゾンビたちを効率よく倒し、また彼女が改造した武器も数多くオフェンダーもディフェンダーも陰ながら支えていたのだ。
 そして今、ルカルカは像の前で聖七枝刀を地面に刺して、像の守護者となっている。通れるものなら通ってみろ、と言わんばかりに。
「ルカ! 平気か!」
 ルカルカの隣に現れたのはパートナーであるカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)でだ。
「うん、平気。でももう温存してる場合じゃないね、行こう。カルキノス」
「使わず済めば良かったんだが、そうもいかねぇよな……よし。乗れ、ルカ!」
「ええっ」
 そして二人が乗り込んだのはカルキノスが持っている飛空挺だ。こちらも武装を対ゾンビ用に改造されており、最後の切り札として使う予定だったものだ。
「……あと少しで夜が明ける。だから、ここで負けるなんてありえない!」
「その通りだ! さあ、あいつらに拝ませてやろうぜ! 忘れちまったであろう、綺麗な朝日をよ!」
「うん!」
 ルカルカは照準を定めて、トリガーを引く。刹那、浄化爆弾化されたミサイルポッドが射出されてゾンビの群れの中央へと向かっていく。
 着弾後、爆発。爆心地からかなりの広範囲を攻撃し、湧き上がるゾンビたちを一掃する。また、仲間の近くにいるゾンビには聖水散布機での攻撃で対処する。
 最後の砦に相応しい活躍で、仲間を空から支援するルカルカとカルキノス。
「いい調子だが、まだあとちょっとってところか!」
「でも大丈夫な気がするの、負ける気はしない。私は、絶対、この地が緑になるって信じてる。信じてるからこそ、まだ戦える!」
「ああ、まったくその通りだ! まったくもって、その通りだ!」
 二人で勝利だけを信じて、空からの攻撃を続ける。二つの像を守るために、仲間を守るために、ルカルカとカルキノスは空から戦い続けるのだった。

「おお、ありゃすごいな! 俺もあれくらい改造できるように慣れたら本望だな!」
「言ってる場合ですか? あれだけの戦力を持ってしても私たちの不利は変わってはいないのですよ?」
「それがまた面白いところだな。ヴァントロアも改造してみて結構役に立ってると思ったんだけどな」
 そう話すのはアンリ・ベルナール(あんり・べるなーる)カトルヴァンユイット ヴァントロア(かとるばんゆいっと・ばんとろあ)の二人だ。
 アンリは特殊部隊として、ヴァントロアはそのアンリを守るためにこの作戦に参加していた。
 最初は後ろで、ルカルカたちと共に武器の改造などに従事していたが今はヴァントロアのミサイルポッドの補充をしている。
「んあ、これどうなってるんだ? あんまり時間は掛けられないってのに」
「不調ですか?」
「不調も不調だ。何が立ちが悪いって、何がおかしいのかわからないのが一番立ちが悪い」
 アンリが苦戦していると、その横からひょこっと表れた人物がいた。同じく、特殊部隊として動いていた朝野 未沙(あさの・みさ)だ。
「それって、もしかしてここが原因じゃない?」
「んあ? ……おお! 本当だ、そうかここが悪かったのか。いやあ、助かったぜ」
「聖水とかは……仕込んであるみたいだね」
「何とかな。自力でやってみるもんだな、中々うまくはいかないけどな!」
「難しいよね。って立ち話してる場合じゃないない! あたしも行かないと!」
「行くってどこにだよ? この戦線の真っ只中にか?」
 不思議そうに未沙を見るアンリ。そんなアンリを見て、少しだけ不敵に笑って未沙はこう言う。
「うん、今から素敵な光景が見えるから、よーくみててね!」
 途端に、未沙の体が空へと浮かぶ。否、浮かんでいるのではない。乗っているのだ。
「こ、これは……あっはっはっは! こいつは素敵だ! いいもん見せてもらったぜ!」
「……壮観ですね」
「おうおう、お前もいってこい! あの特殊空挺部隊と肩を並べてミサイルばかすか打ってこい!」
「了解です」
 そうしてアンリはヴァントロアを送り出す。
 アンリの目にはすばらしい光景が映っていた。
 自分が改造したパートナーと、ゾンビを黄泉へと送る二機の飛空挺の姿を。

「ちょっと先を越されちゃったけど、私もいっくよー!」
 勢いよく聖水仕様のミサイルをゾンビめがけて打つのは本日二機目の飛空挺に乗る未沙が叫ぶ。ルカルカの飛空挺と肩を並べて、空から仲間たちを協力にバックアップする。
「ほーらほら! 二機目のヴォルケーノに勝てるもんなら勝ってみなさいよ!」
 景気よくミサイルを打ちまくる未沙。その未沙にルカルカが話しかけてくる。
「まさか二機目がくるなんてね! 驚いたわ!」
「本当は私が最初だったんだけどね! でも結果的に面白い形になったんだから全然オッケーだよ!」
「さあ、行くわよ。ヴォルケーノの強さ、見せ付けてやりましょう!」
「言われなくても! くらえー!」
 二機の飛空挺が同時にミサイルポッドを発射。無数のゾンビが空を舞い地に吹き飛ぶ。それだけでも十分だが、さらに追加のミサイルポッドがゾンビめがけて飛んでいく。
「及ばずながら、私も参戦させていただきます」
 アンリのパートナーであるヴァントロアも揃い、いよいよ持って空の攻撃陣が厚くなる。空の四人にはすでに夜明けの兆しが見えている。
「三連続ミサイルポッドでも殲滅しきれないのは正直恐れ入ったけど、でも残念。あたしたちはあんたらを倒すことが目的じゃないのだよ、私たちの目的、それはね……!」
 またも三人が同時にミサルポットを発射。それに合わせて未沙が叫ぶ。
「二つの像を、彼女たちの願いをかなえること! ただ、それだけなのよ!」
 もう彼女たちを止めることはできない。しかしゾンビたちも止まってはくれない。
 もはや、伸るか反るかの運否天賦でのギリギリな戦いだ。どちらに転ぶのか、それはあともう少しで。