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スライムづくし

「スライムちゃん……かわいそうに! 私が助けてあげる!」
「にょ」
 ぶみゅ〜っと青い物体を抱きしめているのは、天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)
「もう、結奈ちゃんたらまた変な事に首を突っ込んで……」
「まあまあ。それがゆいの良い所ですわ。くす」
 呆れた顔で、それでも側を離れないのはフィアリス・ネスター(ふぃありす・ねすたー)
 フィアリスが主に警戒しているのはスライムよりも後方のリィル・アズワルド(りぃる・あずわるど)
 彼女はある物を隠し持っているようだった。
「結奈ちゃん。一応言っておきますね」
「なぁに、ふぃーちゃん?」
「何でもかんでも首を突っ込んではいけませんよ」
「んー、でも、かわいそうなんだもん!」
 フィアリスの言葉にぷうっと頬を膨らませる結奈。
(まあ、分かってた事ですね……)
 フィリアスはそっとため息をつく。
「じゃあスライムちゃん、どうしたらいいかなあ? 何かを探してるんだよね……わっ」
「にょにょにょー」
 結奈が抱きしめていたスライムは、いつのまにか形を変え結奈の背中を、全身を包み込もうとしていた。
 まるで、抱きしめかえしているかのように。
「あうっ、ちょ、ちょっとスライムちゃん、どうしたの?」
「にょー」
「あん、くすぐったいよぅ。」
「にょにょにょー」
「きゃ、そこ、駄目だってばぁ……もう、甘えんぼさんなんだからぁ」
 次第にスライムの侵略範囲はじゃれつくというには危険な域に!
 そのとき、リィルが動いた。
 隠し持っていたカメラを取り出す。
 それも複数。
(シャッターチャンスですわ! 別の角度からもしっかり記録しておかなくては!)
 ピピピピピッ。
 結奈の痴態が映像に残されたその時。
「こぉらリィルぅ!」
 カメラが、取り上げられた。
 リィルへの警戒を怠らなかったフィアリスが、即座に動いたのだ。
 そのため、スライムの結奈への侵略は防げなかったわけだが……
 フィアリスは怒気を含んだ瞳でリィルを見る。
「これは、没収させていただきます」
 がちゃがちゃがちゃん。
「あぁ、勿体ないですわ……」
 リィルの目の前で、カメラは破壊された。

 カメラを隠し持った人物は、他にもいた。
「くくく…… いるいる。花粉に惑って絡みつくカップルたちが……」
「……そなたは一体ここに何をしに来たのじゃ」
 黒いドレスにハイヒール、黒のロングコートを羽織った長尾 顕景(ながお・あきかげ)に、ルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)が呆れた様子で問う。
 それ以上のツッコミがない所をみると、これは日常茶飯事らしい。
「君こそ、一体何しに来たのだ」
「花見を見に来た」
「ん?」
 顕景の問いに、当然のように答えるルファン。
「常々、日本文化には興味があってな。そういう文化に触れるのも悪くないじゃろう」
「まあ、良いであろう……ん?」
 顕景の瞳がきらんと光る。
 丁度良いターゲットを発見したらしい。

「は……ひゃぁううううんっ!」
 顕景の視線の先にいたのは久世 沙幸(くぜ・さゆき)
 花見に来たはずの彼女は、どうやらやたらとスライムに好かれる体質だったらしい。
 彼女の周りにいつの間にかスライムが集まってきた。
 武器を置いてきた彼女には、自分に向かってくるスライムに対抗する術はない。
 詰め寄ってきたスライムにいつの間にか足を、腕を絡め取られていた。
 エロ歓迎設定の彼女に、スライムは容赦しない!
 体を、顔を、薄い装備の下を、どんどん侵略していく。
「も……おっ、そんなこと……ゆ、ゆるさないんだからぁ……」
 最初は抵抗していた沙幸だが、スライムの攻撃? を前に次第にそれも弱まっていく。
「だめ……だめぇ……」
 それでも口だけは最後まで否定を続ける。
「だめ……んっ」
 次第にそれも塞がれ。
「んむぅ……っ」
 そして。
 カシャカシャカシャカシャカシャ。
「!?」
「良いものだな。苦痛と快感の狭間で揺れる少女……是非、記録しておかねば」
「んむむー!」
 スライムに埋まる視界の隅で、沙幸は見た。
 自分に向けてシャッターを切る、顕景を。
「気にするな。この写真をどうこうするつもりはない。私はただ、写真を取られて困惑している人間を見るのが好きなだけだ」
「むむー!」
 顕景の言葉に足をバタつかせる沙幸。
「ああ、いい抵抗だ……ん?」
 シャッターを切っていた顕景は、ふと違和感に気づく。
 ここまでやると、当然いつものように止めに入ってくる存在が、今日は大人しい。
 つい先程まで、花見客の中に混じっていたようだが……
「おや」
 パートナーの姿を見つけた顕景の唇が、嬉しそうに歪む。
 ルファンは、スライムに襲われている最中だった。

「む……なん、じゃ、これは……」
 ルファンの、女性の様に美しい顔に青いスライムが這う。
 その身体は既にスライムによって絡み取られていて、動けない。
「ん……む、そ、そなた…… もっと……」
「にょにょー」
 次第にルファンの顔が紅潮していく。
 スライムの中で花粉を吸いこみ、ルファンの中に自身が制御できない気持が沸いてきたのだ。
「これはこれは、いい写真が撮れそうなのだよ」
 その前に立つと、妖艶なまでのいい笑顔でシャッターを切り続ける顕景。
「くぁ……んっ」
 スライムにも、そして顕景にも抵抗できず、ただ溺れていくルファン。
 スライムバッチコイ設定のルファンにも、スライムは容赦なかった。