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イコン博覧会2

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その他のイコンブース

 
 
 イコン、あるいはそれに相応する物は、シャンバラ以外にも存在している。
 今回、その全てが展示されているわけではもちろんない。
 たとえば、エリュシオン帝国のヴァラヌスは、恐竜型の第一世代イコンで、水陸両用という特徴がある。機体も大型で、キラーラビットは、技術的にこの流れを汲んでいる。機体数は少ないが、先の帝国との戦いで鹵獲された物が、シャンバラ王国でもいくつか使われている。
 それを発展させた1.5世代機とも言える物がヤークトヴァラヌスだ。
 敵を鹵獲した物にはSリンクG-MONEYカスタムのような物もある。こちらは、鏖殺寺院のシュメッターリンクを改良して第二世代機の性能まで引き上げたものである。そういう意味では、シュメッターリンクIIに近いと言えるだろう。
 鏖殺寺院には、第一世代機でありながら高性能のシュバルツ・フリーゲという機体もある。これは、主に指揮官機として使われたものだ。
 変わり種としては、フラワシによって操作されていたゴーストイコンという物もある。こちらも、鹵獲された物は修復され、フラワシの操作するアニメイテッドイコンとして利用されている。どちらも、元はセンチネルと同等の機体である。
 中には、凄まじい枕のように、開発意図がまったくの不明な物も少数存在する。
 まったく別の技術、主に地球の技術を元に作られた物がS-01である。こちらは航空機型の可変タイプと言うことになる。ほとんどのイコンが、パラミタのイコンに地球の技術を付加したのに比べ、S-01は地球の機械に、パラミタの技術を付加した設計思想となっている。そのため、飛行形態時の高速運動はパラミタのイコンを凌ぐ性能をはじき出している。もっとも、S-01自体が、パラミタや地球以外の世界の技術を使っているという話もあり、詳細は定かではない。宇宙空間でも運用可能という特徴を持つ。
 同様に、電脳世界で開発され、その設計図を現実世界にフィードバックして実機として組み立てられたのが、スフィーダである。
 鹵獲したドールズを改修した物だが、こちらも可変型イコンで、飛行形態は本来宇宙空間での使用を目的とした特殊な機体である。もちろん大気圏内でも高い機動性を誇る。
 歩行形態は均整のとれたプロボーションの美しい人型だが、複雑な変形機能のためにやや華奢でもある。空中と地上を移動できる特徴を持ち、高い攻撃力を有する。その性能は、第二世代イコンでも特筆すべき物となっている。
 同様に、電脳世界からの設計図を元に設計されたのが、フィーニクスであった。
「美しい、実に美しいイコンだ」
 土方歳三が、目の前に飾られているフィーニクスを素早くスケッチしていた。
「これが、ハイ・ブラゼル地方の仮想世界、通称『第三世界』で建造されたロボット兵器『バーデュナミス』の一号モデル、フィーニクスよ」
 イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が、サンプルとしておいている自分たちの機体フィーニクス・ストライカー/Fを前にして説明をしていた。
「機械文明の作り上げた試作機に、サロゲート・エイコーンの技術を転用することで、現実世界での量産化に成功しました。仮想世界消失後も、シャンバラで製造が続いています。純粋な第二世代ではありませんが、その性能は第二世代イコンと比べても群を抜いています。速力に優れたバード形態、パワーと照準精度に勝るヒューマノイド形態を使い分けることができ、両形態で飛行可能なのよ」
 歩行形態で飛行可能というのは、スフィーダと共に運用の範囲を広げる性能であろう。ただし、フィーニクスは大気圏内専用である。
 ブースでは、ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)が編集した渾身のプロモーションビデオが上映されていた。
 美しいのはまさにフェニックスというシルエットのフィーニクス三機が編隊飛行をする場面で、フィーニクスの性能が航空機としても遜色ないことを示していた。
 圧巻は変形シーンであり、スフィーダよりは簡略化されてはいるとはいえ、複雑なパーツ移動による変形と、最後にツインレーザーライフルを二つに割って両手でもってポーズをとるところなどは、往年のヒーローロボットの登場シーンを彷彿とさせるものであった。当然、ジヴァ・アカーシによるエフェクトつきである。
「やっぱり、フィーニクスは傑作です。どこかの失敗作がテストパイロットをしていたとは思えませんです。これから派生した、サポートアンドロイドと機晶制御ユニット、量子コンピュータ技術は現在の単座型サロゲート・エイコーン誕生に大きな影響を与えたですよ。ボクのイーグリットIIIをはじめとした新世代機の先祖になる偉大な機体……あれ? どうしたです? 変な顔をして……!?」
「ヴァディーシャ、何を言っているの?」
 怪訝そうな顔で、イーリャ・アカーシがヴァディーシャ・アカーシ(う゛ぁでぃーしゃ・あかーし)の顔をまじまじと見た。
 イーリャ・アカーシをママと呼ぶこの自称未来人は、いったい何を口走っているのだろうか。ありもしない機体名を口走るだなんて、そういうカスタム機でも作りたいのだろうか。
「あ、いや、ちゃんとフィーニクスの説明を手伝いますです」
 そう言うと、ヴァディーシャ・アカーシは、モニタのそばに展示してあったフィーニクスのイコプラを手にとって、子供たちに変形をプラモで実演して見せてお手伝いをしていった。
 
    ★    ★    ★
 
「このように、イコンは急激に発達し、第二世代機と呼ばれる物たちが登場してきましたぁ」
 大型モニタに映し出されたイコンの発展系統図を前にして、近衛 光明(このえ・みつあき)がポイントデバイスを駆使して説明を続けていた。
「ですがぁ、ここでいったん技術開発は限界を迎え、第三世代機の登場にはいくつかのブレイクスルーが必要な段階となっていますねえ。そのため、イコンの発展は、より高性能の物から、より汎用性の高い物と、より機能特化した物という相反した命題を満たす物に移っているのが現状ですねえ」
 運用とメンテナンスを効率的に行うためには、ベースとなる機体そのものや、消耗部品などはなるべく共通規格の物の方がいい。その上で、オプションによって各種機能を特化させる。
 プラヴァーが、その設計思想にもっとも忠実であると言えよう。だが、まだ各仕様でプログラム系などの調整がかなり必要なため、オプションを換装して即座にタイプを変えると言うことができないのが現状である。
「具体例としては、こちらのビデオを御覧ください」
 今回は近衛光明の補佐として説明にあたっているマグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)が、編集した自身のイコンの映像を流して説明を始めた。
「こちらが、私が始動キーを使って合体する追加装備のパワード・マグナです」
 追加装備と言いながら、それはもうほとんどイコンそのものであり、実際にはブルースロートがベースとなっている。これにマグナ・ジ・アースが収納されることにより、パワード・マグナが彼そのものの身体となるのだ。
「こちらに、追加装甲やブースターなどを装備した換装形態とも言える状態が、パワード・マグナ強化モードとなります」
 マグナ・ジ・アースが、やや自慢げに説明した。
 根本的な性能をがらりと変えてしまえるほどの物ではないが、オプションによっては別物ではないかと思えるほどの変化をイコンに与えることは可能であるという証明でもある。
「これらイコンの発展とはまったく別の系統の技術も、昨今は登場していますよお。たとえば、このウォーストライダーなどですねえ」
 近衛光明が、イコン系統図から外れたいくつかのイコンの中から、一人乗りのウォーカーマシンとも呼べる物を指し示した。
 ウォーストライダーは、最近、像賊たちによって使用が確認された機械だ。
 逆関節型の二足歩行マシンでパイロットがむきだしのことからトライポッド・ウォーカーや小型飛空艇の流れを汲む物のようにも感じられる。あるいは、前面に巨大な顔のようなデザインがあるため、パラ実の喪悲漢や離偉漸屠などのイコンとの共通点も指摘される。おそらくは、像賊たちがどこからか発掘したものではないのかというのが一部の者の見解ではあったが、実体は定かではなく、全てが憶測にしかすぎなかった。