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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 3

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 3

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第10章 コレ、自分ノッ…わがままグレムリン Story6

 ホームセンターから脱出した椿たちは、衰弱した動物や傷を負った人々の手当てをする。
「こんなに弱ってしまってかわいそうに…。すぐに治療してあげますからね」
 応急処置の途中だった椿はネコにそっと触れ、ペットの蝕まれた精神をホーリーソウルの癒しの力で治してやる。
「無事に脱出したことを伝えておこうか。…フレデリカさん、店内の様子はどうかな?」
「今、フリッカに代わりますね。涼介さんか電話よ」
「ありがとうルイ姉。もしもし、私よ。こっちは外へ向かっている途中ね」
「こちらは店内から出てしまったが、戻ったほうがいいか?」
「いえ、グレムリンの気配はもうないみたいだから大丈夫よ。動物たちや怪我人の治療をお願いね」
「分かった、ではまた後で…」
 互いの安全を確認した涼介は通話を切った。
「大騒ぎ状態になるかと思ったけど、速やかに非難してもらっているみたいね」
「この花の香りのおかげかもしれませんね?」
 ロザリンドがカメリアに頼み、人々の気分を落ち着かせる香りを漂わせているため、あまりパニックにならなかったようだ。
「何が起こったの?怖いよぅ…」
 勝手に物が動いたりする光景を見てしまった子供たちは、すっかり怯えてしまっている。
「スーちゃん、リラックス出来るような花の香りをお願い」
「わかった、おりりん」
「いいにおいがする!」
 すっきりとした爽やかな甘酸っぱい香りに、怯えていたはずの子供たちは笑顔を取り戻す。
「なんのにおいなのかな?」
「これはね、スーちゃんのお花の香りなんだよ」
「その肩に乗っている女の子のこと?すごいねーっ」
「スーちゃんのお花の香り、褒められてるよ。嬉しいね」
「うれしいー」
 白い花のパラソルを虚空から生み出し、ふわふわと宙を舞いながら香りをまく。
「ねーねー、おりりん。グレムリンたちが食べていたおかしって、おいしーの?」
「うん、美味しいキャンディとかもらっていたみたいだね」
 ペットショップの近くで不自然に飴だけ浮かび、かじられている様子を終夏だけでなくスーも見ていた。
 この騒ぎでお菓子を食べ終わった魔性たちは、すでに外へ出てしまっているだろう。
「他のエリアには、もういないみたいだ」
「確認ありがとう、グラキエスさん」
「グレ子たち、もういなくなっちゃったんだ?」
「このホームセンターにはもういないだろうな、クマラ」
「オイラ、こーんなにいっぱいお菓子持って来たのに。まぁいいや。オイラが美味しく食べるし♪」
 あまったお菓子に手をつけ、はぐはぐと頬張る。
 外へ出るとルカルカたちもおやつタイムをしている。
「ご苦労様」
 ダリルが作ったアールグレイのシフォンケーキをもぐもぐと食べる。
「おいしかったー♪」
 ポットに入れてきたアイスオレンジペコを飲み干し、満足したような笑顔になる。
「オイラも食べたかったにゃん」
「クマラは自分のおやつがあるだろ」
「それを言わないでよ、エース!」
「今、俺たちが全部くっちまった。残念だったな」
「うぅー…」
 しょんぼりとしながらも、持ってきたおやつを食べる。



 涼介はグレムリンに憑かれて衰弱したペットを治癒しようと、いつものように温かな優しい光をイメージしながら、ふわふわな毛におおわれた身体に触れる。
「全てを癒す光よ、傷付き苦しむものに再び立つ活力を」
 ホーリーソウルの力を動物に触れている手に集中し、癒しの力を送り込む。
 ぐったりとしていた犬はすぐに立ち上がり、元気に飼い主の傍へ駆けていく。
「ありがとうございます!」
「元気になってよかった。大事にしてあげてくれ」
「涼介さん、そちらの治療は終わりましたか?」
「あぁ、今終わったところだ。椿さんのほうも、問題なかったかな?」
「フレデリカさんや、歌菜さんたちも手伝ってくれましたからね。もう少しで皆完治します」
「人に憑いたりすることはなかったような」
「そこまでの力はなかったみたいです」
 今回の魔性には人に憑けるような能力はなく、ここへ来る途中で担当を決めていた者がいたり、連絡を取り合ったりしたおかげでスムーズに事件が片付いた。
「こっちの子も治療終わりましたよ、涼介さん」
「フレデリカさんたちの方はどうかな」
「さっきからこのうさぎが動かないんだけど…」
「だいぶ衰弱しているようだな」
「ルイ姉、手伝ってくれる?」
「回復の妨害する気を全身から追い出すように、撫でながら祈りましょう」
 2人はうさぎをそっと撫でながら詠唱を始め、精神に蓄積した淀んだ気を取り除いてやる。
 淀んだ気は黒い霧となり、小さな体からシュゥウウッと噴出す。
「(穢れた精神の気は消えたはずだから、後は癒しの気を与えてあげればいいのよね…)」
 ホーリーソウルの力が彼女たちの手へ移る。
 うさぎが元気に動けるように祈りながら、温かな光りを送り込んだ。
 フレデリカとルイーザの祈りの力を受けたうさぎは、長い耳を動かし起き上がる。
「あなたのペット?大事に育ててあげてね」
 なかなか目覚めないうさぎを心配していた小さな子供に、フレデリカが渡してやる。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「じゃあね」
 嬉しそうに走っていく少年に、ふりふりと手を振った。
「では、そろそろ学校に戻るとしよう」
「ジュエリンさんにまた衣装貸してくださいね♪」
「はい、好きなものをお貸ししますわ。お互い、恋人には素敵なお洋服を着せてみたいでしょうし♪」
「ですよね♪」
 恋人を着せ替えたい歌菜とジュエリンの願望は、永遠に捨てられそうにない。
「最悪だ…。(何回着せ替えさせたら気がすむんだ?)」
 ジュエリンの影響か、恋人を着せ替えさせる楽しみを覚えてしまった歌菜の要望から逃げたくっても、逃げ切れない自分にへこむ。
「えぇ、本当に…。着せられたりするのは勘弁してほしいです」
「カレシを着せ替えさせるって楽しいのかな?」
「リーズ、まさかオレを…」
「そ、そんなことしないよっ。芸人としての服なら考えてみるのもいいかもだけど♪」
「そんなクラスないし、あってもチェンジしないしっ」
「先生方や教室に残っている人が待っていますから、戻りましょう」
「あ、うん。そうやね」
 椿に呼ばれ、小型カメラを返すために陣たちも魔法学校へ戻る。



 特別訓練教室の扉の前にいくと、エリザベートとラスコットが小型カメラの回収箱を持って待っている。
「皆さん、お疲れ様でした〜」
「被害はそれほど出ていないみたいだね」
「これから反省会のようなものを行いんだが…」
「今日の授業はもうおしまいなんですぅ〜。それはまた別の機会ですねぇ〜」
 和輝が言うように、実戦に参加した者同士でお互いに意見を言ったりすることも大事なのだが、まもなく夕飯なため今日の授業はおしまいなのだ。
「教室で見せていた映像のデータはあるの?残っていたらコピーデータを貰えないかな」
「ん〜…。今日は保存しているPCの電源を落としてしまいましたから、別の日ならいいですよぉ」
「刀真のデジタルビデオカメラの映像があるから、とりあえずそれを見ておくわ」
「わりとブレまくってるんだけどな」
「うん…この前もそうだったね。編集、頑張って」
「俺がやるのか、ずっと俺が編集担当か…」
 編集……という単語を聞いただけで、いっきに睡魔に襲われる。
「刀真、こっちへ来い」
「何だ玉藻」
 玉藻に学校の外へ呼ばれ、コイコイと手招きする彼女の傍へいく。
「夕飯とかどうでもいいくらい眠いんけどな…。あ〜これからまた編集か〜…」
 疲れきっている刀真は抵抗する様子もなく、玉藻に抱き寄せられて頭を撫でられる。
「今日はご苦労だったな、褒美だ」
「…玉藻。当たっているんだけど…」
 何か柔らかい物が当たってる感触と、甘い匂いに抱き寄せられっぱなしでもいいか…と、心地のよさに大人しくされるがままでいる。
「当たってる?当ててるんだ察しろ…」
 されるがままの刀真が可愛いな、と思っていると…。
「私を置いていくなんて酷いよ」
「あぁ、悪かった」
 後ろから月夜に抱きつかれ、彼女の頭も撫でてやる。
 その頃、特別訓練教室はエリザベートが教室内の明かりを消し、扉を閉めている。
「明日香、シュークリーム美味しかったですよぉ〜。今日のお夕飯は何ですかぁ?」
「お家に帰ってからのお楽しみです♪」
「えー、聞きたいですぅ〜」
「エリザベート校長は、明日香さんの家に行くんですか?」
「私の面倒を一生みてくれるんですぅ〜」
「い…一生ですかっ」
 当たり前のように言い放つ校長に、驚いた椿は眼を丸くする。
「スーちゃんも何か食べたいものとかある?」
「おりりんが作ってくれるものがいいー」
「あっ、廊下の電気も消していきましょう〜」
 つけっぱなしだと電気代がもったいない。
 エリザベートはパチリとスイッチを押し、灯りを消した…。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

皆様、お疲れ様です。

実技も実戦も、怪我をした方はいらっしゃいませんでした。
おやつの糖分は栄養なので、毎回ほぼあるかと思います。


それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。

2012.05.29
・リアクションを一部、修正いたしました。