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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
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stage1 魔法少女登場!

 ≪シャドウレイヤー≫が発生してから暫くして……。
 魔法少女の契約を果たした生徒達は上空で停止した戦艦に乗り込み、甲板で身を潜めていた。

「それにしても拍子抜けだな」
「いいじゃない。そのおかげでこうやって情報収集ができるんだもの」
 
 ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)の言葉に高崎 朋美(たかさき・ともみ)は端末を操作しながら答えた。

「ま、それもそうか……」

 ウルスラーディは溜息を吐いた。
 すぐに戦闘になるだろうと気合を入れて乗り込んでみたが、敵はこの特殊な空間内で動ける人間がいるとは思っていなかったようで、予想以上に警備は手薄だった。
 おかげで生徒達は奪ったIDで端末から情報を引き出す時間を得ていた。
 朋美はウルスラーディが見つめているのに気が付いた。

「な、なによ」
「ん、ああ。そんな可愛らしい服を着ているおまえは珍しいなと思ってな」

 一瞬で朋美の顔がポッと赤く染まり、視線を逸らされた。
 整備科に所属しているおかげで朋美は普段から作業着を着ている方が多い。
 だから、明るい服とかフリルのついたスカートは珍しかった。

「で、でもこの服ってすごく作業しにくいんだよ。困っちゃうよね」

 照れ隠しに笑いながら朋美はスカートを摘まんでヒラヒラさせていた。
 ウルスラーディは思う。

 別に似合ってないわけじゃないんだから、たまにはそういう服いいんじゃないか?
 ま、最終的に決めるのはおまえだけどな。

「それにそんなこと言ったら……」
「!?」

 ふいに朋美は、ウルスラーディの脇の下に両手を入れて抱き上げてきた。
 そして、幸せそうな表情で頬を擦り寄らせてきた。

「んぅーーーーーーーーーーーかわいいいいいぃぃぃいい!」

 ウルスラーディは内心涙目だった。

 別に抱きしめられたことが嫌じゃないんだ。
 ただ、今の俺の姿が……テディベアにされたことがショックでたまらないんだ。
 しかもこんな紫に近いピンクなんてーーきつい。
 目にきつい。精神的にきつすぎる。
 鏡を見たら立ち上がるのがつらくなる。

 ……早く元の姿に戻りたい。

「〜〜♪」

 朋美はウルスラーディを抱きしめ、鼻歌を歌いながら端末を操作していた。


「こんにちわですわ♪ ポラリスさんですわよね」

 ぼんやり情報収集が終わるのを待っていた魔法少女ポラリス(遠藤 寿子(えんどう・ひさこ))の元に退紅 海松(あらぞめ・みる)がやってきた。

「私は天御柱学院の退紅 海松と申しますの。
よろしくお願いいたしますわ♪」
「あ、はい。こんにちはっ。
 私は天御柱学院の遠藤……じゃなかった魔法少女ポラリスです。
 よ、よろしくおねがいしますっ」

 寿子は緊張から何度もお辞儀をしていた。
 その様子に海松が笑みを溢す。

「ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫ですわよ」
「す、すいません。はう〜」
 
 寿子は大きく息を吐くと、がくりと肩を落としていた。

 どうして私はこんなんなのだろう。
 もっとシャキッとしたいのに……。

「ところでポラリスさん。もしかして同人誌とか書いていたりしませんか?」
「え、あ……はい」

 海松は両手を胸の前で合わせると、パァと表情を明るくした。

「やっぱりですの!
 貴方は私と同じ匂いがしましたから、そうじゃないかと思ったんですの!」
「え、匂い? 私と同じ?」
「そうですわ。実は私、地球では同人誌を描いておりますの」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、もちろんですわ」

 寿子は海松が自分と同じ趣味を持っていることが嬉しかった。
 臆病な性格と他人から距離を置いてしまう寿子は、自分が同人活動をしていることを人に話すことができないでいたからだ。

「それでポラリスさんにご相談したいことがありましたの。
 今回の事件が解決したら私、描いてみたいお話がありますの」
「そ、そうなんですか。
 えっと、それはどんなお話……ですか?」
「『魔法少女ポラリスとアウストラリスの活躍』ですわ」

「え…………ええ!?」

 寿子は尻餅をつきそうな勢いで驚いていた。

「む、無理! 無理です!
 私、まだ魔法少女になったばかりだし、駄目駄目で戦い慣れてなくて、ドジばっかりだし……」
「ふふ、そう自信無さげにされなくて大丈夫ですわ。
私、貴女のような方だからこそ描くべきだと思ってますの」
「それは笑えるから?」
「違いますわよ。決してそんなマイナスなことからではありませんわ」
「それじゃあ……」
「貴女は貴女が思っているよりもずっと素敵な方ということですわ。
 どうか、等身大のお二人を描かせて下さいな」

 優しく微笑む海松。

 私が思っているより、私が素敵?
 それってどういうことだろう。
 見た目? ううん、それは絶対ないよ。
 じゃあ、働き? それも無理だよ。
 だって私全然かっこよくも、可愛くもないもん。
 全然、魔法少女っぽく……。

 寿子は魔法少女の活躍を描かせてほしいという海松にどう答えていいかわからなかった。

「やぁ、ポラリスさん……だっけか?」
 
 そこへ、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がやってきた。
 背後から声をかけられた寿子は振り返る。
 すると、エヴァルトが目を丸くした。 

「ん、なんで泣いているんだ?」
「え? なっ、泣いていませんよ!」

 気づかないうちに、涙が溜まっていた。
 寿子は慌てて手の甲で涙を拭う。

 恥ずかしい。なんでこんなことで泣きそうになっているんだろう。
 魔法少女らしくなくてもいいじゃない。
 まだなったばかりなんだから、これからそれらしくなればいいんだよ。

「あのそれで、何か用……ですか?」
「別にため口でいいぞ。
 俺も他の奴だってそんなに気にしないだろうし、気楽にいこう」
「……はい」

 口角をあげて笑うエヴァルトに、少しずつ落ち着きを取り戻していく寿子。

「挨拶がまだだったな。
 俺はエヴァルト・マルトリッツ。よろしくな」
「魔法少女ポラリスといいます。よろしくお願いします」

 不器用ながらも寿子は控えめに笑うことができた。

「ところでポラリスさん……もしかして、ロボットアニメとか好きだったりしないか……?」
「あ、はい。一応、好きですけど……」
「そうか。やっぱりな。
 同じ趣味を持つ者の匂いというか気配というか……それを感じ取ったんだよな!」
「あら、あなたもですの?」

 エヴァルトと海松は目を見開いて、お互いの顔をまじまじと見つめた。
 そして――クスクス笑いだした。

「私はポラリスさんから同人活動に取り組む者の匂いを感じとりましたの」
「へぇー、同人活動ね。
 ポラリスさんは、ロボットとかも書くのか?」
「ま、まぁ、あまり得意じゃないけど……」
「じゃあ、今度見せてくれよ」
「え、ええ!?」
「私も見たいですわ♪」

 二人の熱い視線に恥ずかしくなった寿子は、クロスさせた両腕で顔の半分を隠してしまった。

「ああ、そうですわ。エヴァルトさん」
「なんだい?」
「あなたは『魔法少女ポラリスとアウストラリスの活躍』を同人誌にすること、どう思いますか?」

 海松の言葉に寿子がビクリと肩を震わす。
 寿子の視線が恐る恐るエヴァルトへと向けられた。

「うーん、いいんじゃね?
 可愛いし、人気が出ると思うけど」

 ポッと顔を真っ赤にした寿子が、しゃがみこんで顔を隠してしまった。

「ということなのですが、どうでしょう?」
「……もう少し考えさせてください」

 二人に大丈夫だと言われても、寿子にはまだ自信が持てないでいた。

「ところで、同人誌になったらその時は俺の活躍も描いてもらえるのか?」
「そうですねぇ。『魔法少女ポラリスとアウストラリスの活躍』がメインですから……今日の頑張次第というのはどうでしょうか?」

 海松が細い人差し指をピンっと立てて答える。
 するとエヴァルトは、息を吐いて軽く頭をかいた。

「じゃあ、頑張って働くとしますか」

 体をほぐし始めるエヴァルトを、海松はニコニコしながら見つめていた。