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第5章  ひるごはん


 皆が出発してから、数時間。
 葦原島には等しく、昼食時の音楽が流れていた。

「折角だし、何か栄養のある物を作って持って行こうかの」

 葦原明倫館、食堂にて。
 エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は、生徒達の注文を請けながら呟く。
 料理長という立場ゆえ、皆のように直接その場へ赴くことは叶わない。
 なればこそ、自分にできることをしたかった。

「睡蓮、作るのと運ぶの、どちらも手伝っておくれ」
 作るのは良いが、運ぶのは1人だとやり難い。
 それに、睡蓮もだいぶ慣れて来たからの。
 家でも助かっておるよ」
「あ、はい!
 私もお手伝いします!」

 エクスの言葉に、紫月 睡蓮(しづき・すいれん)の顔はぱあっと明るくなる。
 褒められたことが、がんばりを認めてもらえたことが、とっても嬉しかった。

「ああ、そういえば他にも看病しておる者達もいるのだったな。
 大した手間でも無い、皆の分も用意してやるとしよう」
「わたくし達にも、お手伝いさせていただけませんか?」
「美味しいお昼ご飯をつくりましょう」

 そこへ、ジュンコ・シラー(じゅんこ・しらー)マリア・フローレンス(まりあ・ふろーれんす)が現れる。

「貴女方は?」
「私は、以前にハイナ様達から恩を受けた事があって、そのおかげでジュンコと共に幸せな時をすごす事ができたの。
 だから今度は、私がハイナ様の看病のお手伝いをする事で、少しでも恩返しをしようと思っているわ。
 それにこれ以上苦しむ方達を出したくないから……」
「わたくしも、ハイナ様が病気になられたという事を知って、私は自分に出来る事を考えましたわ。
 そして考えた末に出た結論が、ハイナ様の看病をする方達のサポートをするという事でしたの。
 それは、看病をする方達の疲労を和らげる事で、ハイナ様の容態が良くなると信じて出した結論ですが。
 形にできるように努力いたしますわ。
 私とマリアに幸せをくださったハイナ様達のためにも……」
「心強いですね、姉さん」
「ではお願いするかのう。
 ハイナのは普通に卵粥程度にしておかぬとな。
 あまり手の込んだ物にし過ぎてもいかん。
 他の者には握り飯で良かろう。
 手早く済ませられる物の方が都合がよかろうて」
「栄養バランスを考えてもう一品、豚汁などいかがでしょうか?」
「おにぎりは、とりあえず校長室で看病をしている方々の分だけでいいわよね」
「出かけているみんなの分は、届けてからつくりましょう」

 相談の末。
 エクスはハイナのために卵粥をつくり、マリアが豚汁と、ジュンコに睡蓮はおにぎりを握ることになった。
 普通に食事をしに来る生徒達の対応は、ほかのスタッフに任せて。

「さ、皆が待っておる
 手早く用意して行くとしようか」

 あとから来た2人も、エプロンを締めて。
 エクスの主導にて、昼食づくりが始まるのである。