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祈りを捧げる者たち

 リブロとアルビダの組から遅れる事1時間。レノアとエーリカは離れに続く廊下を散策していた。
 その道中、目の前に豆腐がレノアの肩に向かって落ちてきた。
 それに当たることなく最小限の動きでそれを避けるレノア。

「……只の食べ物の無駄遣いだな」
「レノアーここ、礼拝堂みたいだよ!」
「おい、待てエーリカ! 一人で先に行くな!」

 さっさと礼拝堂へ入って行くエーリカを見て、レノアは慌てて追いかけていく。

「全く……先に行くなと言ってるだろ」

 小さくため息をつくレノアの視線の先には祭壇に置いてあるスタンプを押そうとするエーリカがいた。
 そこへ向かっていると、エーリカの背後に蒼の修道着に両腕と両足に白銀のアーマーグローブとアーマーブーツ、手にはハルバードと聖鎖剣を装備した聖なる異端審問官の姿をしたエリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)が現れる。

「神への冒涜、許しません! 偉大なる神の名に於いて判決、死刑! 火あぶりを適当といたします!」

 エリザベータはハルバードから爆炎波を放つ。
 が、あっさりそれを避けたエーリカは、エリザベータを投げ飛ばしてしまう。

「抗いますか……ならばこちらも手加減は致しません!!」
「貴様、覚悟はあるな」

 再び爆炎波を放とうとしたエリザベータの頭に銃を突きつけ脅しつけるレノア。

「覚悟するのはそちらの方です!」

 エリザベータはそれに怯まず何発もの爆炎波を放っていく。

「神に祈りを捧げなさい。さすれば慈悲深い神はお許しになられますよ」

 エーリカとレノアはすっと祭壇のある、月明りに輝くひび割れたステンドグラスの方へ膝をついて祈りを捧げた。

「神よ、どうか迷える子羊に神の御加護を……」

 そう祈りを捧げたエリザベータはハルバードを下げ、エーリカが落としていたスタンプの台紙にぽんとスタンプを押したのだった。



◇          ◇          ◇




 中庭にあった墓を全て掘り返したレキとチムチム。
 あちこちに散らばるように埋めらていた実験動物たちは、ひとつの場所に集めるようにして埋め直された。

「今まで誰も気いてくれなかったんだよね、きっと」
「こうして十字にした木の棒も差したアル。これでここにいたことを知ってもらえると思うアルよ」
「うん。じゃ、一応持ってきていた供養用のお菓子を供えて……」

 周りの空っぽであった墓と区別する為に十字にした木の棒の前に、花とお菓子を置いて手を合わせるレキとチムチム。

「う〜ん。ずっと掘り返してたから汗だくだよ〜」
「お疲れなのネ」
「ほんと疲れた〜。髪が汗で張り付いて気持ち悪いや」

 レキはリボン解いて髪下ろす。

「さ、早く帰ってお風呂でも入ろっか」

 スコップを引きずって館を後にする二人。
 それを目撃したスタンプラリーの参加者が、墓場に本物の幽霊がいたと叫んでいたのを二人は知らない。