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冷たいモノはいかがです?

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冷たいモノはいかがです?

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見せてあげるわ、本物の九尾の妖狐の魅了と悦楽を

 廊下を歩いていたまーけっととひよの。

「全く……誰だよ、乾いたインクとスタンプを置いた奴は」
「陰湿な小細工だな」
「そうだよ! スタンプを見つけたと思ったらいきなし消えたヤツもあっしよー」
「消えたんじゃなく、糸に引っ張り上げられただけだがな。それを追いかけ回すひよのは傑作だったぞ」
「う、うるさいなー。捕まえたんだからいいだろ!」

 まーけっとがからかい、ひよのがそれに言い返していると、二人の耳にガゴンッという音が聴こえてくる。

「ん?」
「お?」
「まーけっと」
「ひよの」
「行くぞ」

 お互いの顔を見合わせ、音のした部屋のドアを開ける。

「危険生物め、覚悟!!」

 転がり込むように入ったひよの。

「どこに隠れやがった……」

 室内には天幕付きの寝台がどんっと占領している寝室。
 危険生物を探しながらベッドへ近寄っていくひよの。
 そこへ紅いパンキッシュなボンデージ姿で妖艶な九尾の妖狐に扮した蘇 妲己(そ・だっき)が現れ、ベッドに押し倒された。

「ふふ……可愛らしい子が紛れこんで来たわね」
「ちょっ離せよ! ど、どこを触ってんだ!!」

 ひよのの身体を妖艶に弄くり回し、反応を楽しんでいだが、まーけっとがあっけに取られじっと見ていたことに気が付く妲己。

「あらん、あなたも一緒に気持ちイイことをしたいの? うふふ……いいわよ、こっちにいらっしゃいよ」

 色気たっぷりにまーけっとをベッドに誘い込む妲己。
 色気に当てられたまーけっとはベッドへ入って行く。

「ふふ……本物の九尾の妖狐の魅了と悦楽はどうかしら?」

 妲己に魅了されたひよのとまーけっとは妲己が離れたことに気づかず、そのままベッドマットがひっくり返ってどこかへ落とされたのだった。


―――ズザザザッ


 服の乱れた姿でマネキンを抱いたまま眠っているまーけっととひよの。その近くには同じようにマネキンを抱いて眠っている男性がいる。

「う……ん」

 まず目が覚めたのはまーけっと。抱きしめていたマネキンを慌てて投げ捨てひよのの頬を叩いて正気に返らせる。

「な、なんで私たちこんなとこで寝てるんだ!?」
「うーん……あれ、あの綺麗な妖狐のねーちゃんは……?」

 ひよのの大きな声で目が覚める男性。しかし、どこかぼんやりとしている。

「どうやらさっきのお化けに化かされたみたいだな。お前も」
「あー! せっかく集めたスタンプが白紙になってやがる!!」

 途中まで集まっていたスタンプはみごとに消えていた。