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天の川よりの巨乳X襲来!?

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天の川よりの巨乳X襲来!?
天の川よりの巨乳X襲来!? 天の川よりの巨乳X襲来!?

リアクション


【一 パイマゲドン】

「んっ……はぁ、はぁ……んぁ……っう……!」

 白い砂浜が波際に長大な弧を描いている、パラミタ内海の、とある一角。
 強い陽射しが降り注ぐ中で、泉 美緒(いずみ・みお)の軽く鼻にかかった喘ぎとも苦悶ともつかぬ声が、穏やかな波音を遮るようにして、幾度も響き渡っていた。
 美緒は今、一列に軒を連ねる複数の海の家近くに設置された簡易テントの下で、ベンチソファーにうつ伏せとなっている。
 ふたつの巨大な白い塊が美緒の胸元でぐいと押し潰され、その圧力を逃すように、彼女のボディラインの左右に零れ落ちようとしている。
 その美緒の背筋から腰の辺りにかけて、これまた絶妙なプロポーションを誇る美女が繊細且つ流れるような動きで、両掌を軽やかに滑らせていた。
「あらあら……こんなになるまで、我慢なさらなくとも宜しかったのに……」
 妖艶に微笑みながら、ラナ・リゼット(らな・りぜっと)は白魚の如き細く柔らかな指先を、それまでとは違うところへと這わせた。
 するとその瞬間、美緒の腰から背筋にかけて、小さくビクンと跳ねるような反応が走った。
「ぃやっ……そ、そこは……」
 美緒は頬を僅かに上気させ、眉根を寄せて小さく呻いた。
 危うく漏れ出そうになる声を必死にこらえるように、左の手の甲を柔らかな唇に押し当てるが、それでも喉の奥から湿った声音が微かに響いた。
「良いのですよ……気持ち良いのなら、無理に抑えようする必要はありませんわ……」
 両の瞼を堅く閉じ、僅かに残された理性の力で何とか左右にかぶりを振る美緒だったが、ラナの指先は尚も容赦なく、柔らかな厚みを持つ美緒のボディラインを責め続けた。

 ――いや、別段いやらしいことをしている訳ではない。
 ほんの数時間前の話になるのだが、ラナの提案で肩こりが多い女性を対象に、騎士が鍛錬後によく行うという全身マッサージの特別講座が実施すると運びとなったのである。
 このマッサージ講座にはハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)エンヘドゥ・ニヌア(えんへどぅ・にぬあ)なども進んで参加している。
 そのふたりがじっと見守る中で、美緒の太腿から肩までの主要な筋肉がラナの手によって揉み解されているだけに過ぎないのだが、そのあまりの気持ち良さに、ついつい美緒の口から変な声が漏れ出てしまっていたのである。
「そんなに、気持ち良いのでしょうか……?」
 ベンチソファー脇のパイプ椅子に腰を下ろしたまま、エンヘドゥが幾分羨ましそうな面持ちで、可愛らしく喘ぎ続ける美緒の悩ましげな表情をじっと見つめている。
 一方のハイナはというと、鬼気迫るという表現が相応しい程の真剣な眼差しをラナの手元に送りつつ、必死にメモを取り続けている。
 変なところで強烈な研究心を刺激されたハイナは、ラナの妙技を完全に体得してやろうという決意のもと、その一挙手一投足に全神経を集中させていたのである。
「成る程、成る程……力加減だけではなく、押し込む角度も大事なのでありんすね……」
 最早、その射抜くような視線は求道者のそれに等しい。
 簡易テントの下で、四人が四人とも、規格外の美巨乳を水着の内側に収めてたゆんたゆんと揺らせているという点では完璧に同調しているのだが、やってることは全員ばらばらである。
 特に美緒とハイナに関していえば、両極端といって良い。
 かたや悩ましげな表情で喘ぐ美少女、かたや猛禽類の如き眼光で奥義を究めんとする美貌の挑戦者。
 何かちょっと、おかしな雰囲気である。

     * * *

 そんないかがわしい空気が漂うパラミタ内海だが、そのすぐ近く、直線距離でほとんど数十メートルも離れていない一角に、この日限定で五色の浜、と称されている個所がある。
 七夕 笹飾りくん(たなばた・ささかざりくん)が天の川から落下させたという噂でもちきりの、カラフルな巨大お星様と、その周辺の五色に変化した海域が、それであった。
 それぞれ赤・黄・緑・白・桃に染まった海面は、紺碧の空とのコントラストもあいまって、目の覚めるような鮮やかさで、きらきらと美しく輝いている。
 が、見た目の華やかさとは裏腹に、ごく限られた部分に於いては妙に血生臭い展開が、ひとびとの前に現出しようとしていた。
 騒動の中心は瀬乃 和深(せの・かずみ)アルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)瀬乃 月琥(せの・つきこ)、そしてセドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)達であった。
 この四人は何を思ったか、きょぬー化の桃色海域付近に散開し、桃色海域に足を踏み入れようとする者に対して、猛烈な妨害行為を働いていたのである。
「あんた達には恨みはねぇが、ここから先は行かせねぇ!」
 妙にやけくそっぽい勢いで和深が吼えるその一方で、セドナがホエールアヴァターラ・クラフトを駆り、桃色の海面上に高圧力の拡散風をまき散らしていた。
「そこ! 弾幕薄いぞ! 何やってんの!」
 和深とは対照的に、セドナは凄まじいまでの気合が籠る鬼気迫る表情で、桃色海岸を死守すべく、タンデムシートに陣取る和深に叱咤を飛ばす。
 指示を受けた和深は、どこかやるせない表情で、しかし一応はそれなりに頑張って弾幕を張ってみせた。
 ついでといっては何だが、アルフェリカと月琥も別のホエールアヴァターラ・クラフトに乗り、同じように桃色海域を縦横無尽に駆け巡っている。
「さぁさぁさぁ! ここから先は、一歩も行かせないんだから!」
「……まぁ、きょぬーになるまでの話だがな」
 やけに張り切っている月琥と、随分と冷静な(冷めた?)表情のアルフェリカ。
 この面々の中では、矢張りセドナと月琥の気合の入りようが、頭ひとつ抜け出しているといって良い。
 しかし周囲から浴びせられる批難の眼差しは、他の三人はともかく、和深には若干堪えているようである。
(ごめんよごめんよごめんよ、ホントごめんよ)
 内心で平謝りしつつも、セドナと月琥の勢いに押し切られて弾幕を張り続ける和深であった。
 と、そこへ。

「水着コンテスト男子の部への参加を目指す俺の前に、強敵が立ちはだかるか! それもまた良し!」
 突然、何を思ったのか。
 ハーフパンツとフードパーカー(ファイアパターンでスペシャルにキメてるぜ)を身にまとったラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)が、桃色海域を支配しようとする和深達の前に、突如姿を現した。
 珍しく、己の筋肉美を更に増強させようという意図でこの桃色海域を訪れたラルクであったが、期せずして、和深達という試練が彼を待ち構えていたのである。
「4対1でも決して怯まねぇ! 今日の俺は、ワイルドだぜぇ?」
 何故か語尾の辺りで妙に声が裏返ってしまっているラルクだが、気合の入り方は決してセドナや月琥などにも負けてはいない。
 そんなラルクひとりでも十分に立ち回れると思えなくもなかったが、ここで更に助っ人が参上する。
 イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)であった。
「ふっふふふ。ここはひとつ、火星、じゃなくて加勢と参ろう」
 本人がついうっかり口にしてしまったように、誰がどう見ても蛸型火星人にしか見えないイングラハムであったが、この日はワイルドに行こうと決めているラルクにとっては、火星だろうが加勢だろうが、この際どうでも良かった。
「蛸が仲間か。これは確実にワイルドだ。例えるなら、そう、コーラを飲んだらゲップが出る、というぐらいに確実だ」
 そんなふたり(或いはひとりと一匹)のワイルドな男気に惚れ込んだのか――更にふたりの火星、じゃなくて加勢が強力な後押しを見せる。
 ひとりは縞模様のややオールドファッションなワンピース水着に身を包んだフィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)、そして今ひとりは何故かバケツを担いだ志方 綾乃(しかた・あやの)の両名であった。
「大巨乳八連制覇、開幕! ここで勝利し、水着コンテスト優勝の花道に添えてやるのさ! さあ諸君! この僕の美貌をその目ん玉によ〜く焼きつけたまえ! そして遠慮なく、前屈みになりやがるが良い!」
 白鳥の首がびにょーんと伸びる浮き輪を腰回りに装備したフィーアの気合と迫力も、決してイングラハムの蛸足スプレッド効果には負けてはいない。
 そんな中で、バケツを担いでいるだけとい綾乃は幾分、見た目的には地味目であったかも知れないが、少林寺三十六房で修行を重ねる熟練修行僧の如き華麗なバケツ捌きは、寧ろ美しいとさえいって良い。
「我が目的を達する為とあらば……そのお水、頂戴致します!」
 いや、普通に汲んでいけば良いだけの話なのだが――そんなツッコミがあろうがなかろうがお構いなしである綾乃の猛然たる気迫に、フィーアやラルクはちょっとした感動を覚える始末であった。
 後は、誰がワン・○ーレンになるのか、という点だけが残された課題であったが、もうはっきりいって、んな細けぇこたぁ良いんだよといい添えておかねばなるまい。

 ともあれ、4対4の大巨乳八連制覇の幕が切って落とされた(らしい)。
 幕を膜に変えたりすると、ちょっといやらしいかも知れない。