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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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リア充爆発しろ! ~サマー・テロのお知らせ~

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◆その10 ああ、もっといいことしたかったな…… 

「そろそろ潮時か……」
 パイ拓を狙う者がほとんどの中、胸の型には目もくれず、別の狩りを行っている者がいた。
 旧制服時代から狩りを続け、男子ズボンの獲得のみを価値とする変態少女。自称ズボンハンターの女子生徒、萩 香(はぎ かおる:♀)
 彼女は、今度のテロ騒ぎでも噂を聞きつけてシャンバラ大平原の潜伏先からわざわざこの空京の森へやってきていた。
 パイ拓テロリストたちにまぎれての闇討ち。だが、彼女はもうその仕事を終えていた。お祭りが始まるよりも先に動き出し、目ぼしいズボンはもう手に入れていたのだ。
 木陰に隠れてテロの様子を見守っていた香。目の前を無数の男子生徒が行き来している。意識が胸に集中しているために隙だらけだ。好きなだけ刈り取れるだろう。だが、彼女はもう興味はなかった。有象無象のズボンなど要らない。狩るべきズボンはオーラが違う。一般人にはわからないが、彼女の感覚ではそうらしい。それらは、もう回収を終えたところだった。
「さて、帰るか。来年は楽しいお祭りになるといいな……」
 身を翻すと、彼女は歩き始める。退散するのは簡単だろう。きっと誰も注目しない。
 この変態少女は、外見はポニーテイルにセーラー服姿の小さな女の子だ。恋人もいない非リアだし、胸だってぺったんこだ。このパイ拓テロの最中、誰が狙うものか。安全に岐路につけることだろう。
 だが……。
「そうでしたか。仲間すらいなかったのですね」
 香りの背後からやってきたのは、美しきヴァルキリーエリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)だった。彼女は女王であり求道者であった。
 今回の噂を聞きつけて、ハンター一派を成敗しようとしていたエリザベータは、一人きりの敵に落胆の色を隠せないようだった。
 香はエリザベータに向き直った。
「知らなかったか……。俺様は、仲間も友もいない、昔から一人きりだ。必要なのはズボンだけでいい」
「覚えておきましょう。あなたに次があれば、ですが……」
【パンツ狩り求道者に変貌した】称号を持つ彼女は、全てのハンターのパンツを刈り取ってやるつもりだったのだが、残念ながらここで手に入るのは一枚だけらしい。足りない分は、他で補うとしよう……。
「……」 
 二人は無言で身構える。 
 パイ拓とは全然関係のないところで、大切なものを賭けた勝負が始まる。
 ……と、大仰に仕切ってみたものの、実のところこの少女はさして強くない。罠と闇討ちで強奪してきたのだ。正面からの戦闘では勝敗は明らかだった。
「あなたは本当に残念です」
「……っ」
「我は求道者エリザベータ……。何者にも成れない愚かな貴様達に神罰を下す者……。その身を晒せっ!」
 ドン! と強烈な一撃。求道者の渾身の攻撃が香を完全に仕留める。
「私の勝ちですね。それでは……」
 力なく倒れ伏した香を無造作に掴みあげると、エリザベータは少女の丈の短いスカートの中に手を差し入れる。
「あうっ……やめて……っ」
 涙目で懇願する香。さっきまでの強気が嘘なくらいの弱り方だ。
 熟練の求道者の手つきで、中からするりと白い布が引き摺り下ろされた。二度目の、香のぱんつだった。
「うう……また、ぱんつ取られた……ぐすっ……」
 肝心なモノさえ手に入れてしまえば、後は用はない。
「では、ごきげんよう、未熟者。あなたに素晴らしきぱんつの祝福がありますように」
 香のぱんつを握りしめたエリザベータは、後はぽいと放り捨てて目もくれずに去っていく。
 さて……。エリザベータは考える。
 全然物足りない。追加が必要だった。更なる狩りを続けよう。
 と……、足を踏み出しかけて。
「……なっ!?」
 全身が硬直し、エリザベータは目を見開く。遠くから放たれたワイヤークローと【剛神力】の効果により、捕縛されていたのだ。完全な不意打ちだった。
「獲物を捕らえるときには、狩りの終わった直後ってね」
 姿を現したのは、パイ拓ハンター瀬乃 和深(せの・かずみ)だ。実はただ巨乳を触りたいだけですっ飛んできた彼は、あれ? と首をかしげる。
 捕縛のスキルを放っているのは和深自身だ。自分自身で胸を触りにいったら逃げられてしまう。
「ちょ……、これ俺、巨乳触れないんじゃね?」
 不満げにぶーぶー言っている間に、彼のパートナーのシアン・日ヶ澄(しあん・ひがずみ)が、墨のついた紙を用意していた。
 スキル、隠れ身とブラインドナイブスで身を固めたシアンは死角からエリザベータに接近すると、おもむろに胸を開く。
 ぷるん、とエリザベータの形のいい巨乳があらわになった。
「く……」
 ぺたり、と紙をはりつけると見事な拓が投射された。エリザベータのパイ拓だった。
 物陰に潜んでいた瀬乃 月琥(せの・つきこ)の無言の合図で和深たちは姿を消す。
「……」
 戒めの解かれたエリザベータは真っ黒になった胸を晒したまましばらく佇んでいた。手にはぱんつ。
 ふと視線を移すと、香はいつの間にかいなくなっていた。
 さて、行こう……。自分にはまだやることがあるのだから。
 エリザベータも姿を消した。



「……いいですか、そこで動かずにじっと待っていてくださいね。お父さんはすぐ帰りますから」
「?」
 邪悪な気配を察知した紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、優しく微笑みながら物陰に潜むルシアの頭を一つ撫でて向き直った。
 何しろルシアである。パイ拓である。
 あの巨乳で有名なハイナの血縁のルシアの胸が小さいはずがないのである。狙われないわけがないのであった。
『ルシアの保護者』『ハイナの下っ端』を自負する唯斗は、事前にテロの情報を掴み影からこっそりしっかり完全ガード体制で待ち構えていた。
 テロの話はリファニーにのみ話し、用心を呼びかけていた。そして彼自身は身を隠し完全に気配を絶った状態で二人の側にいたのであった。万全の警護体制で。
「……」
 だが、そんな唯斗も痛恨の思いに身を打ち震わせる。
 先ほどの不埒な狼藉者、神条和麻なる人物が不可抗力とやらであろうことかルシアを押し倒してしまったというのだ。いつも傍にいる唯斗ですらそんな真似したことないというのに! うらやま……もとい、けしからん!
 あの時、唯斗は偶然にもルシアに頼まれてお使いというかパシっていたところだった。「どうしても、お願い」と頼まれてどうして断れよう。
 天罰覿面、ルシアを押し倒した不逞の輩は炎に焼かれ厳しく打ち据えられていずこかへ去っていったという。いい気味だった。
 だがいずれにせよ。あのような失態二度と許されることではなかった。
 もしルシアに事あれば、その場で切腹して果てる所存! ……いや、侍じゃないけどね。とにかく、唯斗はぐっと力を入れる。
「ルシア……」
 良いか! パイ拓なんぞ取らせてたまるか! そんなうらやま……阿呆な事はお父さん断じて許しません! お父さんじゃ無いけどね!?
「呼んだ、お父さん?」
 身を潜めているルシアが呼びかけてくる。
 ごふっ……、と唯斗は咳き込む。ルシアのお父さん呼び、凄い破壊力だった。
「なんでもないですよ」
 唯斗は安心するよう言ってから、敵の気配に近づいていく。
 彼は、スキルの隠れ身とブラックコートで姿と気配を殺し風術で音の大気の壁を作り音を殺す事で完全ステルスモードになっていた。
 視界はダークビジョンでしっかり確保。
 サイコキネシスで絆の糸と戦乱の絆を合成して編み上げた極薄で非常に長い糸を操作する。
 それは、ピアノ線なんか話にならない丈夫さと柔軟性と自在の斬れ味を秘めていた。ルシア達へ近付く輩に音も無く忍び寄り、キュッと動脈を絞めて寝て貰う。そのまま音も無く頭上に引き上げ逆さ吊りにできるという、頼りになる仕様だった。
 かかった獲物は朝まで放置しておけばとても素敵な結末を迎えることができるだろう。
 森中に張り巡らされた糸の結界がとてもいい仕事をしてくれるはずだった。
「……」
 敵が来た。唯斗は無慈悲に攻撃を繰り出す。
「ぎゃああああっっ!?」
「きゃあああああ」
 敵に女の子がいる、と唯斗は見て取った。女の子は……そう、悪さしようとする道具と衣服をスパッとやって追い払ってやろう。
 スパリ。
「うわああああんっ」
 衣服をスパッとやられた女の子は逃げて行った。
「……」
 唯斗は、糸で吊り上げられた標的を見上げた。
 それは、先ほどいい活躍をした瀬乃和深だった。次は大物と、ハイネっぱいの血を継ぐルシアっぱいを狙ってやってきたのだ。だが、それもここまでだった。そのまま、朝までさらし者で放置されることになる。
 哀れな和深は、結局、巨乳には指一本触れることなく祭りを終えたのであった。