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リアクション
11月生まれ:オデット・オディール(おでっと・おでぃーる)のケース
『占いはあくまで参考にする程度、良いことがあれば万々歳、くらいのスタンスだけど……』
「直感を信じて、かぁ……」
検証依頼の貼り紙の、11月の占いの文言を見て、オデットは呟いた。
……今日は筆が乗りそうな気がする。
「よしっ」
そこで、まっすぐ蒼空学園の校内の、奥まったところにある一室へと向かった。資料室なのだが、ほとんど人は来ないことを知っている。邪魔されることなく「書き物」に没頭できる場所である。
夏の日の昼近く。登校してくる他の生徒たちの喧騒からが遠くで響いている、その静かさの中で、「執筆」はかなり捗った。
気が付いたら、数時間が過ぎていた。
(う〜っ、集中できた〜っ)
雑念なく没頭できた後の、どこか心地よい脱力感を胸に立ち上がり、伸びをする。まだ日は高い。
「じゃ、泳ぎに行こうかな」
学校のプールは開放されていると分かっていたので、水着は持参している。程よく頭脳労働をした後で、思いっきり体を動かすのは心身のバランスも取れて、健康的なことに思える。午前中の「文筆活動」の首尾の良さ、そのことへの充足感も相まって、別に変ったことをするわけでもないのに、気持ちが晴れやかに、浮き立ってきていた。
ただ。
「!?」
資料室を出てプールのある方へと向かう途中の渡り廊下で、水着姿ではないのに(そもそもプールでもない)……普通に服を着ているのにびしょ濡れの人物がいたのに驚いた。
手にした本まで濡れそぼっているのが、何だかちょっと胸が痛いが……
「あ、あの……服を着たまま泳いだわけじゃ、ないよね……? 何か分かんないけど、大丈夫?」
服からもその本からも、ぼたぼた雫を垂らしている御凪 真人(みなぎ・まこと)に恐る恐る声をかけると、真人は濡れて顔に張り付く髪をかき上げて、傍目にはごく落ち着いて見える表情をその顔に浮かべて、オデットに微笑んだ。
「あぁ、大したことじゃありません。ちょっとしたアクシデントです。お気になさらず」
「アクシデント……?」
首を傾げたオデットだったが、しかし、雫を道標のように落としながらすたすた歩いていく真人の後ろ姿を見送って、深くは追及しないことにしようと思った。
何となく、その方がいいような気がしたからである。
そして、プールで思う存分泳いだ。すっかりリフレッシュして、夕暮れの風が水から上がった肌に寒さを覚えさせる少し前に、上がった。
『結果:◎
とても充実した1日になったなぁ。……結果的には当たったのかも』
**************
●委員Bによるチェック●
数時間も書き物って……課題なのか何なのか、そこは詳しく書かれてないから分からないが、相当な仕事だな。
特別に大きな出来事はなくとも、充実した日こそが幸運……そういうものなのかもな。
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