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12月生まれ:レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)のケース


『ラッキーな一日になるといいなっ!』


(どうもおかしいのう)
 ミア・マハ(みあ・まは)は、閉じたレキの部屋の扉に怪訝そうな視線を送る。
 買い物に出かけて行ったかと思えば、ずっと部屋に籠っている。
 アウトドア派の彼女にはおかしい態度である。
 今日は一緒に、開放されている百合園学院のプールで、のんびり涼もうと思っていたのだが……と、少し不満にミアは考えている。
 しかも、普段の彼女には滅多にない、妙にこそこそした感じが、気軽に「一体何をしておるのじゃ?」と聞き出せない感をそれとなく醸しているので、もやもやした感じを抱えて、こうした彼女が出てくるのをただ待っているわけである。
(! ……もしかして!)
 このこそこそ感、もしやサプライズ的な何かの準備では?
 そう考えて、ピンときた。
(わらわの誕生日は来月……もしやその準備か?)
 そうかそうか、それならば待とう、プール行きも我慢しよう。
 もやもや感の中に期待感が生まれ、ミアはそわそわした気持ちで待ち続けた。


 12月生まれの運勢――独自の表現で、日ごろの感謝を示すと吉。
(日頃の感謝って言うと…やっぱりミアにすべきかな?)
 独自の表現ってどうすべきだろう。彼女が喜ぶのは食べ物だけど、料理の苦手な自分に、そちらの方面で独自の表現ができるとは思えない。というわけでレキは、それ以外で彼女に喜んでもらえる方法を考えた。
 そういえば、ミアはいつも自分の体形のことを気にしている。
 じゃあそれを解消するものを作ったら喜んでもらえるのでは?
 ――そう考えた結果が、ミアが訝っている、買い物の後の部屋籠りである。
「……できた!」


「これを、わらわに……?」
 恥ずかしそうにもじもじとレキが差し出してきた包みを受け取り、ミアもドキドキしてちょっとはにかむような気持ちになる。
 開けてもよいのか、と訊くと、やはり恥ずかしそうに頷きながらも、ミアの反応が楽しみなのだろう、目は輝いている。
 胸の高鳴りを抑えながら包みを開くと、そこには。

「……ブーツ?」
 しかも異様に……底の高い。
「うん。これで身長が高くなるよ!!」

 あまり盛りすぎて歩く時に危なくないよう、底の高さは10〜15センチ程。
 彼女の好みに合わせて、色は黒。外見も可愛らしく、リボンをつけて。
 感謝の気持ち、手作りシークレットブーツ。これでどうだ!!
 胸を張るレキの前で、ブーツを掴んだミアは、プルプルと肩を震わせている――

「嫌味かそれはーーーっ!?」
 大怒号である。
「えーーーー!?」

(わらわは……誤魔化したいのではないっ!!)
 善意を喜んでくれるものとばかり思っていたレキの呆気に取られた顔に、期待していて裏切られて分と合わせて、余計に怒りがこみ上がってくる。
「――ええい、そこに直れっ!」


 結局、頭を杖でポカポカされた。


『占いはハズレっぽい。
 ただ、ラッキーアイテムの帽子を被っていなかったので、もしかしたら、被っていれば結果は変わっていたかも。』


**************

●委員Aによるチェック●
 誕生日プレゼントだと思ってた開けたらシークレットブーツ……ご愁傷様。
 善意ではあっても、いつの世も体型に関することってデリケートな問題よね。
 帽子をかぶっていたらこの結果が回避できたかどうかは……うーん、ちょっとコメントしづらいわ……。