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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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2月生まれ:紫月 唯斗(しづき・ゆいと)のケース


『これで当たればめっけもの、ってな』


 葦原明倫館の掲示板で占いの検証依頼は知ったものの、積極的にやれることは唯斗には多くはなさそうだった。今日は総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)からの指令を遂行するという任務がある。予定にない行動をとれる余地はなさそうだ。
(ってもお使いなんだけどなー)
 夏の長期休暇が終わると、秋に向けて学校でも様々な行事の準備が始まる。学校外の団体・個人に協力を頼むようなことも多く、その関連の書類を葦原島内のある企業に届けるよう言われている。
 占いの内容によると、『ネガティブ発言はNG』で『汗をかくことが開運行動』。
(要するに、ぐちぐち女々しいことは言わず、面倒がらずに働けってことじゃねぇの?)
 気持ちをへたばらせずにお勤めに励めって意味だ。そう解釈して、出かけた。


 葦原島の城下町は、夏の暑い日の中、今日もどこかのどかな賑わいを見せている。
 唯斗が歩く、大通りからは外れた下町にも、明倫館の生徒の姿がちらほらあった。
 仲間同士の呼び交わし、笑いあう声、飛び交う手裏剣、クナイ、その他暗器、白刃の閃き。
――「って、何でだっ!?」
 気が付くと、全力疾走の果てに、隠密科の新入生を三人程、峰打ちで仕留めていた。
「あ、あれっ!? 参加者じゃなかったンスか!?」
 仕留めた生徒から話を聞けば、休み明けの実技試験に備え、隠密科を中心に十数人程の新入生が二手に分かれて、城下町の白兵戦を想定した隠密合戦を行っていたのだという。
「……参加者の顔くらい、事前に確認しとけよ」
 そこへ、別の生徒たちが突然駆けこんでくる。
「大変だ! ○○が井戸に落ちた」
「▲▲さんが、木から降りられないって…」
「××の奴が、石垣の隙間に腹がつかえて詰まった!」
「……」
 放っておいてもよかったのだが、でもやはり見て見ぬふりは出来ず、未熟な新入生たちに同行して、救助に駆け回る羽目に。
「身の丈に合った戦いやれっての」


 そんな騒動に巻き込まれ、急いで、郊外の山間部に広大な敷地を持つ某企業へと向かう。
 唯斗が着いた時、社内は何やら大騒ぎになっていた。
「空京本社から視察に来た社長が、社の裏山に住んでいる大蛇を見に行ったまま戻らないんです……!」
 どんだけ間が抜けてんだ、と膝から崩れそうになった。
 グッドタイミングで現れた「契約者」に注がれる、幾多の社員たちの縋るような眼差しに抗えず、唯斗は渋々裏山に向かった。
 社長を助けてほしいが、大蛇はこの山と敷地の守り神なので傷つけても困る、という我儘なリクエストを背負って。
 ――結果として、蛇に睨まれて竦んでいた社長を助け、蛇にはヘッドロックをかまして追い払った。


 想定外の厄介事でくたくたになって、予定時間をかなりオーバーして明倫館に戻ると。
「ずいぶん遅かったでありんすのう。わっちはもう三十分早く帰りたかったのに」
 迎えたのは報告を待ちくたびれたハイナの、幾分ボヤキの混じった言葉であった。


 泣き言を言わず、汗も骨身も惜しまず働いたのだが……

(今日も何故か大変だったなぁ。全然ツイてないし……
 あれ? てかツイてないと思ったけどさ、これ、もしかして……いつもどおりじゃねぇか?)


『普段から基本的にツイてない、という事が発覚した……』

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●委員Cによるチェック●
 たまにいるな……仕事量の割に報われてる感の少ない奴って……
 他人事とは思えん。…………沁みるな……