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リアクション
「16回戦、タシガンかるた会 アレクス・イクス(あれくす・いくす)さん対海京かるた会 瀬山 裕輝(せやま・ひろき)さん。前に出て下さい」
座った裕輝は札の中に東方妖怪伝奇録 『霊奇譚』(とうほうようかいでんきろく・れいきたん)が交じっていることに気付く。
が、なにもしない。
―――べしっ
霊奇譚だと分かっている祐輝は容赦なく叩く。
札を弾くと霊奇譚が化けた天狗が現れる。
「天狗なら、コレやなぁ」
懐から鯖を取り出す裕輝。
「鯖食ったー鯖食った―」
すると、霊奇譚は悲鳴を上げて消えていった。
次に詠まれた時に現れたのは、鬼。
「鬼の対処なんて、簡単やないの」
煎り豆を思い切り投げつけ、イワシの頭を顔面に押し付ける裕輝。
「仕舞いや。柊は流石に用意出来んかったが、まぁええやろ」
爆竹を鳴らすと、霊奇譚は悲鳴を上げて消えていった。
霊奇譚の札を取るたびに現れては裕輝に消されていくのを繰り返していると、今度はアレクスの猫の手がさく裂する。
「にゃー!!」
アレクスは軽いフットワークで左右に動き、鋭い猫パンチで札を取っていく。
―――パパシン!
僅かに裕輝の方が早く札に手を滑り込ませると、アレクスはうるうるとした瞳で可愛い猫ちゃんポーズをして強請ってみる。
「なにしてるん? そんな目ぇして可愛いとでも思うてるんか」
鼻で笑う裕輝。
アレクスは強請することは諦め、猫パンチのみで札を取ることにした。
霊奇譚の日本妖怪シリーズも登場していた16回戦。
発狂判定では裕輝が『女の子の体のヒミツ』を借りて発狂を回避した。
「ハハハ、前に保健体育の教科書でアレやったので恥じらいなど無いわぁ」
発狂したアレクスは、完全な無表情で猫背をものともせずブリッジをしだす。
そこへ救護班が救護へかけつけると、救護者たちの手を気持ち悪くにゅるにゅるとかいくぐって這いまわり続ける。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん。」
そう唱え続けるアレクス。
メディックなら白衣の天使と考え、ナース服を着ているヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)が半透明の旧神的な何かを感じながらアレクスの元へ行く。
「なんて冒涜的な……」
それだけ言って、にゅるにゅる動き回るアレクスを回収する。
「17回戦、海京かるた会 赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)さん対イルミンスールかるた会 ルイ・フリード(るい・ふりーど)さん。前に出て下さい」
グラフ・ガルベルグ著 『深海祭祀書』(ぐらふがるべるぐちょ・しんかいさいししょ)にかるたの短歌は魔法の詠唱に通じるものがある……らしいと言われ、参加した霜月。
「(短歌を読み上げるならともかくかるたをとるのは魔法の修業と関係ないのでは?)」
「ははははは、何やら怪しげな空気が見えますが、きっと対戦相手の気合でしょう!!」
全力で挑もうとする霜月、己の鍛えたボディを信じて勝負するルイ。
たがいに気合は十分。
ルイはカルタの札の位置の全体を一枚の絵を例え把握を行うことはら始めた。
「みかきもり」
―――ばしーん!
ナコトが発した歌の一句目から瞬時に札を連想し、札目掛けて一直線に手を平たく伸ばし、札を弾き飛ばしたルイ。
ルイには決まり文字までは知らなかった為、連想から札を弾いて行く。
霜月もグラフに教えられたモノを活かして、素早く札を取っていく。
―――ばしーん!
「あなたのしっぱい あざらうものなり」
ルイの連想ではやはり限界があったのだろう。
はじいた札は違うものであった。
正確に札を取っていく霜月。お手付きで札が減らないルイ。
勝負は霜月の勝利で終わった。
「自分はこの深海祭祀書を」
「私もセラで」
どちらもパートナーの魔道書で狂気を回避した二人。
勝者の霜月が第二試合へ、敗者のルイは敗者復活へと行くことになる。
「ルイは発狂しませんでしたか。さぁ、皆どんな狂気を魅せてくれるのでしょう♪」
観客席で個人防衛用にインビジブルトラップを5m間隔で四方に設置して、カメラとビデオカメラで他人の発狂を嬉々として撮っている、映しているシュリュズベリィ著 セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)。
「あぁ。早くそしてもっともっと、その場でお腹を抱えて笑えるほど楽しい狂気を見物出来ないものでしょうか!」
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