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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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最終日

「おはようございます。雪比良君、ナナシ君」
「おはよう貴方達」
「あ、おはようございます」
「おはよう」
 最終日の朝。アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)セシリア・ノーバディ(せしりあ・のおばでぃ)は、朝早くから動き出そうとしていたせつな達を見かけ声をかけた。
「おはようございます、先生、セシリアさん。それから雪比良さんとナナシさんも」
 そして、遅れながらアルテッツァ達の後ろからやってきた六連 すばる(むづら・すばる)
「おはようございます。六連君。予選会の疲れは取れましたか?」
「はい。ばっちりです」
「雪比良君達も大変そうではありますが、体調の方は平気ですか?」
「はい、あたしは平気です」
「俺も問題はないな」
 どこか疲れた様子はあったものの、概ね大丈夫そうだ。
「それでしたら良かったです。それと、雪比良君。少しお時間いただいてもよろしいですか?」
「色々と調べたら分かった事があったのよ。だからそれを教えておこうと思ってね」
 アルテッツァとセシリアはせつな達にしか聞こえないように身を寄せて呟いた。
「……分かりました。ナナシ、良いよね?」
 話を理解したらしいせつなが横にいるナナシに聞くと、ナナシも小さく頷く。
「分かった。場所を移そう」
「そうですね。あたしの部屋で良いですか? ここから近いですから」
「構いませんよ」
 五人はせつなの部屋へと移動した。

「……話というのは『C』の話か?」
 最後に入ったナナシがドアを閉めながら、アルテッツァ達に聞く。
「えぇ、そうよ」
 ナナシの言葉にセシリアは頷いた。
「根回しでナナシ君が怪しいと言っていた六人がここ一週間、何処で何をしていたか聞いてまとめてみたの」
「ほう、何か分かったのか?」
「五日目の夜、せつなさんやナナシ君が『C』に襲われたみたいでじゃない?」
「確かに襲われましたね」
「えっ!? せつなさん大丈夫でしたか?」
 慌てるすばるに対し、せつなが笑顔で頷く。
「えぇ。他にも助けてくれた人がいたから。特に怪我もしていないわ」
「はぁ……良かったです」
「話、続けていいかしら?」
「あ、ごめんなさい……」
「良いのよ。ワタシも心配していたから」
「それで、襲われた事がなんの関係になるんだ?」
「おっと、それでね。その襲われた時に、行き先が不明な人を探してみたの」
「……誰かいたのか」
「えぇ、襲撃されたときに行き先不明だった人物は四人。ケビン君、レイちゃん、そしてサーシャちゃんとミーシャ君ね」
「……間違いはありませんかシシィ?」
「えぇ。ごめんね。もう少し絞れればよかったのだけれど」
「いや、十分だ。助かる」
「とりあえず、現状はこの四人の行動に注意しておきましょう。お二人もなるべく四人と接触するときは単独で接触しないように。いざというとき助けられませんから。あと、こちらを。ボクの電話の番号です」
「あ、ではあたしの方も……」
 せつなとアルテッツァがお互いに番号を交換する。
「こちらも何も起こらないように監視を続けますが、何か起きたらかけてください。すぐに駆けつけます」
「ありがとうございます」
「ワタシ達はトーナメントの裏側で『C』探し……ううん、『C』達を封じ込める作戦を行うわ。くれぐれも単独行動はしないようにね」
「分かりました」
「ではボク達はこれで失礼します」
「はい。ありがとうございました」
「情報提供感謝する」
「では、お二人ともまた後で会いましょう」
「またね」
 三人はせつな達の部屋を後にする。

「さて、ボク達も早速行動を始めましょう」
「えぇ。それとパパーイ。ここからが大切なところなの」
 セシリアが真剣な目でアルテッツァを見る。
「この情報をパピリオにも伝えたわ……ただ、対象者を一人に絞ってね」
「……なるほど」
「彼女が『C』の側に立とうとするなら、対象者につきっきりになると思うの。その姿が見られれば、彼女がワタシ達に害をなす存在だとはっきり分かるし、そうでなければ御の字でしょ、パパーイ?」
「パピリオがそんな事を……?」
「どうなるかはパピ次第ですが、おそらくは……」
「四人の方も注意しなければいけないけれど、パピリオの行動にも気をつけておいて」
「分かっていますよ」

 その頃、パピリオ・マグダレーナ(ぱぴりお・まぐだれえな)はとある人物を探して校舎内を歩いていた。
「あ、みっけ〜」
 そして、パピリオの前にはレイの姿。
「やっほ〜。レイ」
「ん? えっと、パピリオだっけ? どうかしたの?」
「オブザーバーって仕事、ぱぴちゃん良くわっかんないんだけど、詳しく教えてもらっても、いーい?」
「オブザーバーについて? まぁ、別に良いけど。えっとね――」
 レイが説明をするもパピリオはレイをジッと見て、聞いている風を装っているものの、仕事に関する話はまともには聞いていなかった。
 彼女が知りたがっているのは、レイがどれだけ『異常か』ということ。そのため、仕事に興味があるわけではない。
「――こんなところだけど、良い?」
「へー、すっごいなぁ、かんしんしちゃーう」
 パチパチと手を拍手するパピリオ。
「……なんかあまり聞いてない感じがするんだけど?」
「気のせいだよ。ねぇねぇ、レイの持っている技能って、どうやって身につけたの?」
「あたしの技能?」
「どりょく? こんじょー? それとも……遺伝子操作? ぱぴちゃん、そーゆーのしている人、知りたいなぁ」
「あたしは天才だからね。遺伝子操作なんかしなくてもこのぐらい朝飯前だよ!」
「へー、そっかー」
「用事はそれだけ? あたしも暇じゃないからそろそろ行くよ?」
「あ、ぱぴちゃんもいくー」
「別に良いけど、面白い事ないよ?」
「いいの、いいのー」
「……あっそ、じゃあ好きにすれば良いよ」
「うん、好きにするねー」
 そう言って、パピリオはレイについていく。
「……今は分からなくても少しずつ……。必ず探し出すから」
 レイにも聞こえない声で彼女は呟いた。