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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

リアクション

 予選会もつつがなく終了し、明日までは自由時間となった六日目。
「みんなお疲れ様ー。しっかりやってるかなー?」
「お、西枝か。お疲れ様」
「お疲れ様。そっちも忙しそうね」
「おつかれさまですー」
 教室で雑談していた世納 修也(せのう・しゅうや)ルエラ・アークライト(るえら・あーくらいと)リーゼロッテ・フォン・ファウスト(りーぜろって・ふぉんふぁうすと)フィア・シュヴェスター(ふぃあ・しゅう゛ぇすたー)、四居レミカ(御神楽 陽太(みかぐら・ようた))達の元にレイが顔を出してきた。
「後はトーナメントを残すだけだねー」
「そうね。あっという間だったわ」
「どう? 勉強にはなった? まぁ、勉強にならなかったら何の為に来たんだって話だけどねー」
「オブザーバーの目から見て、みんなはどうだった?」
「んー。まぁ、一生懸命やってるなぁってのは伝わっていたかな」
「せっかくの機会だからな。さすがにサボるやつはそういないだろう」
「色々な人とも知り合えたし、ボクは楽しかったよ」
「フィアも……同じ……です」
「確かに、こういうときじゃないと交流なんてあまり出来ないもんねー」
「それはあるかもね。ワタシも面白い話色々聞けたしね。それでレイ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」
 レミカが自分の持つメモ帳を開く。
「『C』って聞いた事ない?」
 レミカの言葉に他の面々がピクッと反応を示す。
「『C』? なにそれ?」
「私も噂で少し聞いたわね……。なんでも、たびたび現れては人を襲っているとか……」
「俺も似たような話を聞いたな」
「へぇ、そんな人がいるんだ。犯人とか見つかったの?」
「そのあたりはまだ見つかってないんだって。なんでも生徒の誰かになりすましているとか……」
「うわっ、危ないじゃんそれ。こんなことやっていていいの?」
「まぁ、大丈夫じゃないかしら? 今のところは表立った行動してないし」
「危険な目は早いうちから摘んでおくべきだと思うけどなぁ」
「もちろん、阻止しようと行動を起こしている人もいるわ」
「それに摘むにしても、誰か分からないんじゃどうしようも出来ないだろう?」
「それもそっか。不確定なもののために今更トーナメントを中止にするわけにもいかないもんねぇ」
「レイ、私からも一つ質問を」
 リーゼロッテが小さく手を上げる。
「はい、どうぞ」
「あなたなら、誰が『C』だと思いますか?」
 リーゼロッテの言葉に肩をすくめるレイ。
「いきなりそんな事言われてもねぇ。情報もなしに判断できないよ」
「どうやら、未来の技術を持っているらしいぞ」
「未来の技術ねぇ……。例えば?」
「特質な能力とかそれに該当するんじゃないかしら?」
「ロシアの二人とか?」
「サーシャ、ミーシャ姉弟の事か?」
「そうそう。その二人。確か道具もなしに、体感速度を変えられるって話でしょ? なら、その二人が一番近いんじゃない?」
「ふむふむ……あ」
 レミカは、書いていたメモ帳から顔を上げてレイを見る。
「そういえば、レイもまだ小さいのに秀才よね?」
「むっ、小さいは余計だっ! それで? まさか、あたしがその『C』じゃないかって疑っているの?」
 睨むレイに首を振るレミカ。
「いやいや。そういうわけじゃないわよ。でも、特質な能力を持つって話ならレイもだなぁってね」
「ふむ……。まぁ、あたしは頭良いからねっ。でも、もし仮にあたしが『C』だったとしたらキミ達はどうする?」
 レイの言葉に全員が考える。
「俺は……、よく分からないな。だが、もし『C』が現れて事件を起こしたとしたら、周りの人の救助をしにいくかな。知り合いが巻き込まれるのは気分が悪いからな」
「ボクも一緒かな。危なくないように避難誘導するよ」
「あはは、修也らしいね。知り合いを巻き込みたくないとかね。リーゼロッテ達はどう?」
「私は……、たとえレイが『C』だったとしても構わないわ。あなたはフィアと遊んでくれた友人。狙われる事になったら私はあなたを守るわ」
「……うん。レイはフィアと遊んでくれた……。それに、お姉ちゃんが決めたこと……だからフィアも……レイを守る」
「嬉しい事言ってくれるねぇ。じゃあレミカは?」
「ワタシはそうねぇ。もしそうだったとしてもワタシは個人では何もしないわ。協力者に情報を提供するだけよ。もちろん、戦う事になったら手伝うけれどね」
「そっか、まぁたとえ話だし深く気にしないでも良いよ。そんな人を疑いながら生活したくないでしょ? その現場を見たときに判断すれば良いんだよ」
 レイの言葉に修也が頷いた。
「そうだな。とにかく何事もなければそれで良い」
「お、みんなこんなところで雑談か?」

 教室からの話し声が聞こえたため、国頭 武尊(くにがみ・たける)はふと覗いてみた。
「うん。今日のカリキュラムは終わってるからねー。楽しく雑談してたところだよ」
「そうか。そういや、トーマスとケビン見なかったか?」
「二人ならイコンのところじゃないか?」
「そう思って、行ってみたんだが居なかったんだよ」
「あ、そういえば歩いていくのをさっき見たかも。ね、フィア?」
 ルエラが言うとフィアも頷く。
「はい……フィアも……見ました」
「おっ、どこにいったか分かるか?」
「う?ん。さすがに分からないなぁ」
「そうか……。少し話をしたかったんだけどなぁ。どこ行ったんだろうなぁトーマスとケビン」
「なら、呼び出す?」
 レイの言葉に少し考えた武尊だが、首を横に振った。
「いや、私情で使うのも悪いだろう。まだ時間はあるしもう少し探してみるわ」
「なんだ? 俺達に用か?」
 武尊が教室を出ようとしたところでトーマスとケビンが顔を出した。
「なんか、僕達の話をしていたみたいだけど」
「俺が二人に話したいことがあってな」
 武尊が二人の前に出る。
「実は、二人をパラ実分校に勧誘しようと思ってな」
「俺達を?」
「あぁ、パラ実分校にはイコンの専門家や設備もないからさ、二人には操縦訓練や整備技術の講習を含む、イコン関連全てを任せたいと思っている」
「イコン関連全部僕達にですか? 確かにそれなら僕達を勧誘するのも道理だけど……」
「パラ実分校はニルヴァーナ創世学園と違って、即存勢力の紐や鈴が付いていないからイコン関連に限っては二人の好きなようにさせてやる事が出来るんだ」
「でもなぁ……」
 渋るトーマスを見て、武尊がその場に土下座を始めた。
「頼むこの通りだ! 少しでも優秀な人材を引き込みたいんだ! オレにもっと力があれば、二人に色々と提示してやれるんだろうけど、今はこのぐらいしか出来ないんだ。この通りだ!」
「……必死だね」
 若干さめた目でレイが武尊を見る。
「もちろんだ。このぐらいで二人が来てくれるなら安いもんだ」
「……ケビンはどうだ?」
「うーん……。トミーこそどうする?」
「俺か? そうだな……」
 絶賛土下座中の武尊を見る。
「……まぁ、考えておく」
「本当か!?」
 ガバッと顔を上げる武尊。
「あぁ、さっきも留学がどうだの話を聞かされてたしな……。とりあえず、保留ってことにしておいてくれ」
「まぁ、トミーがそういうなら僕も保留にしておいてくれる」
「おう! 前向きに検討しておいてくれ!」
「んじゃ、俺達はこれで行くから」
「じゃあね」
「あぁ! またな!」
 嬉しそうに二人の背中を見る武尊。
「とりあえず、良かったね」
 レイが声をかける。
「まだ決まったわけじゃないが、望みはあるからな! よっしゃ、色々と準備しておくか!」
 意気揚々と教室を出て行った武尊だった。

「……なんだったの?」
「さぁな」
「台風みたいだったわね」
「あはは……だね」
「……です」
 そして、教室に残された面々はただ困惑するだけだった。