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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

リアクション

 コード:S^2がせつな達の元に現れた頃、テレサもコード:S^2、怪異、エッツェルの姿を探していた。
「……コード:S^2よりも禍々しい気配……。一体どこにいるのでしょうか……?」
 キョロキョロと周囲を見ながら歩く。
「……こっちでしょうか?」
 彼女は、特別教室の集まる特別棟へと続く渡り廊下を眺めた。

「ん? あれはテレサちゃん?」
 カリキュラムを抜け出してきた柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)はテレサの姿を見つけた。
「こいつはラッキー! 今度こそ電話番号と連絡先を教えて……って、真剣な顔して何してるんだ? まぁ、話しかければ分かるか」
 そのままテレサへと歩み寄る。
「なんだが真剣な顔してるね?テレサちゃん。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
「……あ、桂輔さん。こ、こんにちは」
「何か困りごとでも? もしあるなら俺が力になるよ」
「えっと……」
 テレサが俯き、考え込んだ。
「実は――」
 意を決したのか、桂輔にコード:S^2とそれよりも更に、強力かつ、禍々しい気配を持つ何者かについて説明してきた。無論、彼女が「教会の執行官」であることは伏せられていたのだが。
「……この会場内に禍々しい気配を放ってる何者かがいる……かぁ」
「は、はい。被害が出る前に対処しないと――!」
 言いかけたテレサは、何かの気配を察知したようだ。
「……? どうかした?」
「……見つけました。ご、ごめんなさい! 失礼します!」
 テレサが桂輔に頭を下げて、走って外へと向かう。
「あ! ちょ、ちょっと待って!」
 それを桂輔は、慌てて追っていった。

「見つけた……って、こいつは……?」
 桂輔はテレサに追いついた。彼女の前には、コード:S^2の存在を探知し、水晶翼を広げその場所へと飛行しようとしていた怪物――エッツェルの姿がある。エッツェルはテレサの存在を視認すると、翼をしまい動きを止めた。
「禍々しい気配……。見つけました」
「こ、こいつがか?」
「はい……。危険ですので下がって――」
「何言ってるのさ」
「……え?」
 桂輔は【シュヴァルツ】【ヴァイス】を構えた。
「テレサちゃん一人に危険なことさせられないって! 援護するぜ」
「……ありがとうございます。では――」
 テレサが武器である4尺ほどある杖を構える。
「怪異なる者よ……。あなたを断罪します!」
 エッツェルへと突撃するテレサ。
「…………」
 テレサを邪魔者と認識したエッツェル。向かってくるテレサに対し、異形化左腕を振るう。手のひらであった場所にある巨大な開口部が開き、テレサを捕食しようとする。
「そのぐらい……!」
 それを素早くしゃがんで回避。そのまま懐へと飛び込む。
「せいやっ!!」
 そこから流れるように繰り出す連撃。だが、高い再生能力を持つエッツェル。周囲から魔力をかき集め、自己修復する。テレサが与えた傷もあっという間に塞がってしまう。その光景に、彼女は目を見開いていた。
「この杖には祓魔の術式が刻まれているのに……なんで再生できるの……?」
「…………」
 エッツェルは何事もないように腕をなぎ払うように振るう。
「……っ!」
 杖を構え、防御。後方まで吹き飛ばされる。そのテレサ向けて、エッツェルの身体の無数の触手が放たれる。
「させるか!」
 テレサを庇うように前に出た桂輔の銃による弾幕援護で、触手を撃ち抜く。撃たれた触手はエッツェルの身体へと戻り、再び新しい触手として現われテレサを襲う。
「おいおい、これじゃキリがないぞ……!」
「ですが、止めなければ……!」
 桂輔の横をすり抜け、エッツェルへと走るテレサ。
「おい、テレサちゃん!」
 迫る触手を紙一重でかわし間合いを詰める。
「これで、どうです!!」
 勢いを利用しての渾身の突き。エッツェルの腹部を直撃。
「…………」
 だが、少し動きを止めただけで、決定打にはなっていない。
「うそ……!?」
 間合いを取るテレサ。
「…………」
 エッツェルの身体にある無数の目が開き、テレサを睨む。
「ぁ……」
 睨まれたテレサの動きが止まる。
「身体が、動かない……!?」
 石のように固まってしまったテレサ。
「…………」
 そのテレサにエッツェルがゆっくりと左腕を伸ばす。
「いや……!」
「やらせるかぁ!!」
 銃を捨てた桂輔が飛び込みテレサを抱きながら横へと転がり捕食を免れた。
「ふぅ、間一髪。大丈夫?」
「は、はい。あ、ありがとう、ございます……」
「…………」
 そこにエッツェルが再び無数の触手を飛ばす。
「これはまずいなぁ……」
「こんなところで負けるわけには――」
「えぇ、その通りですわ」
 呟くテレサの言葉に反応するように、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が二人の前に現れた。無数の触手をさばき、その身体にも触手を受けつつも、身にまとう漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)の痛みを知らぬ我が躯、リジェネレーションによって、ダメージを最小限に抑えていた。
「綾瀬さん!?」
「桂輔、探しましたよ」
 再び迫る触手をライフルで撃ち落としたのは、桂輔のパートナーであるアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)だ。
「アルマ!」
「少し目を離した隙に抜け出すなんて許せません。後で抜け出した分も受けていただきます」
「うへぇ……。でもまぁ、助かった」
「テレサ様、大丈夫ですか?」
「は、はい。でも綾瀬さんのほうが……」
「この程度なら、大丈夫ですわ」
「では、仕切りなおしといきましょう。桂輔、銃です」
 アルマが桂輔の銃を手渡す。
「お、ありがと」
「これ以上、誰かを傷つけるわけにはいきません……!」
「そう、その想いを秘めて戦う事が出来れば、人は強くなれるものですわ!」
「……行きます!」
 呼吸を整え、テレサがエッツェルへと走る。
「…………」
「行くぜアルマ!」
「分かっています」
 エッツェルは触手を放つ。それらを桂輔とアルマが撃ち落していく。
「…………」
 その間に、綾瀬は魔槍スカーレットディアブロをもち、精神を集中させる。
「はっ!」
 二人の援護を受け、エッツェルの元にたどり着いたテレサは再び、杖による連撃を浴びせる。
「追撃です」
 アルマのライフルもエッツェルを狙う。
「…………」
 エッツェルは水晶翼を広げ、銃弾を防ぎ、テレサに対して左腕を振るい吹き飛ばす。
「……っと」
 うまく衝撃を受け流したテレサ。後方に吹き飛ばされつつもうまく着地を取る。
「さぁ、行きますわよ……」
 今まで集中していた綾瀬。投擲の構えを取る。
「神を冒涜する所業に裁きを――Amen」
 そのまま、手に持った槍を全力投擲!
「…………!」
 槍はエッツェルを貫く。その衝撃にエッツェルは全ての動作を一時停止。だが、倒せるまでにはいたっていない。
「おいおい、あれを受けてもまだピンピンしてるのか……」
「少し厳しいですね……」
「…………」
 だが、エッツェルは少し停止し、何かに気づくと、おもむろに水晶翼を広げる。それに全員が身構えるが、エッツェルは翼をはためかせ、凄まじい速度で姿を消した。
「……逃げた?」
「……とりあえず、危機は去ったよな……」
「あれは倒せるのでしょうか……?」
「さすがにダメージが入ってないわけじゃないから頑張ればいけるんじゃないか……?」
「そうですね……。とりあえず……」
 ガシッと桂輔の襟首を掴むアルマ。
「あ、アルマ……?」
「危機は去りました。サボった分を受けてもらいます」
「ぐえっ! ちょ、切り替えはやくない!? あ、二人ともまたねー!!」
「あ、あはは……どこかで見た光景です……」
「そうですわね……。テレサ様は大丈夫ですか?」
「はい。ありがとうございました。おかげで倒すまではいきませんでしたが、無事に乗り越えられました。あ、桂輔さんにもお礼を言わないと……」
「ふふっ、とにかく無事でよかったですわ」
「でも、油断は禁物。もう少し見回ってみましょう」
「では、友達として……お手伝いさせていただいてもよろしいですか?」
「あ、はい!」