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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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第12章 After Story1

「屋外の被害者たちは全員救助したけど、その他の場所はどうだったかな?」
「こちらも完遂した、涼介」
 和輝たちの屋内チームも無事、治療を終えたと告げる。
「結和が説得してくれたが、グラッジは話せば分かる者たちだった」
 理性的な感情が欠落し、楽しみが幸せな者を苦しめることしかなかったのだ。
「グラキエス様。だいぶアークソウルの扱い方に慣れましたか?」
「まだなんとくな面があるが…。そうだな、俺たちが知っている種族以外の者かどうかは、だいたい分かってきたかもしれない」
「それは大きな能力を手に入れましたね」
「あとは守る力も強くしないとな…」
 探知の効率は上がったが、宝石を使って仲間を守る力も強めていきたいと言う。
「今回は上手く治療出来ましたが、どんな状況であっても行えるようにしていきたいですね」
「私たちのほうも問題はなかった。しかしいつも行動しやすい環境とは限らない」
 実戦に慣れるために任せれたことであって、過酷な環境へ赴いた時の場合を想定せねばならない。
「海のほうはどうだった?オメガさんが魔性に憑依されていたはずだけど…」
 町側を担当していた北都は、ずっとオメガを気にかけていた。
「私も気になっていたけど、こちらのほうには姿を見なかったな」
「ルカたちが浜辺のほうで救助したわ。発見した時は、とても危険な状態だったの」
「それで彼女は今、どうしてるのかな…?」
「えっと、歌ちゃんたちのお部屋で待機してもらってる。綾瀬に毒を取り除いてもらえたし、進行の影響は淵がちゃんと完治させたわ。ただ、憑依のことは気にしちゃうこといけないから話してないの。淵の携帯を預けてるから、電話かけるね」
 心配していた彼らにも彼女の無事を確認してもらうため、部屋で待っているオメガに電話をかける。
「…もしもーし、ルカよ。オメガさん、ちょっと別の人に電話代わるわね。…はい、話してあげて」
「……涼介だが覚えているかな?」
「はい、覚えてますわ。お料理が上手な方でしたね」
「どこか具合悪かったりしない…?」
「大丈夫ですわ。ですが海へ行った時の…途中の記憶がありません」
「元気そうだな、その声の調子なら大丈夫だ」
 憑依のことは伝えていない、ということなのでそれ以外のことには触れないでおいた。
「北都さんに代わるよ」
「―…もしもし、北都だよ。久しぶりだね、あれから何か変わったことはなかあった?」
「ありませんが…ただ、ミニたいふうたちと話すことくらいしかなくって、少し寂しかったですわ」
「それで遠出したの?」
「えぇ。それに皆さんのおかげで、せっかく外の世界へ出られるようになりましたし。思い切って出かけてみたんです」
「で……、外に出てみた感じはどうだったかな」
 声色の雰囲気からして、館に閉じ込められた時から初めて出かけたようだ。
「わたくしが知らないことがないがたくさんありましたわ。お料理も初めて食べるものばかりでした」
「楽しい外出だったんだね」
「はい。今まで出られなかった分、もっと世界のことを知りたいと思いましたの」
「…うん。たくさん楽しいこと見つけられるといいね。…えっと、他に誰か話したい人いない?」
「俺はあとで海へ誘ってみようと思う」
「分かった。…ルカルカさん、電話返すよ」
 北都はルカルカに携帯を返す。
「オメガさん、ルカよ。じゃあまた、あとでね」
 それだけ言うと通話を切った。
「魔性対策の結果報告へ話しを戻してよいかの?妾とグラルダ、レイカが説得に成功した。海へ近づく者にもう悪さはしないよ約束してくれたのじゃ」
「私たちのほうも説得出来たわ」
「あぁそういや、どこかで人と魔性が共存してるとか言ってたな。逆に、ビバーチェたちがエリシアたちに協力してるっていうのが珍しいみたいだ」
「共に暮らしていても助力はしていないということでしたな、ラルク」
「どっちも限られた者しか入れない場所らしいぜ」
 ニクシーから聞いたことをラルクが報告する。
「へぇ、そうなんだ。ねぇスーちゃんは知ってた?」
「話にはきいたことあるけど、くわしいことはわかんないよー」
 そこがどんな場所かスーも知らないようだ。
「簡単にまとめ報告をしてもらったけど、他に何もなければこれで解散としよう」
 実戦結果の情報交換を終え、涼介たちは集合用の宿から出た。



「タイチ、いる?」
 太壱が宿泊している部屋を訪れたセシリアがドアをノックする。
「ツェツェか。いるけど、どうした?」
「浜辺のほうで話があるんだけど」
「…え?」
「無理…?」
「いや、大丈夫だ。ここで待ってろ」
 いったい何の話なのだろうかと思いつつドアを開けた。
「俺でいいのかよ」
「いいに決まってるじゃないの。早く行くわよ」
 戸惑う彼の手を強引に引っ張る。
「あれ……。太壱君は居ないね、どうしたんだろ?」
 食事に出かけようと、章が洗面所で手を洗って戻ってきたらすでに太壱の姿はなかった。
「なんだか濃い味だな…。ん?バカ息子なら小娘と共に海へ向かったぞ」
 ルームサービスでケバフのようなものを齧っていた樹が、行き先を教える。
「ふうん、気でも利かせたか、口説きに行ったか…」
「ふむ…そういった策略が不得手な奴だからな…出来るか?」
「多分口説けないね」
 無理だと断言した章が確定的な結果を口にする。
 浜辺ではセシリアと太壱が話し込んでいる。
「先に祓魔術を初めてたみたいだけど、ちゃんと理解出来てるの?」
「あ…あぁ、なんとかな。ツェツェこそ宝石を扱いきてれんのかよ」
「タイチのお母さんに聞いたし、なんとなくね」
 適当な返事に“なんとなくかよ…”と太壱がぼそっと小さな声音で言った。
「ところで…。そっちはどう、お父さんとお母さんはうまくいきそう?」
「んあ?親父とお袋?…順調って所かな?そっちはどうなんだ?」
「こっちはパパーイがやっと落ち着いてきたところ…これからってとこかな?」
「…お前の親父さんじゃねぇよ、体調だよ…風邪とか大丈夫か?」
「何か寒いね、昼間と違って強い風だし…」
 町の外は砂漠地帯だけあって、だんだんと冷えてきた。
「あ、パパーイからメールだ」
 太壱にとってタイミング悪くアルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)から届いたメールを開く。

『カレーは無事食べられました。そちらは無事ですか?Alt』

 ……と、簡単な文面が送られてきたようだ。
「…素っ気ないなぁ、返事しよっ♪あ、ところでタイチ、何の話だっけ?」
「だから…」
「その先を言っても、失敗するほうに食事1回分を賭けるよ」
「私は失敗に2回分を賭ける」
「ってタイミング悪っ!」
 岩陰から覗いていた親の存在にようやく気がついた。
「つーかさ、両方失敗に賭けたら、賭けにならなくねぇか?」
「それもそうだな」
「ていうかどういして、どっちも失敗に賭けてんだよ!」
「失敗って何?タイチ、なんかやらかしたわけ?」
 セシリアには何のことやらさっぱり話が理解出来ていない。
「こっちのことだ小娘」
「えー、教えてくださいよ」
 その後結局、何度聞いても何の話だったか教えてもらえなかった。