天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

村と森と洞窟と

リアクション公開中!

村と森と洞窟と

リアクション


鍾乳洞の調査1

「気をつけて行くんだよ?」
 たいむちゃん雪だるまを『●式神の術』で式神とし、先行して様子見をさせた清泉 北都(いずみ・ほくと)はパートナーの方を見る。
「昶は何か気づくことない?」
「この先は大蜘蛛か何かがいるんじゃないか」
 狼の姿をして超感覚を使っている白銀 昶(しろがね・あきら)はそう返す。
「うわ……それは嫌だなぁ……」
 流石に大蜘蛛に遅れを取ることはないだろうが、だからといってあの姿が全く平気というわけではない。式神の報告にも同じことが伝えられ、北都はよしっという。
「こっちの方行こうか」
「そっちは奥へは遠回りっぽいが……まぁ、いいか」
 奥に行く事だけが今回の目的ではないし、モンスターとの戦いは避けられるなら避けたほうがいいだろうと昶も思う。
 そして数分ほどその道を二人は歩く。そうして開けた場所へとついた。
「うわぁ……綺麗だねぇ」
 北都の感嘆の声に昶も頷く。
「ああ、なんだか神秘的だな」
 北都の懐中電灯の光にその場所は鍾乳洞の透き通った白と水の暗い青を返す。光源が懐中電灯だけで乏しいが、もしもっと明るければ絶景なんではないだろうか。
「とりあえずこの場所は記録しとこうか」
 そう言って北都は銃型HCで記録を取る。
「後は、仲間に報告しとけばいいんじゃないか」
 昶の提案に北都は頷く。そうしてテレパシーを使って調査の仲間にこの場所の情報を送った。


「ルカはポスター貼らないとだから先行ってて? ルカ放置で進んでてね」
「あ、あぁ……」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の言葉にパートナーのギフト、コード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)は。緊張気味に返事をする。一緒に来ていたカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)も前村長と話すと言っていなくなっているので完全にパートナー内では一人になるのだ。
「他の調査してる人たちと協力して頑張ってねー」
 そうして二人は別れた。

「コード……一人前になれるといいなぁ」
 契約者としてどんどん成長しているコードのことをルカルカは頼もしく思っている。だからこそ、今回この調査で自分(たち)は手を貸さずコードがどれだけやれるかを、また成長してくれるかを期待していた。
「ま、とりあえずポスター貼ってこようっと」
 そう言ってルカルカは村に戻る。ちなみにポスターは
『この顔見たらシャンバラ教導団まで』という指名手配書だった。

「ルカはいつまでポスター貼る作業に手間取っているんだ……」
 順調に調査をしながらいつまでも自分に追いついてこないルカルカにコードは悪態をつく。すこしずつ隠しきれなくなってくる不安をセルフモニタで落ち着かせながらまた先に進む。
「他の調査している契約者と協力するようにってルカは言っていたな……」
 そうして落ち着いたところでコードはルカの言っていた言葉を思い出す。それと鍾乳洞に入る前に他の契約者とテレパシーで通信しあえるようにしていたことを思い出した。
「俺が持っている情報を言葉で伝えるだけでも助けになるよな」
 ルカの言っていた協力とはそういうことも含まれるだろうとコードは思う。
「……これでよし」
 テレパシーで気をつけるべきことなどを伝えたコードはまた調査を開始する。不思議とテレパシーで情報を伝えた後はその前と違いセルフモニタを使う必要がなくなり落ち着いていた。
「ん?……これは機晶石……いや、ただの珪石か」
 調査している途中、コードは珪石が固まって存在している所を見つける。
「石自体は綺麗だが、あまり景色としていいものではないな」
 そう感想を漏らしながらもコードは鍾乳洞で取れそうな資源として珪石を記入した。


「ほうほう、そこは凄く危ないんだね? ありがとう〜♪」
 土地神や自然霊といった土地勘のある“この世以外の者”から話を聞いたアニス・パラス(あにす・ぱらす)はそうお礼をする。
「――この反応は原生生物ですね。距離をとりつつ、彼らの生態データを収集して、今後の対策に活用するとしましょう」
 電子戦特化のギフトであるスフィア・ホーク(すふぃあ・ほーく)はその能力を使い、分かったことをパートナーに伝える。
 神秘と科学、二人のパートナーの能力のおかげで順調に鍾乳洞の調査は進んでいる等に思えたが、佐野 和輝(さの・かずき)は難しい顔をしていた。
「それで二人とも、前村長の依頼の方はどうだ?」
 今回、和輝たちは鍾乳洞の調査にきていた。それに嘘はないが、他の契約者と違い、前村長からの依頼を一つ内緒で受けていた。
「ごめん、和輝。そっちは分かんないよ」
 ここにいる“子達”が話してくれないとアニスは言う。
「現状調べている範囲で怪しいところはないです」
 二人の言葉に和輝は頷く。
「アニス、話してくれないということは何かあるのは確実なんだな?」
「うん。そうみたいだよ」
「なら奥に行ってみるしかないな」
 幸い、和輝は調査が始まる前にテレパシーで他の調査に参加する契約者と情報の共有を提案している。怪しい場所などの情報も入ってきているためそこを調べれば前村長の依頼を達成できるだろう。
「スフィア、この件に関してはアニスの能力は使えないようだ。アニスの分まで頼むぞ」
「了解です」
 和輝の言葉にスフィアはそう返事をする。が、それに対してアニスは少しむくれてしまった。
「アニス、表の仕事や危険回避はアニスの能力が頼みだ」
 そう言った和輝の本心からの言葉にアニスはすぐに機嫌をなおした。



「ふむ……やはり洞窟探検というのは心躍るものだな」
 鍾乳洞の調査に参加していた夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)はそう言う。
「気持ちは分からぬではないが、わらわはあまり洞窟には入りたくないのう」
 いつも通りな甚五郎にそう返すのは草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)だ。今回の調査でマッピングや撮影を担当していた。
「主よ、この奥には何もないようだ」
「うむ。スワファルご苦労だった」
 閉所の調査などを担当している蜘蛛型のギフトスワファル・ラーメ(すわふぁる・らーめ)に甚五郎はねぎらいの声をかける。
「しかし、この鍾乳洞は危険なところや綺麗な所の差が激しいのう」
 ここまでの調査における感想を羽純はそう表現する。
「うむ。綺麗な景色に心を奪われてうっかり滑れば死ぬような所もあったな」
 羽純の言葉に甚五郎はそう続けて同意する。
「モンスターは吸血コウモリや大蜘蛛くらいしかおらぬが、あまり友好的とはいえぬだろう」
 契約者であれば戦わずに逃げることなども比較的容易ではあるがとスワファルは言う。
「……で? ルルゥはさっきから何を黙っておるのじゃ?」
 さっきから黙っているパートナー、ルルゥ・メルクリウス(るるぅ・めるくりうす)に羽純はそう話しかける。
「何をじゃないよ! これを見て何も思わないの?」
 そう言ってルルゥの指差すものを三人は見る。
「石だな」
「石じゃな」
「石であろう」
 端的に三人はそう返す。
「それだけなの!?」
「ふむ……綺麗な石だな」
「綺麗な石じゃな」
「石であろう」
「……もういいもん。これ価値はルルゥだけ分かってれば……」
 鉱石に詳しいルルゥにしてみれば興奮するものであるが、三人してみれば綺麗なだけというのも仕方ないだろう。
「ふむ……ルルゥ、その石にはどんな価値があるんだ」
 そのルルゥの様子に興味を持った甚五郎はそう聞く。
「簡単に言うと水晶だよ。でもこれだけ透き通ってて大きい水晶は滅多に見られないんだ」
 そう言うとルルゥはまた水晶を眺める作業に伝染る。
「ふむ……水晶か」
「ん? どうしたのじゃ?」
 ルルゥの言葉を聞き少し考える様子を見せる甚五郎に羽純はそう聞く。
「いや、水晶と言われて昔のことを思い出していただけだ」
 そう言って少しだけ甚五郎は昔のことに思いを馳せた。