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なし

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蒼空学園へ

再来、呪いの○○○人形!

リアクション公開中!

再来、呪いの○○○人形!

リアクション

 一年で一番行事が詰め込まれている年末。
 そんな幸せムードの中で座り込んで話し込む三人がいた。
「つまり、あの呪いの人形を満足させることができればいいわけだな?」
 明らかにオッサン顔であるうえに喋り方までオッサンぽい、三代目蒼空学園校長の馬場 正子(ばんば・しょうこ)が尋ねる。
 それに対して考古学部兼トラブル持ち込み担当の部長が口を開く。
「そうです。彼もまた悲しい思い出を背負った社会の被害者なのです。ですからきっと雅羅さんとぶつかったのも、運命なのだと思います」
 それを聞いた当のトラブルメーカー、最後まで絶好カラミティの雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)が呆れ顔に喋る。
「こじつけにしか聞こえないけど、私がぶつかったのも悪いし。要は満足させればいいのよね。それで、いざとなったらこのお札を使うってことでしょ?」
 『☆退魔☆』と書かれたお札をポケットから取り出す雅羅。そのお札は正子も所持していた。
「そうですが、極力使わないで頂けると」
「わかってるわ。ただし、イタズラの度が過ぎるようなら容赦しないからね」
「……はい。それじゃ僕のほうでも何とか人形を捕まえてみますので、ジャック・オー・ランタン人形をお願いします! ……無事に終わったら、一緒にパーティーしましょうね!」
 そう言って駆け出していった部長。無事に終わったら、は無事に終わらない前触れと世間では言うのに。
「少し不吉な発言もあったけれど、さっさと行動して成仏させちゃわないとね」
「そうじゃな。急遽、他の契約者たちも駆けつけてくれたしな」
「おー! 俺様の嫁、雅羅ー!」
「……これは本当に協力者なの? それとも便乗犯?」
 いきなり現れて胸に飛び込もうとしたゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)を牽制しながら、正子に問いかける雅羅。
「協力者だ。おそらく」
「正子! お前の固そうなおっぱいも雅羅と同様に素晴らしいぜ!」
「あまり、胸のお話しばかりするのはどうかと思いますよ?」
 話を聞いていた山葉 加夜(やまは・かや)が口を挟む。その口調は優しげだ。
「だがしかし、おっぱいは女の魂だからな! 例え胸筋のようなおっぱいであろうとな! 熱くなっちまう俺様の気持ちもさっしてほしいぜぇ!」
 ゲブーが正子の胸を見つめる。それを見かねた加夜と雅羅が前に立ちはだかり視線を遮る。
「女性の胸をじろじろと見つめるのはよろしくないわ」
「そうですよ? 正子さんだって女性ですから、多少なりとも恥じらいがあるんです」
「ん? 生まれ持ったもの、恥ずるべきものなどないと思うが……」
「正子のおっぱいはガードが固い! なら俺は雅羅のおっぱいを選ぶぜ!」
「だ、だめだよ! 今はあの人形を追いかけてどうにかしないと!」
 ゲブーの行く手に割り込んだのは想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)だ。正論を言いつつもゲブーの行動に、少しだけうらやましいと思っていたり、するかもしれない。
「そうね。今は人形をどうにかしないと、(子供程度の)イタズラをされるかもしれないし」
「うむ。先行した者もいるようだし、それに続くとするか。皆、必ずあの人形たちを成仏させよう」
「はい、頑張りましょうね正子さん」
「雅羅のおっぱい!」
「だからだめだってば!」
「……先が思いやられるわね」
 いろいろあったものの、ようやく行動を開始した五人。先行した二人と協力するため、呪いの人形を追いかける。

「ターゲット確認。迅速に捕獲を開始するでありますよ」
「それはいいけど勝手に先行してよかったのかしら。全員で向ったほうが楽だと思うけれど」
「それでは各所に仕掛けたトラップが台無しになる可能性があるであります」
「トラップ?」
「百聞は一見にしかず、二人で協力しあの人形たちをあそこのAポイントへ追い込むであります!」
「Aポイントって言われてもわからないわよ」
 軽快なやりとりと足取りを同時にこなしながら、いち早く人形捕獲に乗り出していたのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)の二人。
 なにやら吹雪には策があるようだが、コルセアはそれを知らない。一体、どんな策を見せるのか。
「これは自分が幼い頃からやっていた遊びであります」
「吹雪が幼い頃から? ……ちなみにどんな遊びよ」
「相手を特定のポイントに誘導して『インビジブルトラップ』で始末する遊びを」
「それは普通の子供がやる遊びじゃないわよ!」
 チョップで吹雪に突っ込むコルセア。人形たちがAポイントに入る前にその辺にあった石を投げて『インビジブルトラップ』を不発させるコルセア。
「何するでありますか! あと一歩で一網打尽にできたと言うのに!」
「人形を始末してどうするのよ! あくまで捕獲よ! 捕獲!」
「? 生死は問われていないでありますが」
「そりゃそうだけど、ばっらばらになった人形を持っていったら怒られるわよっ」
「なるほど、生け捕りでありますな」
「できるなそうしてくれると有難い。だが、行動に間違いはなかった。素晴らしい作戦だったぞ」
「まあ、校長がそういうのなら……って正子校長!?」
 いつの間にか、先行していた二人に追いついた正子が吹雪の隣にいた。それに驚いたコルセアが叫ぶ。
「許可していただけるのでありますか」
「無論、と言いたいところだが他の生徒への危険もある。それに人形はなるべく無傷で捕らえてほしい。飾り付けに使うのでな」
「ふむ、了解であります。『インビジブルトラップ』を解除、人形を生け捕りにする方向で任務を再度開始するであります」
「助かる。おぬしも人形の無事を確保してくれたこと、感謝する」
「い、いえ。気づいたらツッコンでただけですよ、あはは……」
「やっと追いつきました。正子さん、途中で足を速めるから追いつけませんでした」
 三人に追いついた加夜が人形を目視する。姿こそ違えどふわふわと逃げる人形の姿に、思わず頬がほころぶ加夜。
「かわいらしいですね。それじゃ正子さん、左をお願いしますね」
「承知した」
 息の合ったやりとりをした後に左右に分かれて人形を挟む。楽しそうに逃げる人形に二人がいっきに捕獲に走る。が、
「むっ、存外すばしっこいものだな」
「あらあら、残念ですね」
 正子は片眉を上げ、加夜は楽しそうに笑いながら、人形の捕獲に失敗する。
 二人の追っ手から逃げ切った人形たちやその先頭にいる呪いの人形も楽しそうだ。
「ですが、今度こそ捕まえちゃいますからね」
 スキル『金色の風』を使用する加夜。本来は仲間を癒すスキルだが、今は子供心溢れる人形たちの心を掴んで離さない魔法に早変わり。
 風に乗った黄金の粒子が辺りに漂う光景に、子供が目を離すはずもなく。全ての人形が停止する。
 その止まった人形たちのいくつかを、正子、加夜、吹雪、コルセアの四人がいともたやすくキャッチした。
「はい、捕まえました。正子さんも優しく捕まえてあげてくださいね?」
「善処しよう。ふんっ!」
「あれで優しいの……? もしホンキだったら、ベアバックどころじゃ済まないわね」
「むむっ、意外ともふもふしてるでありますな。枕にでも使うでありますか」
 言葉は違えど四人とも優しく人形を抱きしめて(うち正子と吹雪の抱きしめ方はいささかぶっきらぼうだったが)、捕獲することに成功。
 それに気づいた人形たちが、やべぇ! といわんばかりに逃走を再開する。
「あら、気づかれてしまいました。でも逃がしませんよ」
 胸に人形を抱きしめながら、ずっと笑顔で人形を追い続ける加夜。
 そこに騒々しく駆け回る三人が乱入する。