天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

再来、呪いの○○○人形!

リアクション公開中!

再来、呪いの○○○人形!

リアクション

 人形騒動のことなど露知らず、鍋パーティーをする者たちがいる。
 そして仕事をさぼ、もとい仕事の休憩がてら日本伝統の遊戯に興じる者もいた。
「公務、ではあるけれど少しくらいならいいわよね?」
 誰に言い訳するでもない言葉を零して日本遊戯会場である教室の扉から顔を覗かせたのは水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)
 彼女の現在の出で立ちはびっとした国軍の制服である。はたから見れば学園内を見回っているかのようだ。
 しばし教室を歩き回っていると、百人一首をやっている場所を発見。
「うわぁ懐かしい。……ちょっと混ぜてくれないかしら?」
 相手が国軍の制服で決めていても蒼空学園の生徒には関係なく、その申し出を快く受け入れた。
 上の句まではみな笑っているのだが、下の句直前になると顔つきを変える。
 負ける気は一切ないようだ。だが、それはゆかりも一緒だった。
「あっ取られた……」
 最初のうちはついていくことができなかったが、ものの数分で慣れていくゆかり。
 その手元の札はみるみるうちに増えていった。同じくして、彼女の負けず嫌い度も増していく。
「……っていけないいけない。あなたたち、ありがとう。楽しかったわ」
 熱中していた自分を制し、百人一首から立ち去る。
「危ない危ない。本気になるところだったわ……ん?」
 次に見えてきたのは羽根つき。体を動かす日本遊戯に、当然の如く心振るわせられたゆかりはここにも参加。
 が、その傍らには墨をもってスタンバイしている蒼い髪の少女の姿があった。
「(なぜ、墨を?) ……ってしまったっ!?」
 ついつい少女に気を取られ、サービスエースを取られてしまう。羽根つきにサービスエースはないけれども。
 すると、蒼い髪の少女が立ち上がり墨たっぷりの筆をゆかりに向ける。
「な、なに?」
「どうも、初那 蠡(ういな・にな)と申します。以後、お見知りおきを」
「はあ」
「日本古来の遊び羽根つき。長い間愛され続ける素晴らしい遊戯。何故愛されるか、おわかりでしょうか」
 墨たっぷりの筆を片手ににじり寄ってくる蠡に押されるゆかり。
「えーっと……」
「それは罰ゲームがあるからです。ですから私はこの罰ゲームを各日本遊戯を取り入れ、全ての日本遊戯が更に愛されるようにしようと試みる決意しました」
「そ、そうなのね」
「でも羽根つきで罰ゲームをしなくなったら本末転倒なので、まず最初はここらかスタートしたわけです。それでは失礼して……」
「なに、かしら?」
「可愛い顔にして差し上げます!」
 そう言って俊敏な動きで、ゆかりの頬に×印を書き込む。
「ちょ、ちょっとっ! 私今日は公務なのにっ」
「ぐっじょぶです。さあ、次の試合を」
 そういって定位置に座ろうとする蠡。しかしそうは問屋が卸さない。
「……あなただけが墨塗り役だけなのはいかがなものかしら」
「……なるほど、確かに。私だけ安全なところから罰を執行する、ええ。不公平かもしれません。……いいでしょう。百戦錬磨をも黙らす私の技、受けてください!」
 立ち上がった蠡は既に羽子板を持っていた。どこから出したのかは謎である。
 一方のゆかりも先ほどの百人一首以上に気合を入れていた。のだが、頬には×印があるため、そのギャップが可愛らしい。
「いざ、尋常に……!」

「勝負よ!」
「勝負です!」

 数十分後。
「……お互いずいぶんと派手にやりましたね。というか後半はボロボロでした」
「私、公務なんだけど。これからどうしよう」
「どうせこのような顔なら外には出れませんし、どうでしょう? 一緒に遊びませんか?」
 蠡が笑顔でゆかりを遊びに誘う。
 正直、ゆかりの中ではこれ以上遊んでいてもいいものかという疑問もあった。
 けれど右手を差し伸べてくれる少女の笑顔を断ることなど、ゆかりにはできなかった。それに。
「まあ、来年もきっと公務だろうし、今のうちに正月を満喫してもいいわよね」
 そう言って蠡の手を握って次の日本遊戯へと向った。二人は、一足早い正月気分を味わい楽しむのだった。