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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 9

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 9

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第2章 1時間目:質問タイム

 授業開始を告げるベルが鳴り終わり、2人の教師は全員席に着いたか確認する。
「許可した魔道具とぉ、新しい魔道具の説明を始める前に〜。質問・疑問があればお答えしますぅ〜!!」
 エリザベートはチョークを手に大きな声で言う。
「ねーオヤブン。強化前の哀切の章って、何回使えるのかな」
「聞いてみるか。…エリザベート校長、質問していいか?」
「はいはぁ〜い」
「コレットがエリドゥの町から帰って来た時、一回り成長したみたいなんだ。哀切の章を使っても、あまり疲れなくなったと言ってたけど、続けて何回も使えるようになったのかな?」
 何回も続けて術を発動出来るのか、天城 一輝(あまぎ・いっき)が質問する。
「精神力が続く限り何度でも使えますが、術を1回発動させる度に詠唱が必要になりますぅ」
「もう1度発動するためには、また唱えなきゃいけないってとこかな?」
「そーですぅ。連続して使うには、魔道具の白の衝撃が必要になりますねぇ。1回分の精神力の消耗で2回まで続けて使えますがぁ、それ以上はまた詠唱する必要がありますよぉ〜」
「へぇー、そんなのがあるのか。何度も詠唱していっきに発動したりすることは無理らしいから、覚えておこうなコレット」
「うん!ちゃんとメモしたよ。新しいのも、授業中に見れるといいな」
 忘れないように小さな声で復唱しながらノートに書く。
「パームラズくん。たぶんこれのことだよ」
 緒方 章(おがた・あきら)コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)のほうへ振り返り見せる。
「アクセサリーみたいだね」
「魔性と人が共存する都で発見したんだ。身につけて使うものだと思うよ。詳しい使い方は、あとで説明してくれるかも」
「見せてくれてありがとう、これ返すね。(こんなのもあるんだね、なんか可愛い…)」
 いいなぁ…と思いつつコレットは魔道具を章に返す。
「はい、はいっ!」
「真宵。何を聞くつもりですか?」
 また授業に関係のないことを聞くのではと、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)は嘆息した。
「テスタメントは黙ってて!…バナナが突然不可思議な挙動を示したことと、ラスコット先生の秘密はもしかして関連性が!?おやつにバナナを食べるときにエターナルソウルを使えば何か見えますか。バナナの秘密はラスコット先生がバナナだからとかそう言うことですか?」
「(な…なななな何を言っているのですか、真宵っ!!)」
 彼女の質問にテスタメントだけでなく、驚いた周りも呆然とする。
「どういうことそれ?状況が分かんないし、オレと関連なんてないよ。バナナを食べるときにエターナルソウルを使っても、何が見えるような効力もないね。ていうかバナナの秘密って…?オレはババナじゃないし、オレがバナナって何?校長がおやつに入らないって言ってる理由が聞きたいのかな。長時間常温で置いておくと、変色しておやつに向かないからだよ」
「と…言ってますが、真宵。テスタメントもそんな現場見てませんし、何かあったのですか?」
「えー?ただ聞いてみたかっただけ。質問していい時間があるなら、なんか聞いておいたほうがいいじゃないの」
「もうちょっと考えてからにしてくださいっ。…って、聞いてませんね全然」
 テスタメントの小言なんか聞くものかという態度で、日堂 真宵(にちどう・まよい)は黒板を眺めている。
「えっと、他に質問とかある?」
「はい、使い魔の呼び出す手段について質問させてもらうよ。事前に魔方陣を紙に描いたものを、懐に忍ばせておいて利用することは可能なのだろうか?他人が描いた魔方陣を利用したり、1つの魔方陣を2人以上で同時に利用したりなんてことは可能かな?」
「術者が呼び出す使い魔のために、用意しておいた紙自体は問題なく使えるけどね。自分の主が描いたものじゃない場合、本人以外の血も陣に染みているから、現れても問題ないか悩んでしまうね。出てくるまでに時間がかかるよ。あと、種類が違う魔性の陣では、呼び出すための適正率が下がるから現れないね」
「(召喚する時間の短縮にはなりそうにないか)」
 魔方陣を描いた紙は、個人で固有のものとして扱うほうがよさそうだ。
「だから2人同時に同じ魔方陣で呼び出せても、現れてくれるまで時間をロスしてしまうよ」
「なるほど、ありがとう」
 頷きながらクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)はペンで丁寧に書き込んだ。
「私もよろしいでしょうか?」
「きみは使い魔を使役している子だね、それに関することかな」
「はい。今まで何度となくリトルフロイラインと駆魔を行ってきましたが…。召喚…つまり私の元へ呼び出してはいますが、彼女たちは召喚されていない間はどの様な状態で存在しているのでしょうか?彼女たちが生活している『世界』と言うものが存在するのでしょうか?」
「呼び出す基本状態と変わらない姿で存在しているようだよ。パラミタのどこかに住んでいることは分かってるけど、明確な場所は知られていないね。呼び出せる者と仲がよくても、そこかどこかは教えてくれない」
「静かな暮らしを望むため…なのですね」
「そうなるね」
「―…確かに、そっとしておくべき領域もありますわ」
 リトルフロイラインたちの生活について知りたかったが、彼女たちは平穏な暮らしを望んでいるため知らないままでもよいかと頷く。
「すみません…綾瀬様」
「いいえ、リトルフロイライン。言いたいことは分かっていますわ。人を好きでいてくれて、友好的に接してくれるだけでも嬉しいことですから」
「まぁ、平和が一番だものね。清き者しか呼び出せないっていうのも納得だわ」
 なんとなく理由を察した漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が言う。
「私も質問させてもらおうか。私たちの扱うアイデア術は、 アークソウルLvIエアロソウルLvI裁きの章Iの3つだが。これらを強化したものを使った場合、何かしら影響はあるのだろうか?効果が強化されるのか、それとも別物として扱われて術失敗になってしまうのか教えてもらえないだろうか」
「術に必要な効果があれば問題ないよ。ただ、成功した術の能力以上のことは出来ないね。たとえば、強化したエアロソウルの風の魔術を加えたりすることが出来ないってこと」
「ふむ。別の術式の扱いだからだろうか…」
 他の効力を引き出して扱うには、新たなアイデア術として考える必要があるようだ。
「アークソウルを強化した宝石はまだないけど、他の2種類を使って術を使っても発動するよ」
「発動に問題はないが強化後の効力は、術に含まれないということだな。…ということらしいが、理解出来たか?陣」
「んー…。オレらの術に、SP回復効果だとか使ってないしな」
「他の効力を使おうとする場合は、適応されないか不発だろう」
「ということは今まで通り使うだけなら、不発しゅぼーんってオチはなさそうやね」
「まったく…。小僧ごときが雨を行使すること自体が奇跡だがな。そのうち、洗礼の雨でも降るやもしれんな。それも、小僧を中心に小僧のみ集中的にな」
 “雨の日無能”と不名誉な称号を与えられた七枷 陣(ななかせ・じん)に対し、仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)は不吉な言葉を言う。
「ちょっおま!今、さらりとヒドイこと言んかった?」
「にゃははは、それ面白いかも」
「リーズ、マジ黙れ」
 イラッときた陣はカノジョのもみあげをぎゅむっと引っ張る。
「そこっ。騒ぐとチョーク投げますよぉお!?」
「先生、憑依について聞きたいのじゃが」
「あ、はぁ〜い、羽純さん♪」
「たとえば対象と魔性の間に異物を割り込ませたりすると、憑依対象が変わったりするんじゃろうか?それともあくまで魔性の意思で決定されるのかの?」
「興味などがあれば対象が変わるかもしかもしれませんが、魔性の意思で決定することになりますねぇ」
「ほう…、なるほどのぅ」
 対象を変えるためには、それを超えるモノが必要のようだ。



「えー、他に質問したい方いませんかぁ〜?」
「エリザベート殿。中級者と初級者の差に相手への苦痛の有無があるようだが、上級者になるとそれはより顕著になるのか」
「該当する章を使うことで可能ですねぇ」
「ランクをあげるだけでなく、章そのものの修練も必要というわけか」
 あまり使わない章と使用頻度の高い章とでは、苦痛を与えにくくする差があるのかと淵が理解する。
「樹ちゃんも質問しないの?」
「ふむ…そうだな」
 新たな宝石について質問するべく樹は手を挙げる。
「このエターナルソウルとやら、一体如何様にして使うものなのか?索敵の効果は…エターナルソウルで上昇させることは可能か?」
「エターナルソウルだけじゃ、そーゆうのは厳しいですねぇ。祓魔師として修練を積むことで、この宝石の力を引き出すことが出来ますがぁ。飛行や走るスピードを速くしたり、瀕死・臨死・死んでしまった者の時を戻せたりするんですよぉ〜。術者だけ精神力を消耗しますぅ」
「だとすると、何の策もなしに扱うものでないな」
「そーですねぇ。他の人とか宝石のフレアソウルに移動効果を付与出来ますが、他のスキルとかには適応しません〜。対象と同様に疲労感はありませんけどねぇ。効果を与える対象がたくさんいたり、加速しすぎると術者のみ精神力の消耗が激しくなっちゃいますぅ。宝石の扱いに慣れてくれば軽減されますよぉ」
 疲労感はないが使用する際の精神力の消耗について告げる。
「使用中にバーストダッシュなどを使うと、宝石の効力が解除されちゃうので気をつけてくださぁい。あ、ヴァルキリーとかが本体持っている翼とかで、飛行するのはおっけーですよぉ♪」
「そういうスキルなどと重ねがけは出来ないということか、覚えておこう。む、種族が元々もっているぶんの飛行能力はよいのか…」
「えっとこれは身体にかかるGの負担はありませんけど、一時的に速くなるだけなんですぅ」
「じゃーボクのトライウィングス・Riesとか、使わない状態で飛べば加速してもらえるんだ?しかも疲れないのかー…。陣くん、頑張って♪」
 リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)はカレシに満面の笑みを向ける。
「どんだけオレを疲労させる気や?」
「使いすぎなきゃいーだけじゃん。それに、強化前のエアロソウルで回復する手もあるし」
「いや、それでも続かんと思う。っておい!ムシすんなっ」
 “えー、ボク知らない♪”とそっぽを向かれる。
「ごほんっ、説明を続けますねぇ。…これはスキルを習得しなくても使える宝石なんですぅ。修練を積むとぉ、生命の危機に瀕してる人や死んでしまった人の時を戻すことが出来ちゃいますがぁ。上級者になったばかりの人の場合はぁ〜、1時間以内くらいの間なら復活させやすいですぅ〜」
 カレカノの騒ぎ声に咳払いをし、エリザベートは藍色の宝石について説明する。
「誰かが呪いや腐敗毒などにより、死んでしまったりしたとしますねぇ。その原因の元が、エターナルソウルで戻した時の前のことまでは変えられません〜。なのでぇ、対象を救えたとしても呪いなどの治療が必要になることもありますぅ〜」
「時を戻したとしても、死の原因となるものを完全に取り除く効力まではないのだな」
 エターナルソウルで戻せた時の前に起きたことまでは、この宝石だけで救いきれるわけではないのだ。
「その辺りは術者たちが協力して、助ける必要があるんですぅ」
「少数では対抗が難しいという点を考えれば、そうだろうな」
「ぽんぽん生き返させること事態、本当は難しいことだものね」
 説明を聞きつつセシリアもこくこくと頷く。
「あの……。それは、ネクロマンサーでも問題ありませんか…?」
「ん?えぇ、必要スキルはないって言ってたから、問題ないと思うわ」
 遠慮がちな小さな声音が後ろから聞こえ、セシリアが振り返る。
「タイチのお母さん、ちょっとそれ貸してもらってもいいですか?」
「構わないが、所有者以外は使えないものだぞ」
「分かってますって。…はい、これが時を操る宝石よ」
「―…私の場合、アークソウルのみでしたから。他の宝石が扱えるようになるなんて、嬉しいですね。…えっとお返しします」
 セシリアに時の宝石を見せてもらい、これなら私も使えそうだとレイカ・スオウ(れいか・すおう)は小さく笑を浮かべた。
「はい、タイチのお母さんありがとうございました。なんだかたくさん種類がありますね」
 エターナルソウルを返すと、首から下げているペンダントに目を向け、最初はこれを使いこなさなきゃなぁ…と眺める。



「ゆーわ、んーぅうー?(ゆーわ、アークソウルってどう使うの?)」
「ロラ。宝石はこうして……ペンダントに入れて使うんです…」
 高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は銀色の蓋のようなものをつまみ、エレメンタルケイジの扱い方を教える。
「詠唱すると使えますがー、えっと…気持ちを落ち着かせて、心を込めて祈るといいです」
「んー?んんー、むぅー。(あわあわした感じとかはいけないってこと?ふむふむ、上手く言えなくてもいいんだね)」
「闇の魔法から、仲間を守りたい時はですね…。自分を中心に、バリアーを広げていくような…。そういう、イメージが大事みたいです」
「うー、んむぅー。んー、むぅーうぅー?(へー、そうなんだ。ねー、エターナルソウルを使ったら、魔道具も素早く作ったり出来るのかな?)」
「エターナルソウルで、ですか?えー…そ、それは無理かとー…。飛行や走る速度を上げる効果はあると、説明は聞こえましたが…」
 かぶりを振り、手などの動作まではすばやくならないと告げる。
「んんーうー。ゆーわ、うぅむぅー?(分かったー。ゆーわ、次の授業出るの?)」
「え、はい。…そのつもりですが」
「うーむぅーむぅー。(じゃー試すのは諦めとく)」
 ロラ・ピソン・ルレアル(ろら・ぴそんるれある)は使い方の説明は聞けたから結和のために我慢する。



「すでに授業中だけど、これ…渡してもいいかな」
 合宿の実戦をデジタルビデカメラで撮影していた樹月 刀真(きづき・とうま)は、シャンバラ電機のノートパソコンで編集をしていた。
「もしかして、女子の部屋が映っていたりしない?」
「あー、急いで編集したし覚えてないな月夜」
「覚えてないってことは、そうなのね」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はヘンタイを見るような眼差しを向ける。
「まて、別に変な所撮影してないから!この前から俺の扱い微妙なんだから余計な事言うな!」
「怪しい…」
「ほ、本当にやめてくれ。皆に聞こえちゃうからっ」
 このままでは家政夫どころか、ェロ魔人に格下げされそうだ。
「あまり刀真をからかうんじゃない、月夜。可哀想だろう」
「大丈夫、玉ちゃん。変なの映ってたら、パソを叩き斬るかわりにお仕置きするわ」
 せっかく撮ったデータを壊すのはもったいない。
 でも、女子が怒るものが映っていたら、撮影者はきっちり仕置きすると告げる。
「そんなの絶対映ってない、映ってないってば!」
「うん、家に帰ったら確認するね」
 嵐の前の穏やかな日向を思わせる可愛らしい笑顔を見せる。
「エリザベート校長。質問というか、実戦の映像を見てもらえないか?気になるところがあれば、アドバイスをもらいたい」
「―…時間の関係で全部は難しいので、ちょっとだけならいいですよぉ〜」
「ありがとう。(…変なのが映っていませんように)」
 パートナーの顔が恐ろしく変貌しないことを祈りつつ、エリザベートの元へ行く。
 編集したデータを渡すと、校長はさっそくパソコンで確認を始める。
「えぇっと、刀真さん。ニクシーのブリザードを相殺した後のことを、もうちょっと考えておくといいですねぇ。気化の影響で一瞬とはいえ、何も見えなくなっちゃうわけですしぃ〜…」
 彼が隙をつかれ呪いにかけられてしまったことを指摘する。
「その間、パートナーの方がフォローするもの大事ですよぉ〜?」
「(相殺するにしても、相性を考えなきゃいけないのか)」
 刀真は忘れないうちに小さなメモ帳にメモした。