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リアクション
第3章 1時間目:魔道具の説明タイム
他にも質問したい者がいないか、エリザベートたちは生徒たちの顔を順番に見る。
誰も手を挙げていないことを確認した校長は、魔道具の説明を始める。
「ではぁ、新しい魔道具の使い方を説明しますねぇ。時の宝石については説明したので、強化したエアロソウルついても説明しますぅ!」
エリザベートは黄緑色の宝石に小型カメラのレンズを向け、大きなモニターに映す。
「祓魔の護符を使い慣れることで、ちょっとの精神力で枚数を増やせちゃいますよぉ。増やした護符も術者にしか使えませんが、任意で半透明することが出来ますぅ。これにより護符が、相手に見つかりにくくなることがありますよぉ〜」
「トラップのように仕掛けやすくなのね」
起爆的に使えそうだとセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は色ペンで書きまとめる。
「コンジュラーじゃなくてもフラワシも見れるようになったり、任意で風の魔術を使えますがぁ〜。SPを回復する効果はなくなっちゃいますぅ」
「強化時になくなった効果も覚えておく必要があるわね。ねー、セレアナならもう使えるんじゃない?」
「スキルは覚えてるけど、まだ透過したりは出来ないわよ」
「複数護符を使えたり、透過して使うのって自分が持っているだけだっけ?」
「何言ってるの、当たり前でしょ」
熱心に学びながらも、やや聞き逃している恋人にため息をつく。
「宝石の中級ランク者は、生物や非生命体の物質に憑いた者を見ることが出来るようになるんですよぉ〜♪風の魔術も任意で使えますけど、SPを回復する効果はありません〜」
「うーん、強化の関係かしら?」
もしもこれの能力を上げたら、何の効果がなくなるのか…と白い宝石を見つめる。
「セレアナのホーリーソウルを強化したとしたら、光輝魔法の攻撃能力がなくなるってことよ。SPの回復効果と呪いを解除する力が増えるわけだし」
「効果をたくさん詰めるのは難しいのね」
「それでも普通のアイテムより、能力がたくさんあるじゃない?」
「って、よく覚えてたわね」
熱心に学んでいても、どこか記憶が曖昧そうだと思っていたが恋人の成長に驚く。
「私だっていつもうっかりじゃいられないもの。教導団と同様に、ぬるい訓練じゃないでしょ」
「まぁ、確かに…。人命が関わることもあったわね」
「そうそう!セレアナもしっかり覚えなきゃね」
「(ふぅ…。またうっかりなことないといいけど)」
えっへん♪と自慢げに言うセレンフィリティの成長を喜びながらも、どこかでミスらないように私が見てなきゃね…と心の中で呟いた。
「強化した宝石については以上ですぅ〜。では、エレメンタルリングについて説明しますねぇ♪器にされた人や物を傷つけずに、憑依した者にだけリング1つにつき連続で2回まで魔法ダメージを与えられますぅ。リングをはめたほうじゃない手や両手でも効果はありますけどぉ、これは使用者の拳にのみ適応されますぅ。片手に別の何かを装備してることもありますよねぇ?その時はリングを身につけてるほうの拳がよいですぅ〜」
「例えばエレメンタルケイジを使っているほうの手で使おうとすると、アークソウルの探知が中断されたりするんだよ」
「これを使う時は状況を見て判断するといいですぅ〜」
「そっか、臨機応変にやる必要があるのね」
セシリアはリングを指でつまみ茶色の双眸に映す。
「ダメージを与えることは出来てもエレメンタルリングの能力だけで、憑依した者をひっぱりだしたりすることは出来ません〜。あとぉ、憑依してない状態の相手に対しては効果が弱ってしまいますぅ。一応、ダメージの加減は出来ますからぁ、私が使ってみますねぇ♪」
生徒たちにお手本を見せようとエリザベートは、教壇の傍に待機している魔性に使ってみせる。
シュッシュッ!
不可視の魔性を殴ると片手に纏わせた赤い光が、2撃目には白い光へと変わった。
「エレメンタルケイジに入れられる宝石の魔力の属性を、リングの攻撃に適応することが可能ですよぉ。それを使わない場合は、このような感じでぽこぽこお仕置き出来ますぅ」
「適応される宝石は光・大地・炎・風の魔力を宿す宝石のみだよ」
「ふむふむ。2回連続、光輝属性だけってこともありなのね」
「アンタ、よく真面目に聞いてられるわね?」
熱中しているセシリアにはヴェルディーの言葉はすでに耳に入らなかった。
「護符のように投げて使うものではないのか」
「指にはめて使う魔道具みたいだね、樹ちゃん。いざという時にいいかも」
「だとすると、接近戦用ということか。補助を与える宝石使いが倒されるわけにはいかないからな」
スペルブックのように祓う力はなさそうだが、護身用としては使えそうだ。
「私が身につけてる白の衝撃について、もう1度説明しますねぇ♪使うためには光術を覚えている必要がありますねぇ。サークレット・アンクレット・イヤリングタイプの3種類がありまして〜、どのタイプを選んでも効力差はないですよぉ〜。今まで通常スキルに影響のないもののみですがぁ、これは通常スキルの光輝属性の魔法攻撃スキル、回復魔法スキルを使えれば、1回のSPの消耗で2回同じ魔法を連続して使えちゃうんですよぉ」
「対象の変更は可能だけど、物理攻撃などを含むスキルは適応されないよ」
「使ったとしても通常通りの発動のみってことですねぇ〜」
スキルの不発はないが1回の発動だけで、2回連続発動することは出来ないと告げる。
「アークメイジ以上のランクの人が使うと、ハイリヒ・バイベルに記した章を1回詠唱すると〜。2回目は精神力の消耗がなく詠唱しないで、連続で使えちゃいますぅ。でも3回目からはもう1度唱える必要があるんですぅ〜。あ、こちらも対象の変更は可能ですからねぇ♪」
「つまり私や玉ちゃんが中級になれば、そういうこともおっけーなのね」
「ほう…面倒が減るということか」
「玉ちゃん、3回目は唱えなおさなきゃいけないよ?」
「む、それはまた…。…月夜、そんな顔で見るな」
悲しそうな月夜の顔に玉藻 前(たまもの・まえ)は“面倒だな”と言いかけた言葉を飲み込む。
「裁きの章は対象が1体だったから、対象の変更が可能とはよいわね」
グラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)はエリザベートが身につけているサークレットを見る。
「光術が使えなければ、使い物にならないようですが。…似合わないですね」
誰が…とは言わずとも、その言葉は明らかにグラルダを示している。
「似合わない?それが何だというの。どのクラスになろうとも、問題なく扱えるものよ」
「はい、理解しています。あえて、申し上げたことです。しかし、それが貴方に扱いきれる代物かどうか…」
「だから何?アタシの能力なら、もうすぐ扱えるようになる。アタシのことよりも、アンタは自分の力を成長させなさい」
皮肉交じりに言うシィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)の言葉に苛立つ様子を見せず、いつもの態度で言い放つ。
「…はい。(まさかこんなにも、貴方に言われるようになるとは…)」
魔術のまの時も知らない幼かったパートナーが、このことに関しては今や彼女のほうが上なのだと理解している。
彼女に近づくのは容易ではないというも現実のこととして理解する。
「アーチビショップ以上のランクの人は、精神力を使い続けることで霊や魔性などによる憑依から身を守れますぅ〜。これは術者のみが対象となりますが、他の効力もあって完全に憑依される前なら霊や魔性などを引きずりだせちゃいますぅ。この効果は他者にも使えますよぉ〜。で・す・が!どのパターンも、発動能力をためて使ったり出来ませんからねぇ!」
「やっぱり、宝石使いの人と一緒に行動することも大事なのね」
「確かに。刀真は呪いにかかってしまったりしたからな」
「そ、それはっ」
「ねぇ。片手が空いてるんだったら何か使ったら?」
月夜は刀真の荷物を奪ってチェックする。
「いや、ほら。デジタルビデオカメラ持ってたりするし」
「おでこにつければいいと思う。ガムテープとかでくっつけられるよ」
「それだと俺、変な人にしか見られないんだけど。え、っていうかガムテとかイヤだし」
変人プラスかっこわるいから無理!と全力で拒否する。
「我らをもっと補助しろ。扱うために必要なスキルが光術ならば、クラスを変えても問題なかろう」
しっぽでばすばす刀真をぶっ叩く。
「い、痛い玉藻!場合によっちゃ、そのために両手を空けなきゃいけなくなるじゃないか」
白の剣を抱きしめてぶんぶんとかぶりを振る。
「ねぇねぇ玉ちゃん、アクセサリーみたいな魔道具どう思う?」
「ふむ…?そういえば3タイプあると言っていたな」
「イヤリングとか可愛いよね。…ね、刀真?」
「え、その顔…何?」
欲しいな♪と言いたげに目を輝かせ、お強請り視線を向けられる。
「どうしようかな。でもさ、2人が中級になってからとかのほうがいいんじゃ?うーん…」
パートナーのためとはいえ、どうしようか悩んでいると月夜が瞳を潤ませる。
「あ…はい、ごめんなさい」
月夜を泣かすな!と玉藻に睨まれ、強制的になぜか謝ってしまった。
「説明したことを黒板に書いておいたんで、メモしておいてくださいねぇ。それでぇ、強化した章については2枚目の黒板に書きますぅ〜」
脚立に上ったエリザベートは金属の棒を上の黒板にひっかけて下ろし、下の黒板と位置を入れ替える。
「強化した章は強化前の章を、スペルブックに記した状態でもどちらも使えますよぉ〜」
宝石とペンダントをふわふわしたポーチに入れると、裁きの章のページを開いてモニターに映す。
「メイジの下級ランク以上の人は、効果対象を酸の雨で溶かさないか任意で決められますぅ。メイジアークメイジの中級ランクになればぁ、威力を下げずに痛みを与えにくくなりますぅ!機械に憑く魔性以外にも同様の効果を与えることがありますねぇ〜。キャスターの上級ランク以上の者になると、裁きの章を対象に命中させたらぁ、一定時間だけ相手の補助術や魔法を封じたりすることもありますよぉ」
「玉ちゃんが持っている章を強化出来るね!」
玉藻が持っているハイリヒ・バイベルを開き、うきうきした顔を見せる。
「ふむ、降らせる対象は増えず1体までなのだろうか」
「うん。説明してないからそうかも。私たちも章の能力をいっぱい引き出せるようになりたいね。哀切の章も強くなってるといいな」
私が使ってる章も何か効力が増えたのかな?と期待し、月夜は黒板に視線を戻す。
「哀切の章についても説明しておきますねぇ」
エリザベートは本を捲り、哀切の章のページを開く。
「アークメイジ以上のランクに上がると、裁きの章と同じく威力を下げずに痛みを与えにくくなりますよぉ〜。下級以下の人でも対象を1回の詠唱で祓いきれなかったらぁ一定時間、ちょっとずつSPと体力をちょ〜っとずつ減らし続けることがありますぅ。その効果を受けた相手は一定時間、SPの回復行動を行えなくなりますぅ」
「ん〜?少しだけなのね」
「あまり減りすぎたら相手に気づかれるからだろう?」
不思議そうに首を捻る月夜に玉藻が言う。
「え?私的にはね、いきなり追い詰めない優しさも必要だと思うの」
「(なんか優しく減退させていくっていうか。うん、まぁ…そういうものなんだろうな)」
刀真は何やら言いたげに月夜をちらりと見るが、あえて言わないでおいた。
「強化前の章の修練を積んでいる方々がたくさんいると思いますがぁ〜。身に付いた能力は、強化したほうでも問題なく適応されますぅ〜。強化後に同じ効力があれば、そのまま使えちゃうんですよぉ」
「コレットの哀切の章を強化すると、そういう能力が増えるのか」
「なくなっちゃった効果はないみたいだね、オヤブン」
「精神力を消耗しにくくなった能力とかも適応されるようだな」
「うん、術の属性が変わったりしたわけじゃないもんね!」
自分の力が継続して使えることに、コレットはにんまりと笑みを浮かべる。
「最後に新しく呼べるようになった使い魔、ニクシーについて説明しますねぇ。人に協力してる魔性を見て、人と関わってみたくなったようなんですぅ〜」
ニクシーはエリドゥの海辺でビバーチェやルルディたちを見て、人に関わることに興味を持ったようだ。
「呼び出しに応じる者は、すでに不の力を封印しているのですぅ!また呪術を使えるようになることはありません〜。これは中級ランク以上の人が能力を引き出せるんですどぉ。呼び出した術者の人はぁ〜、精神力を消耗することでニクシー本人に似た水人形を作りだして、それを破壊した相手のSPを術者の精神力として吸収することがありますぅ。もしそれを失敗しちゃったら、相手のSPにダメージを与えることがありますねぇ。扱い慣れると水人形を作り出す時の、精神の消耗負担が軽減されますぅ。でも、防御能力などはないですよぉ」
「水人形自体に会話能力はないね。術者とその指示に従って、仲間を守る以外の細かい行動も難しいかな。ニクシー本人が生み出す水は、飲み水にもなるよ」
「でもでもぉ〜使い魔を使い始めた人が、引き出せる能力もあったりしちゃうんですぅ♪」
「ニクシーは呼び出した相手の指示で使役する者とその仲間を、氷結属性と炎熱属性の攻撃から水のバリアーで守ってくれるんだ。水のバリアーの中にいると水中でも呼吸や会話も可能で、空中でも呼吸が楽になるよ」
「ほう、補助をしてもらえれば水中や空中戦でも動きやすくなりそうだ。エターナルソウルで移動速度を上げられるわけだしな」
2人の教師の説明をきき、樹は頭の中で戦略を考えてみる。
「協力し合うことでいろんな戦い方が出来るってことだね、樹ちゃん」
「私も使い魔を呼び出せるようになれば、補助の役割をもっとこなせるようになるな」
「樹ちゃんはアークソウルをずっと使ってきたわけだから、ブリーダーからスタートだね」
「ふむ。状況を見て戦法を変えるとしよう」
それぞれの現場に合わせて変更して行使すると告げる。
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