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ニルミナスの拠点作り

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ニルミナスの拠点作り

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拠点作りその1

「――というわけで、小〜中型のイコン向けのちょっとした整備場があれば、建設やインフラ整備もスムーズにいくとんじゃないかな」
 拠点作り案の話し合い中。そう発言したネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)にミナホは感心したように頷く。
「やっぱり契約者の方の意見は参考になりますね」
 ニルヴァーナの開拓などで、こういった経験のある契約者は多い。ネージュもまた、イナテミスや獣人村、アイールなど、契約者が開拓や開発を手掛けた場所を多く見てきていた。自身が手がけた施設もありネージュの意見はミナホにとってためになるものばかりだった。
「と言っても、浄水設備や発電設備があるのが前提になっちゃうんだけど……そのあたりってどうなってるのかな?」
「一応あることにはありますが……小さな村ですから」
 浄水設備も発電設備もあるが全体で300人程度しかいない村だ。発電設備は村全体をまかなえるといっても大した発電量はないし、浄水設備に至っては街道の先の街の業社に定期的に面倒を見てもらってるのが現状だった。
「んー……それじゃ、今すぐってのは無理そうだね。でも村が大きくなるならインフラ整備は最優先で考えたほうがいいと思うよ」
 ネージュの言葉にミナホは頷く。
「さてと、次は俺たちの案だけど、雑貨屋を作ったらどうだろうか」
 ネージュの次に案を上げてきたのはエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だ。
「ホームセンターで売っているアウトドアグッズが手に入る店が宿の中にあれば森で役に立つと思うよ」
 そしてできれば24時間対応、無理なら7−23時営業であることが好ましいこと。店員には村の住人を雇用すればいいことを提案していく。
「非常持ち出し袋に入っているような品で消耗品けいになりそうなものはお店におきたいわよね。大工系の消耗品とか。それと宿に小さな庭も造りたいからその手入れの道具とかも」
 エースの提案に付け足すようにパートナーであるリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)は言う。
「出資と経営は最終的に俺が面倒を見ようと思っているんだが……大丈夫かな?」
「……そうですね。雑貨屋はあると便利だとは私も思いますし、出資や経営をしてもらえるなら助かります」
 エースの申し出をミナホは考えてからそう言う。
「正式名称はラグランツ商店で……どうかな? 任せてもらえるかな」
「分かりました。お願いします」
 もう一度考えてからミナホはそう返事をする。これから村に施設はたくさん出来ていくだろうとミナホは思う。しかしその施設を村人だけで管理するのは難しい。主要な施設の一部は信頼出来る契約者に任せることが多々あるだろうと。
「それじゃ決まったことだしお店にはマスコットが必要よね」
 そう言ってリリアは一匹のキャットシーを前に出す。茶トラのまふまふな毛皮をしており、角の色は淡い黄色系琥珀色している。
「名前はチャトラン。看板猫になってもらおうと思うわ」
 リリアに抱かれながらあくびをする様子は愛らしく癒しになりそうな様子はある。
「あと、そうそう。店で扱う品について何か意見はないかしら」
 そうリリアは場にいる契約者や村人たちに聞く。
「購買程度の品揃えがあれば便利だと思いますよ」
 そう言うのは非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)だ。学園基準の購買品が売っていれば補充等に困ることはないだろうと近遠は言う。
「それじゃ、学園の購買に売ってるものを参考に品を揃えていくわね」
 リリアはそう返す。
「他に意見はないでしょうか?」
 意見が一段落した所でミナホはその場にいる人達に聞く。
「全体的な構図のことでいいですか?」
 そう言うのは近遠だ。
「一階は雑貨屋などまとめて二階以降を宿泊施設としてりようするのはどうでしょう」
 それがスタンダードな形であると近遠は言う。
「それと各部屋は防水や排水周りをしっかりした上で簡易入浴ができるようにはしたほうがいいと思いますよ」
 長期滞在を想定しているならと近遠は言う。
「お食事は、基本的には食事処で、交流や情報交換も兼ねて、滞在中の契約者の人達が隔たり無く話しながら食べれる様なオープンな所が良いと思いますわ」
 一階の施設としてそういうのはどうだろうとユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)は言う。
「でも、お弁当を作ったり、自炊も出来るように宿泊施設側にも、簡易なキッチンがあると良いですわね」
「一階にお食事処を作るのは問題ないですね。キッチンは流石に一部屋ずつは難しそうですが宿泊施設のある階層に一つずつつくるというのは問題無さそうです」
 ユーリカの案にミナホはそう返す。
「宿泊施設は3階からにして、2階に男女別に大浴場などは、如何でございましょう? お食事中の交流も良いとは思いますけれど、他にも滞在者同士の交流の場があれば、より一致団結できる機会が、できると思うのでございます。」
 次に提案をしてきたのはアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)だ。
「それと入口に武器などを預けて行く所があれば良い、と思うのでございます」
「武器を預ける……ですか? それは少し難しそうではないでしょうか」
 武器を持つ身ではないミナホだが、そういったことに抵抗のある人は多いんじゃないかと思う。
「それなら、武器を預けた先で手入れをしてもらうようにすればどうであろう?」
 アルティアの案にそう改善策を出すのはイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)だ。
「もちろん、自分でも手入れをできるようにしていたり、部屋に持ち込むのは許可制にすればよいのではないだろうか」
「それなら……大丈夫そうですね」
 武器の預入も整備が目的であるならある程度スムーズに行われるだろう。許可制をガチガチにしなければ現実的な案だ。
「それとだが、契約者の拠点であるなら食事所の一角……壁一面あたりを、依頼や問題を貼る掲示板にするのが良いと思うのだよ」
 そうすれば拠点にして動きやすいだろうとイグナは言う。
「確かにそれはあってしかるべきですね」
 そうミナホは頷く。

 そういった形で拠点作りの話し合いは続けられた。


「ただいまっと……やっぱ拠点作りの話し合い終わってるのか」
 集会所にやってきた瑛菜は少しだけ気まずそうに言う。
「瑛菜さん。どうしたんですか? 予定よりかなり遅れてますけど」
「うーん……なんかマッピングが出来てない所に迷い込んじゃったみたいでさ」
 それで遅れたと瑛菜は言う。
「? あの洞窟のマッピングは全て終わっているという話ですが……って、瑛菜さん、怪我をしているじゃないですか」
 見ると瑛菜の頬が少し切れていた。
「これくらいなんともないよ」
 実際血は止まっているし後に残るようなものでもない。契約者として冒険をしていれば怪我のうちに入らないだろう。
「それより設計図できたんだろ? 見せてくれよ」
 そう言って瑛菜はミナホから設計図を受け取る。
「……って、あれ? ここだけ何も描いてないな」
 ほぼ埋まっている設計図の中、一階の一角だけ何も埋まっていないところがあった。
「そこだけまだ決まってないんです。早い段階で決まるといいんですが……」
「うーん……だったら前村長にでも相談したらどうだ」
「そうですね。聞いてみます」
 そうして拠点となる宿作りの準備が整った。