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ニルミナスの拠点作り

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ニルミナスの拠点作り

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村の目指すもの

「えっと……まず私の考えなんですが――」
 集会所。村の方向性を決める話し合い。そこでミナホは瑛菜とアテナに話したように自分の考えを伝える。ちなみにこの場に瑛菜とアテナの姿はない。『言いたいことはもう言ったから』と拠点作りの方の下準備で動いていた。
「うん。ミナホの考えいいと思うよ」
 と、まっさきにミナホの意見に賛同を示したのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。
「観光を収入源に、リゾート的な癒しとと一寸の冒険を求める人達が何度も訪れる村にしたいかな」
 それにと続けてルカルカは言う。
「助っ人連れて来たわ。私の相棒の、ダリルよ」
「ダリルだ。今日は技術担当として来村した。主に技術面資金面での助言を行おう」
 ルカルカの紹介にダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はそう挨拶する。
「それでこれが今までの探索で出来た地図よ。書き込んだり詳細の表示も出来るようにしてきたわ」
 壁に模造紙を貼り、画像を投射する。投影図には村と洞窟、道、植物や魔物の範囲等が記されていた。
「作ったのは俺だがな」
 そう苦笑してダリルが言う。
「村の方針が決まればこの投影機が役に立つだろう。村の発展に役立ててくれ」
 そう言ってダリルはルカルカの後ろに下がる。
「それで私の案なんだけど――」
 ダリルが下がった所でルカルカは前に出る。その上で村の具体的な方針案を提案していった。

「愛と正義の戦士・ゴボウジャスティス見参!!」
 ルカルカの演説のような提案が続く中、ばーんと集会所の扉をあけて入ってくる。存在がいた。その謎の存在は話し合いの場にいる人達にゴボウ茶とフライドゴボウを配理始める。
「…………………………何やってるんですかレオーナさん」
 その謎の存在(どうみてもレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす))に激しい頭痛を覚えながらミナホは話しかける。
「え? レオーナさん何やってんですかって? いいえ私はニルミナスを(勝手に)代表するゆるキャラ、ゴボウジャスティスよ。可愛く可憐で美しくたおやかでしなやかで(中略)荘厳でほぼ言語道断な美しさのレオーナなんかじゃ無いわ」
「何日一緒に寝食を共にしたんですか。今更レオーナさんの声を間違えたりしません」
 謎の存在あらためゴボウジャスティスにそうミナホは突っ込みを入れる。宿がないとミナホと一緒にレオーナが集会所にお世話になったのは一度や二度じゃない。
「そんなことよりゴボウジャスティスは伝えたいことがあるの」
とゴボウ(以下略)はそう置いて言う。
「ゴボウジャスティスは、皆を愛してる。だから、ミナホちゃんを中心に皆が繋がっていく村興しが理想なの。皆とは、村の若い住人であり、前村長さんたち古い住人であり、契約者であり、ゴブリンやコボルトたち森の住人であるわ。だから……村のゆるキャラな空気、いや、ゆるやかな空気を気に入った人が居着くような、ゆるやかな村興しが良いんじゃないかしらね」
 ふぅと息をつきレオーナは言う。
「あとはゴボウレインボーに交替するわ」
 そう言ってレオーナは下がる。が、交代するといったのに誰かが出てくる様子はない。
「何してるのクレア? さぁ! かっこよく登場するのよ!」
「ほ、本当にやるんですか……」
「当たり前じゃない」
 心細そうな声にレオーナは叱咤する。
「夢と希望の戦士・ゴボウレインボー見参……」
「…………」
 恥ずかしそうに出てきたゴボウレインボーことクレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)にみんな無言。
「こんなことやりたかったわけじゃないんです……」
 どうしようかと迷ったミナホはとりあえず涙を流すクレアを慰めることにした。

「気を取り直しまして……レオーナ様の言うゆるやかな村興しとは野外結婚式とか、野外告白大会とか、そういった自然と人の繋がりを合わせたイベントで人を集めて。そこから村を気に入った人が自然に居着いていけばと」
「それがどうしてゴボウジャスティスに……?」
 ゆるやかな村興し自体はまともな意見なのにとミナホ。
「ゆるやかとゆるキャラをかけたのではないでしょうか」
 なぜゴボウなのかは聞かないでくださいとクレア。
「でも、ゆるやかな村興し。その点で語ったことには私の意見もレオーナ様の意見も真剣です」
 そう締めてクレアは息をついた。

「少し困窮してきたみたいだからいいかしら」
と、手を上げるのはローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
「村の労働力について提案があるのだけど」
 村の方向性はひとまず置いておいてとローザマリアは続ける。
「先日に解散に追い込んだ野盗の中で、足を洗って改心した者に関しては面接の上で雇ってみるのはどうかしら? 彼らであれば自警団とかでは即戦力になるでしょうし、契約者の目もあるから滅多なことは置きないでしょう」
「はぁ……あの野盗の人達ですか」
 野盗と聞いてミナホは微妙な顔をする。
「もしかして改心の見込みないの?」
「いいえ……そういうワケじゃないんですが……」
 ローザマリアの質問にミナホは言う。
「『コボルトロードさんマジパネェッス』『コボルトロードさんマジリスペクト』『俺コボルトロードさんの永遠の舎弟』とか言ってコボルトロードに会わせてくれという野盗が何人かいまして……」
 何度か様子を見に行ったがそのたびにそんなふうに言われていたミナホがそう言う。
「……………………ちょうどいいんじゃない。森の警備についてもらえば」
 その野盗とかミナホのモノマネに対する感想を考えるのを凍結したローザマリアはそう返す。どうあれ改心しているのであれば労働力として期待しても問題無いだろう。多分がつくが。
「それと……エリーがこの村の方向性について言いたいことがあるのよね」
 そう言ってローザマリアはパートナーのエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)を前に出す。
「うゅ……ミュージック・フェスティバルをやりたい、なの」
 この場に臨む前。エリシュカはアテナと村の方向性について話し合っていた。その中で二ルミナスを音楽の聖地にできないかとアテナに相談していた。
『エリー、瑛菜おねーちゃんと一緒の事言ってる』
 というアテナの言葉にエリシュカは心強さをもらう。
(えーなといっしょ、なの)
 だから自分は間違っていないと自信を持ってエリシュカは続ける。ミュージック・フェスティバルがこの間の祭をもっと大きくしたものだと。そうした音楽的なイベントの中でここが音楽の聖地と呼ばれそれが村興しにつながらないかと。

「ミナホのやつ悩んでるみたいだな」
 話し合いの様子を遠くから見ながらカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)はそう言う。
「そのようですね」
 話しかけられた前村長―ハーム―はそう返す。
「心配か?」
「そうですね」
「ミナホも十分分別はある。過保護にする必要はないんじゃないか?」
 この話し合いでのことに自分の名前を娘の前で呼ばないで欲しいと言ったことを含めてカルキノスはそう言う。
「そうですね。けど今はまだ過去と対峙するときでもありませんよ」
「? それはどういう……」
「っと、しかしローザマリアさんの野盗を自警団にという意見は面白いですね」
「……そうだな。だけどちゃんと見張る奴が必要だな」
 明らかにごまかした様子のハームをカルキノスは問い詰めずそう返す。
「心配だったらカルキが村に駐在すればいいんじゃない」
 ひょこっと横からルカルカが出てきてそう言う。
「うおっ、ルカいつの間に来たんだよ」
「ルカは言いたいこと全部言ったし、あとはミナホが決めるだけだからね」
 ダリルは向こうでちゃんと仕事してるみたいだけどとルカルカはチョコを頬張りながら言う。
「ふぅ……だけど俺が村に駐在ね……まぁそれもおもしろそうか」
 と、なんだか簡単にカルキノスは村に駐在することを決めた。


「村興しって一言でいっても、色々とあって大変だねー……」
 と言うのは雲入 弥狐(くもいり・みこ)だ。いろいろな意見を聞き悩んでいる様子のミナホを見ながらそう言う。
「前村長は村興しについてどう思ってるんですか?」
 そうハームに聞くのは奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)だ。
「ふむ……そうですね。どちらかと言えばレオーナさんの意見に近いですよ」
「え? 前村長もゴボウさんになりたいの?」
 弥狐の言葉にハームははっはっはと笑う。
「村と契約者。村と森。森と契約者。これらがつながっていけば良いと思いますよ」
「森と契約者かぁ……うん。あたしもいいなって思うよ」
 自分たちと交友を結ぶに至ったゴブリンのことを思い出して弥狐は言う。
「同意が得られて何よりです。……と、そうだ。一つ相談があるんですが、ここに何を作ればいいと思いますか?」
 そう言ってハームが取り出したのは今作っている拠点の設計図だった。娘に相談されたと二人に一階の空白部分に何を作ればいいか聞く。
「自然との繋がりを大事にした木材の建物……なんだか純喫茶が似合うかもしれないわね」
 提案するのではなくふともらすように沙夢は言う。意識的な発言ではなく思わずといった言葉だった。
「ほぉ。いいですな、その案をもらいましょう。ふむ……そういえば沙夢さんはコーヒーが好きだとか。どうですか? この際ここで喫茶店をしてみれば」
「い、いえいえそんな、ただの思いつきですし……」
 それに自分が喫茶店をやらせてもらう理由はないだろうと沙夢は断る。ハームの言葉にやりたいと思ったがそれはわがままだと。
「ふむ……そうですか。残念です。まぁとりあえず娘には喫茶店を提案しておきましょう」


 そういった形で話し合いは続けられていく。そして最後、
「決めました。この村の方向性は――」
ミナホは答えを出した。