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リアクション
(なななの奴、大丈夫かな……)
火星人(吹雪)の相手を引き受けたなななを心配しながらも、シャウラは飛空艇の速度を上げた。
今はなななの事を信じるしかない。
「そこの犯罪宇宙人共!宇宙刑事見習いシャウラが相手だ!」
威勢よくそう言いながら、シャウラはレーザー銃で雅羅を捕らえるポータラカUFOに攻撃を加える。
それをポータラカ人たちは「そういう遊び」と思ったのか、他のUFO達は一斉にシャウラの小型飛空艇にマジックハンドの手でじゃれ付くように伸ばし始めた。
そんな中雅羅はというと、
「きゃあ!?ちょ、ちょっと危ないわよ!そんなに激しく動かさないで!」
シャウラの攻撃を避けようと動き回るUFOとマジックハンドに激しく揺さぶられているのであった。
「もう……みんな遊んでばっかりで誰も私のこと助けてくれないし……ななな達は乳、乳言ってくるし……」
雅羅は自分の災厄体質を呪い、そして悲嘆にくれた。
その時、
「雅羅さん!」
すぐ近くから声があがった。
そこには『アイドルコスチューム』に身を包んで小型飛空艇を操る想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)の姿があった。
「今助けるから、もう少し待ってて!」
彼はインカムを装着すると、空に浮かぶポータラカ人たちに『幸せの歌』を歌いかけた。
流れる私のHEART♪
追いかけてSHINING SKY♪
STAGEは想いの海原♪
COSMIC☆LOVE☆ZONE♪
振り向かなくても 見える貴方のOASIS♪
振り切った後で 飛び込んであげる♪
気ままに ROLLING☆SPACE♪
「?」
唐突に聞こえてきた歌に、ポータラカ人は動きを止めた。
「今だ!」
その期を逃さず、シャウラは雅羅を掴むポータラカUFOをレーザー銃で打ち抜いた。
その一撃でぐらり、と揺れるUFO。
「きゃあ!?」
雅羅も一緒に揺れた。
「雅羅さん!」
夢悠はすぐさま飛空艇をUFOのマジックハンドとすれ違うように交差させると、
「やぁ!」
『高周波ブレード』でハンドを叩き切った。
雅羅は重力に従いぼすん、と干草の上に落下したのであった。
「大丈夫?雅羅さん」
夢悠は急いで飛空艇をUターンさせて雅羅の元へ向かう。
「ええ、なんとか」
雅羅は体に着いた草を払いながら立ち上がった。
「もう、今日は本当に散々な目にあったわ。まあ、いつもの事だけど……ありがとうね」
「どういたしまして。とりあえず一度ここを離れよう。宇宙人達は彼が引き連れてくれてますし……」
ちらり、と彼は上空でポータラカUFO相手に果敢に戦っているシャウラを見上げる。
「さあ雅羅さん。後ろに乗って」
夢悠は彼女に手を差し出した。
こうして雅羅は無事ポータラカ人達の魔手(?)から解放されたのであった。
「ワ〜レ〜ワ〜レ〜ワ〜ウ〜チュ〜ウ〜ジ〜ン〜ダ〜」
「ウ〜チュ〜ウ〜ジ〜ン〜ダ〜」
牧場の上空では、未だポータラカ人達がUFOを飛ばして遊んでいる。
それをルカルカ・ルー(るかるか・るー)はつーん、と澄ました表情で無視するのであった。
「子供の悪戯と同じで『やめなさい』って追いかけると思うツボなのよね。こういう相手は、『ツマンナイ』と思わすのがポイントなのよ」
そう言って彼女はあえて宇宙人(ポータラカ人)の遊びを他所に、淡々と遊んで廻った箇所を修復していった。
小麦畑に行っては『エバーグリーン』でミステリーサークルを消し、地上絵は『群青の覆い手』で水に流す。
「牛や馬は繊細なのに、持ち上げるとか鬼かあいつら。何か持ち上げたいなら、これでも持っていけよ」
コード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)は自らの『スペアボディ』をUFOに向かわせる。
動きこそぎこちないが、それでも遊び相手には充分らしい。
ポータラカ人はUFOに備え付けのマジックハンドを伸ばし、嬉々としてスペアボディをキャトるのであった。
「……相変わらず訳分んない奴等だよな。うん、無視無視。つーか生き物で遊ぶくらいなら、ポータラカに帰れっつーの」
「でももうポータラカは……」
ルカルカは遠い眼をして空を眺めた。
「……益々こんなことしてる場合じゃないだろうに……あいつら危機感ってものがねえのか?」
自らの偽者を担いではその辺をみょんみょんと漂うポータラカ人を、コードは呆れ顔で見上げるのであった。
そうして宇宙人ごっこをしているポータラカ人達をひたすら無視し続けるルカルカとコードとは対照的に綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は「こらーっ!」と怒りの声をあげた。
「いくらなんでもやりすぎよ!あんまり悪ノリしてると、本物の宇宙人が怒るわよ!」
そう言って彼女は『富士の剣』でミステリーサークルを作るUFOのマジックハンドを叩き切った。
切断した瞬間にハンドは凍りつき、その重みと衝撃でUFOは地に落ちた。
そこから彼女はさらにUFOの乗り込み口に手を突っ込むと、中にいたポータラカ人を引っ張りあげた。
「ア〜レ〜」
「うわぁ、どんな格好してるのかと思ったら何その銀色の体……私だったら、もっとマシなコスプレしてるわよ」
「さ、さゆみ……あんまり刺激すると危ないですわよ」
その後ろから宇宙人の動向を見続けるアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)。
いつその宇宙人(ポータラカ人)がその恐ろしい牙をさゆみに向けてくるかと思うと、なかなか気を抜くことができない。
そんな彼女の内心を知ってか「大丈夫よアデリーヌ」とさゆみはアデリーヌに笑顔を向けた。
「せっかくのあなたとの休日が、こんなベタな『未知との遭遇』で邪魔されてなるもんですか。こいつには馬に蹴らるよりも痛い目に遭わせてやらないと、ね」
そう言って彼女はポータラカ人に一発げんこつを喰らわすと「はい、そこに正座!」と彼(?)を地面に座らせた。
「あなたねぇ、いったいどういうつもりでこんなことするわけ?」
「ワ〜レ〜ワ〜レ〜ワ〜……」
「それはもういいから!」
さゆりはめ、と小さい子供を叱るようにポータラカ人を睨みつけた。
「まったく、90年代の超常現象特番じゃないんだから……あ!あなたたちそれ見てこれやったんじゃないでしょうね?アデリーヌ。ちょっとUFOの中を見てもらえる?」
「え……?あ、はい」
そう言ってアデリーヌはポータラカ人の乗っていたUFOを探る。
中から出てきたのは……。
「……なんでしょう、これ?」
それは何十年以上前に地球で出版された雑誌や漫画類であった。それも「宇宙人」と関わりがありそうなものばかりである。
「やっぱり……ねぇ、ポータラカ人さん?」
さゆみはもう一度、今度は険しい表情で地面に正座するポータラカ人を見つめた。
「……他のポータラカ人達を集めてもらえるかな?今すぐ!」
ポータラカ人は一瞬正座したまま飛び跳ねた。
「ワ、ワ〜カ〜ッ〜タ〜!!」
まるで母親に叱られた子供のように大急ぎで立ち上がると、空を飛ぶUFOに向かって両手をあげた。
どうやら他のUFOに地上に降りるよう交信(?)しているらしい。じきにほかのUFOも地上へと降りてくるのであった。