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雪の女王と癒しの葉

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雪の女王と癒しの葉

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第六章 微か色付く世界
『本当に人というのは……』
 白花を朱里を優夏を美羽を、そしてルルナを見回して、雪の女王は小さくもらし、告げた。
『……分かった、好きなだけ採っていくが良い』
「「「「「やったぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」
 起こる歓声、それぞれ手を取り合ったり抱き合ったりして喜びつつ、早速『癒しの葉』を採取する。
「ん? 好きなだけって色々採ってってもええのと違うか?」
「いやいやいや、ダメでしょ」
 周囲には見慣れぬ草が生えているが、何となくそれはダメな気がしてフィリーネは首を激しく横に振った。
「……余計なものには触れないで、癒しの葉も必要分だけにしておくのがいいわね」
 罠っぽい、と月夜も思うので、皆にくれぐれも、と言い含めるのであった。

 手早く薬草を摘んだルルナ達は、日が落ちる前にと、急ぎ帰る事にした。
 美羽達が気に行ったのだろう、帰り用にと雪というか氷というか、で作られたソリに乗って山を降りる。
「でも、今回もすごく頑張ったわね。雪山登山とか絶対、嫌がりそうなのに」
「いくら雪の女王が相手でもHIKIKOMORIの神聖なる聖域を凍らせるわけにはいかんかったからな」
「まぁそっちをどうにかするのはあたしの役目よね、ヒキコモリの城なんてあたしが変えてやるわよ、マトモな家に」
「……ちゅーか、うぉぉぉぉぉっ、尻が冷てぇぇぇっ!」
「うるさい、っていうかまだ雪崩が起こったらどうするの!」
 大騒ぎする優夏やフィリーネは面白い。
「良かったですね、ルルナ」
「うん!」
「折角の薬草、落とさないように……勿論、ルルナ自身が落ちないようしっかり掴まっていて下さいね」
「うん! あ、雪の女王様! 後でまたちゃんとお礼に来るから!」
「ありがとね!」
「ありがとうございました!」
 霜月に支えられながら一生懸命手を振るルルナや美羽、朱里は可愛らしい。
 そうして。
 今までの喧騒が嘘のように、シンとなった空間。
 元に戻っただけなのに、嬉しい筈なのに、どこか寒々しく感じるのは何故なのだろうか。
 まぁ、まだ独りきりではないが。
 何か思いついたらしい刀真と月夜と白花が、そこには残っていたのだから。
 問う眼差しに応え。
「ね、白花」
「はい!」
 月夜に促された白花は、【鯨ひげのヴァイオリン】を手にした。
 かじかんだ指、上手く演奏出来ないかもしれない、けれど。
 感謝をただ、伝えたかったから。
 いつもより拙い、だけれども優しい音色が白い静かな世界に響き。
 寄り添うように補うように、月夜の歌声が静謐を柔らかく満たしていく。
『……』
 存外悪くないものだ、と目を細めていた雪の女王に、刀真がそっと告げた。
「ありがとう、ルルナの願いを聞き届けてくれて」
『何、礼には及ばぬよ……何だ?』
「まあ、何と言うか、お礼かな?」
 チョコレートを差し出した刀真に、雪の女王は首を傾げた後で、フッと微笑んだ。
『ふふっその気持ちだけ貰っておく……が、成る程、面白いな』
「……あ〜っ!?」
 呟きは、歌い終えた月夜の声にかき消された。
「刀真さんがまた女の人、引っかけてます」
「そんなのどこで覚えた……いや、答えなくていい」
 ベッと不機嫌そうに舌を出した月夜にふぅと溜め息をもらしてから、当真は表情を引き締めた。
 実は雪の女王を説得した際の白花の言葉に、引っ掛かっていたのだ。
「ちなみに白花、俺も怒っているんだが」
「えっ……?」
 頬を可愛らしく膨らませていた白花は、「怒っている」という言葉に目を見開いた。
「…俺の物だって言うのなら、何でもしますとか言うな」
「っ!?」
「白花の命を寄越せ、とか言われていたら…俺はそいつを斬っていた」
「でも……」
「……白花」
 きゅうん、としょげかえる白花だが、許してやる気はなかった。
 大分良くなったとはいえ、やはり自分の命を軽く扱うクセはなくならない
 だから折に触れ、ちゃんと分からせないと、なのだ。
「……ごめんなさい」
 ぐい、と抱きしめた華奢な身体、その真ん中で刻む音。
 分かってほしいから繰り返し、繰り返す。
 この愛しい鼓動。
 命の重みを。


『人というのは真、面白い』
「……まぁのぅ。わしも元は望まぬ契約ではなかったが、今はな、こういうのもそう悪くないと思うておるよ」
 何だか癪じゃから小娘には言ってやらんが、という地祇はやはりどこか、優しい顔をしていた。
 自分で気づいているのかいないのか、雪の女王には推し量る事は出来ないが。
「何、少しでも気になるなら一歩、近づいてみるが良い。嫌になったらそれこそ、見限ればいいじゃろう」
 あのちびっ子、礼に来るとか言っておったしな、そのしたり顔がちょっと悔しかったので。
『さて、ではその大切な契約者殿の元に帰るが良い。待っておるだろうて』
 イジワルのつもりで言えば、地祇は全部見透かしたようにフッと笑ってから、その姿を消した。
『なんじゃ、やはり微妙に悔しい気がするのぅ』
 変わらぬもの変わって行くもの進化退化変化深化。
 楽しげな刀真達を、更に朱里達を思い出しながら。
 雪の女王は隆元の言った事を考えていたのだった。
 少しだけ楽しそうに、口元を緩めながら。

担当マスターより

▼担当マスター

藤崎ゆう

▼マスターコメント

 こんにちは、藤崎です。
 今回構成が変則的ですが、間違いではありません仕様です。
 反省はしていますが後悔はしてません、そんな初イコン挑戦でした。
 雪崩戦も雪の女王との対峙も楽しかったです、ありがとうございます!
 ではまた、お会い出来る事を心より祈っております。

▼マスター個別コメント