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リアクション
闘技場控え室。
避難や救援で人気は少なくなったが、そこにもDSペンギン達の猛威は及ぶ。
「はわわ、ここまで来ちゃったんですねぇ」
雪崩れ込んでくる敵に、緊迫感の欠けた声を発する佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)は、それでも臨戦態勢で剣を構えていた。
迎え撃つ場所は狭い室内。
一対多数では分が悪い。
ルーシェリアは先ず、相手の数を減らすことを考えた。
「びーむに当たると厄介ですけど、逆にそれを利用すればいいのですぅ」
あえて敵の眼前に姿を曝し、光線が放たれる寸前で避ける。
的の外れたすいーつびーむはルーシェリアの後ろに居たDSペンギンへ当たり、そのまま飴へと変わる。
「作戦成功ですぅ!」
狙い通りの同士討ち。
こうして数を減らしていけば、どんどんと有利になる。
しかし、DSペンギンも知恵をつけていた。
ルーシェリアを扇状に囲む。
これならば同士討ちを避けることが出来る。
「うぅ、これは危険ですねぇ……」
たじろぐルーシェリアの視界に一条の光が。
「あれを使えば……」
それは控え室に置かれた姿見。
そこまで間に合うかどうか。
DSペンギンは既に勝利を確信していた。
だが、武器を持ったルーシェリアは見た目よりも機敏。
判断するよりも先に、体が動いていた。
そして、一斉に放たれたすいーつびーむ。
間一髪、姿見の後ろへと身体を滑り込ませる。
光線はその特性故に反射。
室内を多数の光が暴れまわった。
「ふぅ……間に合ったですぅ」
一息ついて顔を覗かせると、数体のお菓子像と幾匹かの無事なDSペンギン。
それもこのまま無闇に撃ち続けても、ジリ貧になることがわかったのだろう。警戒して『すいーつ☆キャノン砲』を放てないでいる。
「あら、それなら好都合ですぅ」
これ幸いと、接近戦へと持ち込むルーシェリア。
剣の腹でDSペンギンを一匹、また一匹と昏倒させていく。
「他に悪さをするペンギンさんは誰ですかぁ?」
DSペンギンは笑顔の後ろに隠れる修羅を見た。
ルーシェリアとは違う控え室。
そこで待機していた斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)たちの元にも脅威は訪れていた。
「このペンギンさんたちはいったい……」
応援のために同席していた伏見 さくら(ふしみ・さくら)は疑問を漏らす。
それに答えるよう、天神山 清明(てんじんやま・せいめい)は叫んだ。
「DSペンギン!? これは桐生円の陰謀なのですか!?」
「知っているのですか、清明さん?」
「権力のままに悲喜劇を起こしていた集団の武力派達なのですよ! まさか、こんなことからあのような結末を……」
清明がいた未来では、どうやらダークサイズが世界を支配していたらしい。
その発端がお菓子化からだとは、流石に想像できなかった。
「全く、ハツネちゃんが武道大会なんて野蛮なものに参加するからこのような事態に巻き込まれるのです。やっぱりさくらさんが一番僕と感性が合いそうですよ」
やれやれと首を振る天神山 葛葉(てんじんやま・くずは)に突っ込む清明とハツネ。
「父様……その冗談は面白くないのです」
「清明の言うとおり……なの。さくらちゃんは葛葉とは違うの」
「二人とも……なんです、その目は」
ジト目に抗議するが、葛葉も狂人だと知っている二人はそれを受け入れない。
「全く……さくらちゃんも何か言ってください」
話を振られたさくらは、DSペンギンに説得を試みていた。
「何か理由があってこんなことをしているんですよね! だったら、まずは話し合いをしましょう! こんな事してはいけないです……って、ああ!」
「さくらさん! 飛び出しては危険……ぬあああ!」
問答無用に発射されたすいーつびーむあ、さくらと清明を飴へと変える。その上、味を確かめるようにぺろぺろと。
瞬間、カチッと音が聞こえる。
「……さくらちゃんと清明をお菓子にして……いけないペンギンさんなの……コロス」
「下等な駄鳥共……後悔させてやりましょう」
溺愛している二人の受けた所業。それにより、二人のスイッチが入る音だった。
「クスクス……いい度胸なの。ハツネの……大切な義妹と親友に手を出すなんて万死に値するの」
顔は笑っているが、どす黒い殺意が部屋に充満している。
「二人の意識は……どうやらないみたいです」
「好都合なの……」
幸いなことに、本当の自分、壊し屋の悪人であることを知られずに済む。
「ペンギン……シネ……なの」
一触即発のハツネ。
「その前に【特戦隊】!」どこからとも無く現れた五人組。「二人を安全な場所へ」
指示を出すと、彼らは護衛しつつハツネの攻撃範囲から離脱。
それと同時、
「クスクス……【ショックウェーブ】をお見舞いするなの」
衝撃波がDSペンギンたちを襲う。
床に伏す鳥類。
「僕もやってやりますよ」
葛葉は【フールパペット】で倒れたDSペンギンを操る。
「この事件を企んだボスの所まで案内しなさい」
一体を案内役として確保。その他は、
「ハツネのギルティで細切れなの♪」
烈風にその身を刻まれていく。
「大量なの♪」
紅く染まる頬に浮かぶ笑顔はまさに狂人。
「さあ、元に戻す方法を聞きに行きましょう。それさえわかれば後は用無しです。荼枳尼でぶっ殺してやりますよ、ええ」
葛葉の目も妖しく光る。
惨状を後にし、二人の狂人は歩き出した。
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