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摩利支天の記憶

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摩利支天の記憶

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 7 



「あのバカ、カッコつけやがって」

 バンビ―ノのは物陰からそれを見てつぶやく。

「なーにが「子犬ちゃんだ。ドライブ遊びにいこうねだ。チャラチャラチャラチャラしやがって」

「で、どうしますか? お頭」

 バンビ―ノの手下の侍が尋ねる。

「決まってんだろ? 像を奪いに行くんだ」

 バンビ―ノはそういうと手近にあった岩を打ち砕いた。



 牙狼は逃げ出したものの、彼の配下の忍びとバンビーノ達は執拗に像を狙ってくる。

「このままでは奪われてしまうかもしれない」

 そう危惧した十兵衛は、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に像を託して一足先に葦原に向かうように頼んだ。

 像を持ち颯爽と駆け出していくセレン。

 一か月前、死の恐怖にガクブルしてたのを忘れたかのような(実際は、思い出したら恥ずかしいので思い出さない様にしてるだけ)態度で任務に臨んでいる。

 しかし、バンビーノはいち早くこちらの動きを察知し、単身で後を追いかけてきた。

「待ちやがれー!」

 そして怒号を上げて追いかけてくる。まさに猪突猛進という言葉にふさわしい猛追ぶりだ。

「一人で追いかけてきたわよ」
 セレアナが言った。
「よほど頭に血が上っているのね」

「みたいね」
 とセレンはうなずく。……しかし、あの単純さを逆手に取れば戦いを有利にすることができそうだ。

 バンビーノは目の前まで迫って来ると、見かけによらぬ身軽さで燕返しで攻撃してきた

 セレアナはとっさに[女王の加護]で自身とセレンの防御力を高め、[さらに秘めたる可能性]を用いて[軽身功]を使用し、スピードを高めた。そして、銃を使うセレンと槍と魔法で武装したセレアナが交互にバンビーノを攻め立る。バンビーノは意外な素早さで二人の攻撃をかわしていった。しかし、時間が経つに連れてだんだん勢いが落ちてくる。どうやら、体力が消耗してきたようだ。それでも、滅焼術『朱雀』を繰り出して攻撃してきた。

 セレンは[ディメンションサイト]にて空間認識力を高め敵からの攻撃を回避しやすくし、さらに[実践的錯覚][隠れ身]を併用して、敵の攻撃を極力受けにくくする。その上で、[メンタルアサルト]でバンビーノに自分の位置を掴ませにくくし、相手を焦らせた上で、バンビーノを挑発した。
「どこ狙ってるのよ、バンビーノ!」
 すると、バンビーノは怒った。
「その名を呼ぶなああー!!!」
 そして力任せに突進して岩にぶつかる。
「全然的外れじゃないの。本当に猪突猛進ね」
「なんだとーーー?」
 バンビーノは逆上した。
「怒るなんて図星?」
 その言葉で、バンビーノはさらに逆上して冷静さを失い、その辺りの物をやみくもに破壊する。しかしその行為はひたすら体力を消耗させるだけだった。
「何してるの? あたしはこっちよ! どんくさいわね」
 セレンは、例のアレな格好でさらにバンビーノを挑発した。
「ど……鈍臭いだと? もう、ゆるさーーーーん!」
 バンビーノはセレンに無暗に突っかかってきた。しかし、心身共に既に疲弊しきっている。そこをセレアナが一気に攻め立て、さらにセレンが[エイミング]で急所を狙い、一撃で倒した。バンビーノは泡を吹いてその場に気絶してしまう。

 死の恐怖にガクブルしてたのがウソのような鮮やかな女戦士ぶりだった。
 セレンは倒れたバンビーノを見おろして言う。

 「やっぱり、死ぬのが怖くて布団にもぐってガクブルしてるより、こうして戦ってる方が性に合ってるわ」

 その言葉に、セレアナは内心「死ぬのが怖くて一日中部屋にこもって私とエッチしまくってたの、どこの誰よ」とツッコミを入れ、その様子を思い出し赤面した。

 二人はバンビーナにとどめをさす時間を惜しんで先を急いだ。もう、約束の時間は迫っていたのだ。