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温泉を巡る攻防!

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温泉を巡る攻防!

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 ――場所は変わって、温泉を見渡せる丘の上。
「……まだ、撃って良いと言ってこないでありますか?」
「言ってこないわ」
 万が一に備えて葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)の二人が狙撃手として待機していた。
「むこうは楽しくやっているみたいよ」
 双眼鏡で重安の様子を見ていたコルセアが、隣で秀幸から支援物資という名目でもらった温泉饅頭を頬張る吹雪に双眼鏡を渡す。
「……本当でありますね。でも、本当に楽しくやっているのでありますか? 実は――」
「お願いだからややこしくしないでね?」
 コルセアが何かを言いかけた吹雪を遮る。
「……分かっているであります」
『コルセア殿、聞こえますか?』
 ふと、コルセアの持つ無線機から秀幸の声が聞こえてきた。
「えぇ、聞こえているわ」
『女性露天風呂周辺で不審な人物を確認したと連絡がありました』
「分かったわ。注意してみるわ」
『お願いいたします』
「撃って良いでありますか?」
 期待の目でコルセアを見る吹雪。
「まだ、分からないけど……まずは、不審人物を見つけてからね」
「了解であります!」
 

 ――女湯――

 男性陣が盛り上がっている時同じくして。雪乃、秀幸の手伝いで来た大岡 永谷(おおおか・とと)フィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)の二人とちょうど温泉に入りに来た笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)笹奈 フィーア(ささな・ふぃーあ)ブリジッタ・クロード(ぶりじった・くろーど)の五人がモンスター達と一緒に温泉につかっていた。
「ふぅ、極楽ですわ〜……」
「そうだな。ドリアードさんはどうだ?」
「気持ちいいですよ。そこのところは、モンスターも人間も同じなのですね」
「そうね。そういう気持ちが共有できるっていうのは良いわよね」
「ドリアードさん、肌綺麗だねぇ……」
「いえいえ、雪乃さんでしたっけ。あなたのお肌も綺麗ですよ」
「たまたま居合わせちゃったけど、ラッキーだったね。こういう機会なんてあまりないし」
 四人の会話を聞いていた紅鵡達。
「人を襲うでもなく、くつろぐだけ。確かにあまりない機会ですね」
「みんな、のんびりしてる」
「よし! せっかくだもの、お酒を飲もう!」
 紅鵡が酒瓶を持って、三人の元へ。
「よかったら一緒にお酒飲みませんか?」
「良いわね。私も美味しいお酒持ってきているわよ。ついでに、おつまみも」
 フィリシアが持ってきたお酒とおつまみを見せる。
「あら、面白そうね。私も混ぜてくれないかしら?」
 盛り上がるメンバーに声をかけてきたのはメデューサ。
「あ、石にはならないから気にしないで良いわよ」
「それなら良かった。みんなで楽しもうじゃないか」
「ドリアードさんとメデューサさんはお酒は平気かしら?」
「わたくしは平気ですね」
「私ももちろん平気よ」
「ささっ、どうぞどうぞ」
 紅鵡が二人にお酒を注ぐ。 
「紅鵡さんもどうぞ」
「あ、ありがとう」
「いや、俺はお酒は飲めないからな。このぐらいさせてくれ」
「お酒がダメならこんなものはどうかしら?」
 メデューサが白い液体の入った瓶を見せる。
「これは?」
「甘い飲み物よ。物は試しよ、飲んでみると良いわ。美味しいのは保障するから。そうねぇ……。あなた達の杯が空いてるわね」
 メデューサが永谷とフィーア、ブリジッタ、雪乃の杯に白い液体を注いでく。
「……では、失礼して」
 ブリジッタが恐る恐る飲む。
「……確かに。これは美味しいですね」
 それを聞いて、永谷とフィーアも飲んでみる。
「……美味しい」
「これは……。甘酒かな?」
「その通りよ。ちょっとした伝で貰ったのよ。私のお気に入り」
「それは、美味しそうですね。わたくしも頂いてもかまいませんか? こちらも色々とお出ししますわ」
「たまには、こういうのも良いわね。楽しくやりましょう」


 ――場所は女湯から少し離れた茂みの中。
「モンスター達と入浴だなんて……、ユキちゃんが心配だ……!」
 モンスター達が入っているという情報を手に入れた清明。温泉へは入らず、茂みの中に身を潜めていた。
「……これは、覗きじゃないぞ。ユキちゃんが心配だから見守るだけ……!」
 清明は誰に言うでもなく呟きつつ、女湯が見える位置へを探す。
「ここからじゃあまり見えないな……」
「コッチダ」
「お、確かにここなら……って、はい?」
 清明が恐る恐る声をかけてくれたほうを見ると、そこにはゴブリン、オーク、コボルトの三体がジッと目を凝らして女湯を覗こうとしている姿があった。
「……あのなぜ、モンスターが――」
「ダマル」
「……はい。まぁ良いか。ここなら見守っていられるし」
 コボルトに遮られ、諦めた清明は黙って雪乃を見守る事にした。


「見つけたわよ。不審者。四人もいるわね」
 そして、清明達の姿を見つけたコルセア。
「何をしているでありますか?」
「あの先は女湯ね……。さしずめ、覗きってところかしら」
「……撃つでありますか?」
 すでに銃を構え、スコープを覗いている吹雪。
「もう少し待って。小暮さん、不審者を見つけたわ」
 コルセアが無線で秀幸に連絡を取る。
『どこですか?』
「女湯側の露天風呂、その近くの茂みね」
『それは覗き、ですか?』
「そうね。どうする? 止める?」
『そうですね、問題事は早い段階で潰しておきたいところです。お願いできますか? 事後処理はこちらでやりますので』
「了解。吹雪出番」
「待っていたであります!」
「バレたら逃げるかもしれないから。素早く確実にね」
「任せるであります」
  

「……ユキちゃん大丈夫かな。今のところは大丈夫そうだけど……」
 ジッと雪乃を見守る清明。
「ミエルカ?」
「オシイ」
「アノ、ヌノ。ズレロ、ソウスレバ、ミエル……!」
 そして、鼻息を荒くしているモンスター三人組。
「……失敗だったかな……」
 それを、若干引きつつ見守る清明。
「ミエ――ウッ!?」
 少し身を乗り出したゴブリンが急に崩れ落ちた。
「ドウシタ……ガッ!?」
「ガウッ!?」
 続けて、オークとコボルトも崩れ落ちた。
「あ、あの? 大丈夫……?」
 横でいきなり倒れた三体に動揺を隠せない清明。
「ガガ……」
「生きてはいる……か。痺れてるみたいだけど……」
 モンスターの状態を確認しようと身体を少しずらした瞬間に、その空間を通り過ぎる一筋の弾道。
「えっ!?」
 弾が飛んできたであろう、方向を見る清明。その先にかすかに見えている吹雪とコルセアの姿。
「ま、待って!? オレは覗きじゃ――あふっ……!」
 咄嗟に無実を証明しようとした清明だが、距離的に聞こえるわけもなく、吹雪によって撃ち抜かれた。