天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

温泉を巡る攻防!

リアクション公開中!

温泉を巡る攻防!

リアクション



第二章


「……温泉って、どこの世界でも人気があるんだなぁ」
「モンスター達も温まりたいということでしょう。最近は冷え込みますしね」
 温泉へとやってきた鷹野 栗(たかの・まろん)芦原 郁乃(あはら・いくの)蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)の三人。
「あぁ、確かに壮観だなぁ……」
 脱衣所から、チラッと温泉を覗き見る郁乃。それに、便乗して栗も覗く。
「沢山いますね。交友を深めるには良い機会です」
「そうだね。って、あの姿は……?」
 郁乃の視線がモンスター達のある一点に止まる。郁乃の視線の先では、小さなモンスターがぴょこぴょこ動いていた。
「主? どうしました?」
「あれは……」
 そして、そのモンスターも視線に気付いたのか、郁乃と目が合う。
「やっぱり、ユリシアだっ!!」
 そして、着ていた浴衣を全部脱ぎ去ってユリシアに向かってダッシュ!
「郁乃さん、走ると危ないですよ!」
「主! 嬉しいからって、裸丸見えですよ! バスタオル着用と言われていたではありませんか!」
 二人も、慌てて追いかける。
「ユリシア〜〜!!」
「あ、郁乃おねえ――わぷっ!」
 そのまま、ユリシアへとダイブ。
「ぷはっ! びっくりしたぁ〜」
「あははっ、久しぶりユリシア♪ 元気だった〜?♪」
「うん! 元気だったよ!」
「もう、主。嬉しいのは分かりますが、他の方もいらっしゃるのですから、もう少し節度をわきまえてください」
「……そうよ、近くにモンスターもいるのだから、ダイブはやめてくれると嬉しいわ」
 近くにいたメデューサがタオルで顔を拭きつつ答えた。
「あ、ごめんなさい……嬉しくてつい」
「お二人は、このメデューサさんとお知り合いなのですか?」
 栗が、ユリシアの方を見る。
「……? 何かな?」
「いえ、可愛らしいメデューサさんですねと」
「えへへ、ありがと! 私はユリシア。よろしくね」
「私は鷹野 栗です。よろしくお願いしますね。ユリシアさん」
「なるほど……。貴方達がこの子の言っていた友達なのね」
 メデューサがユリシアの頭を撫でる。
「うん。私のお友達なの! でも、最近あまり来てくれなくて寂しかったの……」
「ごめんね。行ける機会があまりなくて……」
「でも、会えてよかった! メデューサのお姉ちゃんありがと!」
「別に良いわよ。ちょっと苦労したけれどね」
「ユリシアさんとはどのような経緯で知り合ったのですか?」
「栗さんは、知りませんでしたね。では、僭越ながら説明をさせてもらいますね」
 マビノギオンが栗にユリシアと出会った経緯を説明した。
「崩れた遺跡にいた一人ぼっちだったメデューサですか」
「友達を欲しがってたからみんなで友達になってあげたの!」
「それからは定期的に会いに……。そういえば、ユリシアさん。あそこから出ても戻されてしまうとお聞きしましたが、どうやってここまで?」
「それは、私の力よ」
 黙って聞いてたメデューサが答えた。
「一人で遺跡にいたから、何事かと思ってね。聞いてみたら、出れないって言うじゃない? 何かの力で拘束されていたらしいけれど、私の力で一時的にその力を緩めたのよ。それで、せっかくだから温泉に誘ったというわけよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「私の近くからあまり離れられないという制約があるけれどね」
「でも、おかげでみんなに会えた! 本当にありがとう!」
「えぇ。それで、あなたたちものんびり温泉につかりにきたのかしら?」
 メデューサが三人に視線を向ける。
「あ、はい。ここはあたしが要件を……」
「私もお手伝いします」
「ありがとうございます。ユリシアさん。申し訳ありませんが主のお相手をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「うん! 良いよ!」
「よ〜し♪ 久しぶりだしいっぱい遊ぼう♪」
「うんっ! そうだっ、色々なお話聞きたいな」
「良いよ。じゃあ、何から話そうかなぁ……」
 二人が楽しく会話を始めたのを確認してマビノギオンがゆっくりしているメデューサに振り返る。
「要件ね……。何かしら?」
「温泉をご一緒……、あるいは奥にある温泉に行く際、通過することを許していただきたいのです」
「どうやら、ここは奥にある温泉地などへ向かう、交通の要衝らしく、ここを通過しないと奥の温泉地にいけないらしいのです」
 マビノギオンの説明を栗が引き継ぐ。
「モンスター達もゆっくり温泉につかりたいでしょうから、害するのも失礼でしょうし。良ければお願いできませんか?」
「なるほどね……。ということらしいわよ」
 メデューサの声と共に、近くにいたセイレーンとドリアードがよってきた。
「そういうことなら他のモンスター達の意見も聞かないとね。どうかしら?」
「私は問題ないわ」
「わたくしも特には。最悪わたくし達が奥の温泉地へ移動してしまえば良いのではないかしら?」
「それもありね。というわけで、私達が別に問題無しよ」
「それを聞いて安心しました」
「まぁ、詳しい話は後にしましょう。今はのんびりつかるとしましょう」
「話は終わったー?」
 ユリシアが終わった頃を見計らって声をかける。
「えぇ。無事にまとまったわ」
「じゃあ、みんなでお話しよっ!」
「良いわね」
「そうですね。では、私から。モンスターの皆さんは温泉には時々やってきたりするのですか?」
 栗がモンスター達に質問する。
「わたくしはあまり。湖で水浴びしたりはいたしますが、こういうところまで出向くなんてあまりありませんね」
「そうね。私も同じかしら」
「温泉によく入るモンスターなんてあまりいないと思うわ」
「最近は冷え込みますからね。それで入りに来ているのですか?」
「それはあるわね。後は、美容効果とか魔力回復に良いとか……」
「やはり、女としてその辺りは重要ね」
「ユリシアちゃんどうしてきたの?」
「メデューサのお姉ちゃんが誘ってくれたから。後は、みんなにあるかなって!」
「そっかそっか♪」
 郁乃がユリシアに抱きつく。
「あははっ、くすぐったいよ〜♪」
「仲がよさそうで羨ましい限りです」
「じゃあ、栗お姉ちゃんも♪ ぎゅ〜〜っ!」
 ユリシアが栗に抱きつく。
「ふふっ、よしよし」
 栗が嬉しそうにユリシアの頭を撫でる。
「では、せっかくですからあたしも失礼します」
 マビノギオンもユリシアに抱きつく。
「……なかなか面白い物が見れたわね」
「えぇ、たまにはこういうのも悪くはありませんね」
「そうね。お互いに目の敵にすることが多いから。こういう小休止的なものも悪くはないわ」
 楽しそうにする四人を見て、のんびりとするモンスター達だった。