天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

リアクション公開中!

【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

リアクション

 先ほどミルキーのインフォメーションの甲斐も手伝って、音楽祭の舞台である【オペラハウス・アヴニール】には大勢の人がきていた。
 この音楽祭の主催者である城 紅月(じょう・こうげつ)、そのパートナーのレオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)シャルル・クルアーン(しゃるる・くるあーん)が話をしている。
「ミルキーさんにも後で感謝しないとだね」
「その前に、この音楽祭を成功させないといけませんよ?」
「そうそう。警備の方は俺とレオン、後はルカルカさんの善意でやってきた警備員できっちりやるからな」
「二人とも、ありがとう」
「紅月」
「うん?」
「愛しています。だから、精一杯歌ってください」
「俺からも頼むぜ」
「……うん。俺のありったけと参加者のありったけ全部出しきるよ! それじゃ手伝ってくれてる人のところに顔出してくる」
「ええ」
「出番忘れんなよ?」
 二人に警備を任せて各協力者の元へ走る紅月。

「……さて、そろそろ始まるな」
「歌姫たちの、いえ。歌を愛するものたちの祭典、この目に焼き付けましょう」
 警備員として、一拝聴者として二人はステージへと目を向ける。
 そのトップを飾るのは、
「みんなこんにちはー! 想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)だよー!」
 ミニスカートを履き、その下にはホットなパンツ(決して暖かいパンツという意味ではない)を履き、
 ピンク色でまとめられたコスチュームを着用した夢悠がステージに立つ。
 男性を虜にするスマイルをくりだしながら手を振る夢悠。
「女の子だと思った? 残念、男の娘でーす! あはは!」
 そう、こんなに可愛いんだから男の子だとか女の子だとか振り切れているわけだ。
 性別とかは関係ない、アイドル:夢悠 性別:夢悠なのだ。
「男だけどね、こうやって女の子の格好をするのも、そしてアイドルをするのも、とっても興奮して幸せな気分になれるんだ!」
 一部すっごいはっちゃけた発言があった気もするが言及はしないでおこう。
 身振り手振りを交えながら自分の思いが本物であるということを観客に伝えていく。
「だからこの気持ちをみんなに伝えられるよう頑張って歌うから! オレ、男の娘だけど応援宜しくね!!」

―――「キャー夢悠くんカッコカワイイー!」
―――「いいぞー! 突き抜けるところまで突き抜けろー!」
―――「むしろ男の娘のほうが……」


 これまた一部ダメな層がいた気がするが深く突っ込むとまずいので置いておく。
 衝撃的な登場から一変、会場に明るくポップな曲がかかる。
 【熱狂】を使い、会場を沸かせる。それは歌だけはない。
 観客へむけてキュートなヒップをダンスさせ、スカートが捲くれるほど大きく足をあげたりと大盤振る舞い。
 これに熱狂(一部発狂)しない観客はいなかった。
『HEY! HEY! みんなもっと元気出してー!』
 曲の間奏中、定番の客イジリをする夢悠。
『HEY! HEY! お願い! もーっと!』
 今度は左側の観客を、そして次は奥にいる観客に見えるようにジャンプをする。が。
『HEY! HEうおわっ!』
 
どんがらがっしゃーん!

 バランスを崩し盛大な音を立てて床へ転がる。しかしすぐさま立ち上がる。
「ごめん! 大丈夫だよ! みんなの声凄すぎて、もうっ! ありがとー!」
 立ち上がりざますぐにステージを駆け回る。ラストスパートも気を、手を抜かずに歌い、踊りきった夢悠。
「みんなありがとー! 次の人の歌もよーく聞いてねー! また会おうねー!」
 惜しみない拍手を送られながらステージから去っていた夢悠。
「いいステージだったわね。でも私たちだって負けないからね」
「うん。後、よろしくね」
「任せときなさい!」

 夢悠に後押され、次にステージを駆け回るのは綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)、そのパートナーであるアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)
「男の娘アイドルの次は私たち、コスプレアイドルデュオ『シニフィアン・メイデン』の登場よ!」
「よ、よろしくお願いします」
 高らかな宣誓と共にテクノポップが場内を駆け巡る。
 冒険の日々に入り混じる甘酸っぱい恋物語を予感させる彼女たちの新曲『冒険LOVERS』。
 二人が歌いだす。この曲のアニメの主人公になりきって歌と感情をかもし出す。
『―――♪』
 さゆみが歌う。生き生きとした動きが曲の持つ明るさを際立たせる。故に彼女は『動の歌姫』。
『―――♪』
 対しアデリーヌ。硬質な水晶を思わせる動きが曲の持つ暗さを際立たせる。故に彼女右は『静の歌姫』。
 彼女たちの衣装のベース部分は変らない。だがディティール部分や、彼女たち自身の動き、歌い方で見事なまでに動と静を表現していた。
 夢悠のようい会場をぶっちぎらせるパフォーマンスとは少し違う。
 陰と陽、光と影、太陽と月のように、全ての事柄が持つ二面性を上手く表し、それを自分たちに憑依させて観客へと流し込んでいく。
 それを魅せられた観客たちが沸かないはずもない。
 
―――「さゆみちゃーん! もっと動いてくれー!」
―――「アデリーヌちゃんのパフォーマンスマジ最高!」
―――「どちらを選ぶ? 冗談、俺はどちらもしか選ばないね!」


 恋を抱きながら冒険にはいろいろ危険がつきものだが、
 それでも止まらない乙女心が溢れに溢れるこの曲にも魅せられた観客たちが声援を送る。


『『―――冒険LOVERS♪』』

 最後まで一糸乱れぬパフォーマンスで曲を終えた。
「聞いてくれてありがとー! これからも私たち『シニフィアン・メイデン』をよろしくねー!」
「みなさんの前で歌えたこと、忘れません」
 そう言ってその背に拍手を受けながら退場していく二人。
「すごいすごい! デュオならではだね!」
 袖で二人のことを(踊りながら)見ていた夢悠が声をかける。
「あなたもよく一人であんなに沸かせられるなーって思ったわ」
「……真似、できません」
「そう? 嬉しいな! それじゃ、はい!」
「うん? ああなるほど、はい。ほらアデリーヌも」
「は、はい……」
「せーの!」
 三人で利き手を差し出して互いの手の平を手の平に。お互いのパフォーマンスに対してのハイタッチ。
「す、すいませんお三方。予定がかなり巻いてしまっているので、少しの間MCをお願いできますか?」
 これもまた醍醐味か。
「もっちろん! オレは大歓迎だよ!」
「わたしたちもいけるわ!」
「……なんとか、がんばります」
 突然のことにも動じず三人はMCをするべく再びステージに戻っていった。