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2章 自由の証明

「自分達の出番でありますな」
「……い、いきましょう!」
セレン達が作り出した次元の狭間に突入するのはリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の2名である。
「ここは……」
「なにも無いであります」
二人がたどり着いた先には何もない空間が広がっていた。
二人が前に進み、しばらくすると何やら玉座らしきものを見つけた。
「お前たちか。私の世界に紛れ込んだ異端者は」
そこに居座るのはかつてとある軍で勇名を轟かせたであろう将軍が居た。
「あっ、貴方が争いの無い世界を創り出した人ですね!」
リースは少し声を荒げて質問を投げかけた。
「いかにも」
「どうしてあの世界の住人から自由を奪ったのですか!」
将軍は昔を懐かしむ表情を浮かべ語りだした。
「……私は数多の戦場を駆けぬけ、勝利を掴んだ。しかし、いくら勝利を得ようとも戦いはなくならないのだ」
「けれど、いつか戦いはなくなるであります」
吹雪はいつか来るであろう平和を信じ、そう告げた。
「……貴様、軍人か」
「戦場に立ったことなら何度かあるであります」
「ならば問う。戦争で戦争が終わる日が来るまで、私達はあと何人殺せばいい」
将軍の投げかけた質問に戸惑う吹雪。
「それは……」
「分からないであろうな」
「……もしかして将軍殿は、戦いに疲れたのでありますか?」
「疲れた、か……。間違いではないな。そうだ、私は戦いに、人を殺す事に疲れたのだ」
そう語る将軍の目は外見の容姿よりもはるかに老けてみえた。
その瞳の奥には人という生き物に絶望をしているようであった。
「でっ、でもなんで人から自由を奪ったのですか! それじゃあ、生きてても死んでいるのと同じじゃないですか!」
「命を奪って平和を勝ち取るのと、自由を奪って平和を続かせる。何の違いがある?」
「けれど、心を殺すのだって人を殺すのと一緒じゃないですか!」
将軍の言葉に激昂するリースだが将軍の心にはどうやら届いていないようだった。
「……どうやら話は平行線の様でありますな」
そういう吹雪は秘刀である絶空を構え、戦闘態勢を取った。
「ほう、私に戦いを挑むか。幻想の世界に堕ちたとはいえ元将軍だ。実力を見せてやろう」
「けれど今はただの引きこもりやろーであります」
「それは言い過ぎですよ。吹雪さん……」
吹雪の動きを見て、どうやらリースも戦闘態勢になったようだ。
「けれど、自分の居心地のいい世界に閉じこもってたらダメですよ。私達が本の外の世界の魅力を教えてあげます!」
「自由を手にする人間の強さ、見せるであります」
そう言うとまず吹雪は前に出て、近接戦闘に持ち込もうとした。
「いいだろう! お前たちの言う強さ、見せてもらうぞ!」
そう高らかに宣言すると、将軍は自身の持つ刀の抜刀術で20Mは離れている吹雪に攻撃を仕掛けた。
「なっ! この距離まで斬撃が飛んでくるのでありますか……」
「吹雪さん、あの斬撃は私の魔法弾で相殺します! その隙を狙ってください!」
「了解であります」
再び飛んできた斬撃をリースは魔法弾で相殺し、なんとか吹雪が近接戦闘ができる距離まで詰めた。
「ほう、やるな。けれどその程度じゃ私には勝てないぞ」
「この程度? 自由に生きる人間の底力を舐めるなであります!」
「なっ!?」
吹雪はもう一つの絶空を取り出し将軍に猛攻を仕掛けた。
「なんのこれしきっ……!」
すると吹雪の背後からリースが突如現れた。
「なにっ!?」
「これが、自由がある……生きている人間の力ですっ!」
リースは将軍の至近距離で魔法弾を放った。どうやら斬撃の雨を必死で回避してきたようで、身体にはいくつかの切り傷があった。
「がはっ……。よもや私が負けるとはな……」
将軍は二人の猛攻に耐えられず膝をついた。
「ただの引きこもりに負ける訳がないのであります」
「じ、自由の強さ、わかってくれましたか……?」
二人の凛々しく立つ姿を見て将軍は微笑んだ。
「これが私の捨てた自由か……」
「自分達は自由を掴み取るであります」
「どっ、どんな困難にもこうやって立ち向かって自由を手にするんです!」
「私が弱かっただけ、か……自由も……捨てたものじゃないな……」
そう言うと将軍は消えていった。
それと同時に世界そのものが大きく揺れ出した。
「なっ、なにこの揺れ!?」
「きっとワールドマスターが居なくなったことで世界が崩落するのであります! 急いで脱出を!」
「うっ、うん!」
こうして、二人は入り口にある魔法陣から現実世界に戻り争いの無い世界は本の中から消えて行った。
アーデルハイトの話だと、ワールドマスターは現実世界にちゃんと戻れると聞いてリースは安堵していた様子であった。
ファーストミッション、セカンドフェイス完了。