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6章 生きるということ

「さてっと、メンヘラさんにお説教の時間ね」
「あぁ、人間の可能性を証明してやろう」
「ここに来れた時点でミー達の勝ちネ」
最後の世界の創造主に挑むのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)とそのパートナコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)、そしてキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)の3名である。
「……君たちか、俺の創った魔道書に乗り込んできた冒険者は」
「俺の? ということは、あなたは魔道書を作った本人って訳ね」
「そうだ、素晴らしい魔道書だろ。人々の祈りを叶える魔道書は!」
魔道書を作った魔術師はそう高らかに宣言していた。
「そうね。こんな狂った世界までも作っちゃうなんてすごい魔道書ね」
「狂っていようが、それが彼らの願いだ」
「本当に? どうやらその彼らとやらは望んでその世界からご退場したみたいだけど?」
「なに?」
そうルカルカが言うと、魔術師は目下にある水晶球を確認した。
しかしその水晶球は自らが作り出した世界にて破壊されていた。
「水晶が壊れているだと?」
「だから言ったネ! この世界に来れた時点でミー達の勝ちネ!」
「……それはどういうことだ?」
「この世界に来れたってことは、争いの無い世界のマスターモ、愛を失った世界のマスターモ、自らの間違いに気付き、認めたという事ネ」
キャンディスは胸を張ってそう主張していた。
「それがどうしたというのだ? 俺の世界はまだ終わりを告げていないぞ!」
「けれど、アナタはさっき自分の世界にあった水晶を確認したネ? もし、アナタが本当に人間を必要をしないならそんなモノも必要ないと思うネ」
「それは……」
どうやら痛い所をつかれたようで魔術師は言い返すことができなかった。
「アナタが人のいない世界を創り出して、他の世界を魔道書に残したのは人間を見ていたかったから、違うカシラ?」
「…………」
「そして、二つの世界でミーの仲間たちが人間の可能性を証明してくれたネ。だから、今度はアナタを救う番ネ!」
キャンディスの言葉を聞いてルカルカが1歩前へと踏み出した。
「そうよ。ルカルカ達は貴方を救いに来たの。人は独りでは弱いけど、手を取って生きていけば強くなれるんだよ!」
そう語るルカルカの隣に立ちコードも魔術師に声を掛けた。
「人は独りでは幸せにはなれない。まして、生きていくことさえできない。」
「コードの言うとおりっ! みんながいるから自由に笑える、自由に生きていける、自由に愛せるの!」
「人は人に認められて、ようやく人になれるんだ。人がいない世界で生きていても、お前を認めてくれる人間は誰もいないぞ」
「俺は……俺は……弱い人間なんて認めない……」
魔術師は3人の必死の説得に心を動かされ始めたが、最後の心の壁がどうやっても破壊されないでいるようであった。
「なかなかしぶといネ……ルカルカ、どうするネ?」
「待ってて。ちょっと乱暴かもだけど、やってみる!」
そうキャンディスに言うとルカルカは、コードと共に魔術師に近づいていった。
「何をするつもりだ?」
「ちょっと乱暴だけど、人間の可能性をみせてあげよっかなって! コード、いくよ!」
「あぁ、嘘っぱちの世界は俺が壊してやる」
そう言うとコードは武器形状に変化し、ルカルカの槍となった。
「まさか……!」
「そのまさか♪ 潜在解放発動……。ホワイトアウト、カタクリ、同時装填。これが……!」
ルカルカは自身の持つ全力を込め、コードが武器形状になった槍を創られた世界に向けて放った。
「これが人の強さ……世界を革命する力よ!」
仮想世界と現実世界の境界面に衝突した槍は極大の力を以て、その世界を破壊した。
「どう? これが貴方が弱いと言った人間の力だよ!」
光に包まれ、崩落を開始する世界。
「ははは……まさか、俺の魔道書を内側から、しかもこんな強引に壊す人間がいたとはな」
「あんまりやりたくなかったんだけどねっ」
「人間も悪くないだろ」
「この世界を創り出した意味はあったな。……あぁ、人間はやはり面白い」
「分かってくれたみたいだね。よかった♪ ……さあ帰ろう、苦しみと幸せの混在する、愚かで素晴しい世界に!」
「そうだな……先に帰らせてもらうぞ」
そう言って消えようとする魔術師にキャンディスは駆け寄った。
「言い忘れていたんだネ」
「どうした?」
「この世界に来る前に、この世界を救えるか救えないか、でトトカルチョをしようとしたんだケド……」
「そんなことをしていたのか、それで?」
「賭け自体成立しなかったんダヨネ」
「なぜだ?」
魔術師は不思議そうな顔で首をかしげた。
そんな魔術師にキャンディスは自慢するかのように理由を説明した。
「だって、みんな救える方に賭けるんだもの、結果が分かっている賭けだったから胴元が損しちゃうジャナイ」
「ふふふ……あははははは!」
それを聞いた魔術師は崩壊しかけている世界に響き渡るかのような大声で笑っていた。
「ネ? みんな人間の可能性を信じているんダヨ」
「あっはははは……ほんとお人好しなんだな、お前たちは」
「ミー達が、じゃないネ。人間が、ダヨ」
「そうみたいだな。……ありがとう、お前たちみたいな人間に出会えたことを感謝するよ」
そう言って魔術師は光の中に消えて行った。
「あっ、名前聞きそびれた……」
「なに、またどこかで会えるだろう」
「帰ったら寝るヨ。先戻ってるネ」
そう言うとキャンディスは先に現実へと戻って行った。
「あの魔術師……笑った顔、すごく幸せそうだったね」
「そうだな。これからはきっとたくさん笑うだろう」
「そうだねっ♪ 帰ってエリーにただいまって言わないとっ!」
「あぁ、俺たちも帰ろう。大切な人が居る世界に」
こうして魔道書に宿った3人の祈りは破壊された。
彼らワールドマスターに希望の光を灯して……
ファイナルミッション、ファイナルフェイズ完了。