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新興都市シズレの動乱

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新興都市シズレの動乱

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終章 悪の源泉

「う、ぐぅっ……」
「オラぁ! 早くあのガキを呼びつけろって言ってんだろ小娘!」

 地下エネルギープラントの最深部。
 他の構成員と違い、紋様の刻まれた赤いスカーフを身につけた男は、
 縄で縛られて石の床に横たわる熾月 瑛菜(しづき・えいな)を、延々と蹴りつけている。
 また、その他に目に付くものとして、瑛菜の首には革製の首輪が備えられていた。
 その輪からは鉄製のプレートが吊されており、
 表面には<0107:熾月 瑛菜>と刻まれている……。

「は……ぁ……」

 どれくらい暴行が続いていたのか―――
 既に瑛菜の服はボロボロで、息も絶え絶えとしている。

「そろそろやめときなさいよカルロス。その子、本当に死んじゃうわよ?」

 その様子をずっと横目で見ていた女が口を挟む。
 この女も、先の男と同様に紋様の刻まれた赤いスカーフを身につけている。

「ケッ、黙ってなモルガナ。そんときゃそん時だ。
 ……むしろパートナーロストであのガキも始末できて、一石二鳥じゃねえか?
 あぁもうこいつ殺すか」

 言うなり大刃のナイフを握りしめて振り上げるカルロス。
 ところが、その手が振り下ろされる事はなかった……
 何者かが後ろから手首を掴み取ったからだ。

「私の許可無しに商品を傷つけるつもりか、カルロス。
 いつからお前はそんなに偉くなった?
「あ、ぁあ、ジェラルド会長! 滅相もねえです。今のは単なる脅しでして……へへ」

 彼らはジュリエンヌ商会のトップスリーである。
 この地下エネルギープラント全域の管理者で、
 発展していくシズレの恩恵を独り占めにする悪の根源―――。

「ここシズレは、シャンバラ領とアトラス直轄領、その狭間に位置している。
 パラ実校長石原肥満の力も弱っている今、どちらからも手が出しにくく、我々が活動をするにあたって最高の環境だ……」

 ジェラルドは崇拝するかのような眼差しで天を仰ぐ。
 見えているのは無機質な天井だけのはずだが、浮かべているのは恍惚の面持ちだ。

「故に手放したくない。非常に手放したくないっ!
 だが、やむをえん状況というのもある……もし地上にいる奴らが踏み込んできた時、
 その商品は我々が脱出する最高の手助けとなる。わかったか? 勝手に壊すな

 カルロスの方を睨みつけるジェラルドは、一刻前とは対照的に冷徹な風貌をたたえていた。

「りょ、了解です。ひとまず“保存”しとく事にしやす」

 カルロスが指を鳴らすと、どこからともなく赤いスカーフを纏った複数の男達が現れる。
 男達は傷ついた瑛菜を担ぎ上げると、部屋の外へと運び出していった。

「一応、死なないようにあの子回復しとくわ。全く、面倒かけさせないでよね……」

 呆れた声で言い放つと、モルガナも男達を追って退出していった。
 ジェラルドはうむうむ、と納得したように頷き、

「さぁて、どう転がるかな……ククッ、フフハハハハッ!!

 まるで追い詰められている事がわかっているのに、
 尚、それを楽しんでいるかのような高笑いをあげてみせた。


担当マスターより

▼担当マスター

水無月へる

▼マスターコメント

▼ マスターより

 水無月へるです。
 ここまでお読み頂いた方、およびご参加頂いたプレイヤーの皆様、ありがとうございました。

 『新興都市シズレの動乱』は、繁栄めざしい町に落ちる、影の物語です。
 少々場面が移り変わりすぎてごちゃごちゃしているのと、
 物語終盤に非常にダークな描写もあったかもしれませんが、いかがでしたでしょうか?
 お楽しみいただけたなら幸いです!

 進行は、怪物への対処はアクションも多く、とても上手くいきましが、
 瑛菜の捜索は少し遅れてしまって、決着まで結びつかなかったという形になりました。

 というわけで―――次回は続編として、ジュリエンヌ商会との決戦をやらせて頂きます。
 瑛菜を助け出す事ができるのか?
 ジュリエンヌ商会の成り立ち、そのトップ・ジェラルドの目的とは?
 乞うご期待です!

※本シナリオに参加してくれた方全員に、続編への招待参加処置を取らせて頂きました。
 続きが気になる方、ジュリエンヌが許せない方、その他なんでもかんでも……
 ご都合がよろしければ是非ぜひ、続編もよろしくお願いしたいです!