天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

水宝玉は深海へ溶ける

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水宝玉は深海へ溶ける
水宝玉は深海へ溶ける 水宝玉は深海へ溶ける

リアクション

「こうして哀れな王子様は救済の天使達と勇敢な人魚姫に救われ、国には平和が訪れました。
 めでたしめでたし・ね。
 はぁ……良い話だわぁ。アデーレさんこういうの大好きよ。

 でもざぁんねん。お話しはそこでは終わらないの」

 ホールに美しいテノールが響いたのは突然で、それが訪れたのも突然だった。
 何の前触れも無く、操り人形の糸が切れるようにジゼルは倒れた。
 その場の友人達が彼女の名を叫ぶ声よりも早く、
目の前にいたアレクはジゼルに駆け寄り彼女の身体を抱き支える。

 と、異様な動きで首を上げたジゼルの瞳が、赤と黒の虹彩に彩られているのに、アレクは気づいた。

 次に響いたのは銃声だった。
 ジゼルが撃たれたのだ。アレクは、彼の心を救うにはもう手遅れだったのだ。誰もが思った。

 しかし先に揺れたのはアレクの長身の方で、崩れて行く彼の身体が地に近付いて行くにつれ、
ジゼルの手に硝煙を纏った小銃が握られているのが露になる。
 テノールの主は階段の真ん中に立っている。
 そしてアレクへ向かって止めの銃口を向けている。 
「アレク!!」
 咄嗟に割って入ったのはリュシアン・オートゥイユで、何の言葉を残す事も無く彼の命は銃弾に奪われた。


「歌いなさいパルテノペー、私の為に!」

 歌う様に高らかなテノールは、残酷無比な命令をジゼルに??セイレーンに下した。
 セイレーンの唇から紡がれる歌は、
空京の街を覆った青い光りとは比べ物に成らない程の黒い衝撃波となりホールを包み込む。
 黒い光りに押され契約者達は地面に強制的に磔に成った。

「撃て」
 アデーレと名乗るその声に指示され、
ホールを上から囲んでいた廊下と階段に現れた兵装達は、磔の契約者達に向かってマシンガンの一斉射撃を行う。
 戦場の音楽が鳴り響く中、契約者達の命を守ったのはホール全体と廊下を四方から遮断する巨大な氷結の壁だった。
「アブソリュート・ゼロ? まだそんな力が残っていたか」
 氷壁の僅かな隙間から歩いて来たアデーレは忌々しく落ちた黒髪を磨き上げられた上品な靴で払うが、
よく見れば既にアレクは力を使い果たし昏倒していた。
「ってあら、やっぱり限界かぁ。
 そうよねぇ、こんな状態でこんな一変にスキルを使って……ボロボロで……


 必死すぎて笑っちゃう!」
 口を抑えながらお姫様のようにコロコロと笑い出したアデーレは、
アレクの頭を踏み躙りながら自分のトレンチコートのポケットを探り、青い石を投げ捨てた。
「ご褒美をあげるわ。頑張ったわね、
 健気でお馬鹿な偽物の王子様」
 歪んでいるのはリップが丹念に塗られた唇だけで、フェイクの睫毛に縁取られた瞳はぴくりとも動かない。
 アデーレは正面へ向き直り、兵装達へ新たな命令を出した。
「いいわ、行きましょう。目的のものは手に入ったのだから」

 お伽噺から現れた王子様のように差し出されたその手を、セイレーンの白い指先は躊躇も無く受け取った。
 靴のヒールを成らしながら優雅に歩いて行く二人に、磔の契約者達はどうする事も出来無い。

 去って行く無骨な軍靴のマーチに不似合いな優美なテノールが入り混じった。
「ごめんなさぁい。こんな埃まみれの場所で歌えなんて無粋だったわね。
 こんな場所はあなたに相応しくないわ。私が最高のステージを用意してあげる。

 私の可愛いディーバ??セイレーン」 















 蒼空学園校長室。
 雅羅・サンダース三世は応接用のソファに座る事も無く、眉間に皺を寄せたまま腕組みし仁王立ちしている。
 待ち構えていた人物、蒼空学園現校長馬場 正子(ばんば・しょうこ)が扉を開けて現れると、
雅羅は正子が上着を掛けるよりも早く口を開いた。
「進展は?」「無い」
 即答されたその言葉に、雅羅は彼女らしくもなく、壁に拳を叩き付けた。
「なんで動いたら駄目なのよ!?」
 激昂する雅羅を前にして、正子の顔は反対に冷静だった。
「……その男、アデーレと名乗っていたそうだが、組織の隊員の証言と教導団の尽力から正体は割れておる。

 オスヴァルト・ゲーリングは間違いなく『一流の』死の商人。

 抱える顧客の力、そしてその総数も考えればおぬしら一般生徒が関わる事は罷(まか)り成らん」
「でも!」
「エリザベートは今回の事件を『子供の喧嘩』として片付けた。
 本来ならあの様に勝手に動いたおぬしらも纏めて殴らねばならぬところを、
『生徒同士の喧嘩に教師が介入する必要は無い』と、ただの一言で終わらせた。

 わしらは教師として、おぬしらを庇護する義務がある。
 おぬしらは生徒として立ち入れぬ場所がある。

 分水嶺を見極めよ雅羅・サンダース三世。
 もう一度言う、ここで動くことは罷り成らん」

「……わかり……ました……」
 校長として答える正子に、雅羅は生徒としての弁えを持った丁寧な口調で答えようとしている。
今の彼女にはそうでもしなければ冷静に会話するのすら難しい事なのだ。

「あの子達……大丈夫ですか?」
「百合園の娘らは達者にしておるそうだ。
 『妹』の方は重態だったようだが、あすこは姉らが献身的であるからな。問題無かろう。
 葦原の小娘はまだ幼かったのが幸いしておるようだ。
 パートナーを失った事を頭で理解しきれない分、ダメージもそれ程大きくは無いようだが……
 保護者がおらぬからな。ああなるまで放置してしまった責任も含め、今後の身の振り方も全て葦原側が一から面倒をみると言っておる。
 ……それで……我が校が預かっているあの者は?」
「二度とFワードを口にしないように目下訓練中です。
 念のために隣の部屋に連れてきました。
 ……でも多分寝てます。一日の半分以上そんな感じで、私達が『ついてる』必要も無いくらい大人しいものです」
「パートナーの事は?」
「言いました。反応は……驚く位冷静でした……。

 ――分からないわ正子。
 あそこまで精神状態が悪化した人間が、パートナーを失っても『まとも』でいられるなんて。
 死んでしまったっておかしくないのに!」

「うむ。これで逆に合点がいった」
「え?」
「パートナーを失った人間を支えられるとしたら、それはその人間を支える別の存在が有ると言う事。
 あの男、もう一人……

 いや、新たに契約を結んでおるな。そしてその相手は恐らく――


 ジゼル・パルテノペー」




 月明かりしか入って来ない部屋、
碌に寛ぐ事も出来ないようなパイプ椅子の上でアレクは母の腕に抱かれる赤子のように安らかに眠っている。

 緩く握られた指の間で、海よりも青い光りが柔らかに輝いていた。




担当マスターより

▼担当マスター

東安曇

▼マスターコメント

 カンパニュラの花言葉は感謝〜。皆様ありがとうございました。
 一年くらい経ったので、【夢見月のアクアマリン】と【夏初月のダイヤモンド】を新たに書き直すつもりで全力で追突しながら書きました。
 話はあと一回続きます。最後迄お付き合い頂ければ幸いです。

※アレク隊長から勇敢なる義勇兵の皆様へお約束とお願い※
「どばるだーん義勇兵の皆さん。18歳以下は皆俺の妹、アレクニーサンだよ。
 これから皆にお願いがあるから良く聞いてね。いやほら…………聞けよ。
 さて。ここ数回頻発していたらしいんだが、GMが頂いたアクションで、それを実現可能にする為に必要な武器・スキル・アイテムがセットされていない案件が何度か見られた。
 東のリアクションはその殆どが具体的名称が出て来ないイイ加減なモンだが、判定の基準はきちんとそのセットを行った上で『○○を使用し××する』とアクションに記入。それで初めて描写可能になる訳だ。
 まぁこれは単純に忘れてしまったり間違ってしまったりで起こりうる事でもあるだろう。それじゃ勿体ないよな。
 つー訳で良い子はアクションを送る前に再度の確認を怠らない様に。悪い子はそこへ跪け。.44をマグナムを脳天にブチ込んでやる。
 それと俺とトゥリンの台詞は、正直言うとキアラの言う通り品性下劣で人格疑われそうな侮蔑表現だらけだ。
 お友達にドン引きされたり殺されたく無かったら使うなよ。……いやこれフリじゃねーからな。
 話以上だ。妹候補以外は帰っていいぞ。ふぶぁら! どう”ぃじゃにゃ!」
 

【以下、翻訳対訳意訳蒟蒻】
 作中NPCが喋る外国言は英語以外大体該当言語へ(機械さんが)翻訳しています。
 しかしながら再び機械に突っ込んでも文法間違いとスラング過多で元の形には戻りません。
 そもそも英語力は火星までぶっ飛ばしたので、かなり怪しいです。
 と言う訳で下に日本語にしてみて載せてみます、です。

●幼女に無反動砲を撃たせるアレ
「ねえアリクス! どんだけ待たせんの!」
「あいつは演説が大好きで、それがストレス発散なんだよ。好きにさせてやれ。」
「うー」頬を膨らませて座り込むトゥリンに向かって、アレクは何かを思い出し口に出した。
「あーところで……あれ有る?」「何だよ?」

●吠えるギャルとキレる隊長
「あちゃー。やっちゃったよ器物損壊だこりゃ」
「signore alexander milosevic!!
 貴方イカれてる! どうかしてるっスよ!!」
『うるせ黙れ』
「うわ。つくづく品性下劣な男っスね。何度でも言ってやるっスよ。
 この イカレポンチの サイコ野郎」
『…………。
 お前は傲慢で規律を乱す。
 其処へ跪け』
「ハァ? 何言ってるんだか全?然分からないスね!」
『跪け!!』
(※1・敬称がついているのは怒った時の慇懃無礼な言い方です。あと名前が違うのは発音が違うだけです)

●ロリ バーサス ロリコン
「(笑い過ぎて)吐きそう」
「おー 似合うね。何この可愛いの」

●銃を顎にゴリゴリしている所の
「冗談だよマジになるなって! ティヒヒ」

●ヤンホモに戦慄する人達
「お前マジでイカれてる! どうかしてる!
 もう限界だ! お前のやる事はホントうんざりなんだよ!」
「ああ、もう(どうでも)いいわ!
 ねえ、大丈夫? アリクス! 聞こえてる!?」
「ああどうしよう! どうしよう! 何言えばいい? このまま放っといたら彼、人格崩壊するわ!」

●記憶の台詞。※アレクはこの頃、妹と喧嘩中でした。
「……ミリツァ? からかうなよ!? ミリツァ何処だ?
 出てこいよ! 気にするなよ、俺怒ってないから、大丈夫だって!」
 残りは全部「no」です。

●揺さぶりじゃなくて言葉ぜ……
「ねぇ、何を期待してるんですか。もう手遅れなんですよ!
 ああ、嘘でしょう? まさか! ふふふ あなたまさか神がお救い下さるとでも? それとも彼女が?
 何をしてるんです! 義務を果たしなさい! 世界に復讐するんですよ!
 剣を取って……あの娘を、あなたの大切なミリツァを殺した全てに復讐するんですよ!
 殺しなさい!!」

●デレデレなお別れの挨拶
「またな東雲。幸運を」

●「さよなら」への返し。というかそのまんま。
「さよならカガチ!」

●ジゼルに刃を向けた所。
「お前が死ねば、花は咲くんだ」