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第三回葦原明倫館御前試合

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第三回葦原明倫館御前試合

リアクション

 ルカルカの勝利が確定した瞬間、観客席の夏侯 淵が試合場へ飛び込んだ。
「よくやった、ルカ!!」
「ありがとう!」
「おめでとう!」
 コードも釣られて抱きつきそうになるが、そこはグッと堪える。ルカルカと淵は嬉しさの余り、互いに互いの頭を撫で、共に髪の毛がわやくちゃになった。
「やれやれ。せっかく特別メニューを組んだんだがな」
 ダリル・ガイザックがふっと笑う。
「特別メニュー? それは強くなれるのか?」
 反応したのはコードの方だった。
「これはルカ専用だが、お前用に組めば……」
「ぜひ頼む!」
 あれは死ぬな、と淵はルカルカに囁いた。死ぬね、とルカルカも頷いた。ダリルのメニューは、限界の向こう側を見せてくれる代物なのだ。確かに実力はつくだろうが、正直、二度はやりたいとは思わない。
 しかし、せっかくのやる気に水を注すことはないだろうと二人は思った。――これも仲間になる儀式のようなものなのだから。

*   *   *


「どうだった?」
 柊 恭也は、閉会式を抜け出し、待ち合わせ場所へ向かった。笠置 生駒とシーニー・ポータートルが、待ちきれぬように立ち上がる。
「結構、儲かったよ」
「あんさんのお陰や」
 恭也は煙草に火をつけ、ふうと煙を吐き出した。
「人聞きの悪いこと、言わないでくれ。俺は何もしてないぞ」
 確かに選手の情報を流したが、審判として不正は一切行っていない。そんなことをしてバレたら最後、パートナー共々、御前試合に出入り禁止となってしまう。
「せやな。なんもしとらんな。やったら、礼もせんでええかな」
「待て。貰えるもんは貰う」
「最初からそう言えばいいのに」
 生駒はケラケラと笑って、荷物から分厚い封筒を取り出すと、テープで留められた口を無造作に開けた。
「――あれ?」
「どうした?」
「これ……」
 四つの目が、生駒の手に注がれる。それは切った新聞紙の束だった。
「偽物やん!?」
「どういうことだ!?」
「ワタシが訊きたいよ!!」
 友人同士の少額や食事を奢るといった些細な話ならともかく、本格的な賭博は、御前試合では当然禁止されていた。だが、世の中には何であれ裏がある。
 この御前試合でも、裏組織が賭博を行っていた。
 手作りのメモに連絡先と、試合数、賭ける選手の名前を書き、ジュースの売り子として潜り込んでいる下っ端に渡す。紙はシークレットペーパーなので時間が経てば土に還るし、水に浸せばすぐ溶ける。五試合終わるごとに、その下っ端が配当金を渡してくれる仕組みになっていた。
 三回戦まではすぐに金をくれたが、段々金額が大きくなったため、四回戦からは外で受け渡しになっていた。この時点でも、生駒たちはちゃんと全額を受け取っていたのだ。
 ところが決勝が終わり、最後の金を受け取ってみると――中は新聞紙だった、というわけだ。
「――やられた」
 恭也は舌打ちした。
「詐欺や! つ、捕まえんと!」
「相手はどこの誰だ?」
「……知らん。下っ端は、ええと、何となく顔覚えとるけど」
「明倫館に訴えられない?」
「賭博行為自体、禁止されてるんだ。おまえらも処罰されるぞ」
 生駒もシーニーも、ぐっと言葉に詰まった。
「……ま、しょうがないよな」
 恭也の腹は痛んでいない――こっそり賭けるつもりでいたのだが、バレたときのデメリットを考えてやめた――ので、諦めるのも楽だった。問題は生駒とシーニーで、天御柱学院に帰る交通費も注ぎこんでしまっていた。
「このままじゃ帰れない!」
「奴をとっ捕まえるで!」
「え? おい、マジで?」
 二人は恭也を置いて、唯一の手がかりである下っ端――グレゴリーという名であることを、シーニーが思い出した――を探して駆けずり回った。結局見つからず、ジョージ・ピテクスに借金して帰ったということである。

*   *   *


優勝  ルカルカ・ルー(シャンバラ教導団)
準優勝 レキ・フォートアウフ(百合園女学院)
第三位 グレゴワール・ド・ギー(イルミンスール魔法学校)

「皆の者、ご苦労であったでありんす。今年も良い試合が見られて、わっちは満足でありんす。――明倫館の生徒は、後で補習を行うのでそのつもりでいるように」
 ひいっ、と一部から悲鳴が上がった。これで三年連続、明倫館の生徒から上位に入賞した者はいないことになる。取り敢えず、ガス抜きに誰かを人身御供に出そうと話し合い、本人の与り知らぬところで紫月 唯斗にその役が当てられた。
「――さて」
と、ハイナは手にしていた扇子をぱちりと閉じた。その音で、参加者の背筋が一斉に伸びる。
「試合前に通達したように、この御前試合は『妖怪の山』への遠征部隊編成試験を兼ねていたでありんす。上位三名は無論、他の者で我こそはと思う者は後で申し込むように。試合結果を参考にした上で、編成するでありんすよ」
 その言葉に、全員の背筋が伸びる。
 そう、これはただの試合ではない。
「妖怪の山」で何が起きているのか。
「妖怪の山」に何が待つのか。
 ――漁火は。ユリンは。
 そして、「神」とは……?
 謎を解くのはあなた――かもしれない。

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

お待たせしました。第三回葦原明倫館御前試合リアクションをお届けします。
試合結果は本編をご覧いただくとして、毎度のことですがご説明しますと、先にじゃんけんで勝負を決め、それに合わせて戦闘シーンを書いています。防御しているだけなのに何で勝ってんだ? と思うこともあるかもしれませんが、そういう理由からです。
また、試合の順番はほぼランダムです。いきなりパートナー同士がぶつからないように、またいつも後半での試合になるような人は前に持って来てみました。従って、試合結果はほぼ完全に運だと思ってください。

延々試合のシーンを書くのはちょっとキツイですが、じゃんけんで既に結果が分かっているため、悩むことがない利点があります。一方で「三年連続で……」という人もいて、勝たせてあげたいと何度思ったことか……。

仁科耀助は数合わせでしたので、一回ぐらい平太に勝たせてやろうと、ああいうことになりました。その後は、これも全て運です。平太の不戦敗も、じゃんけんの結果負けてしまったので、ああいう形を取りました。
あそこまで来たら、いっそ優勝させてやりたい誘惑にも駆られたのですが、あっさりと負け。もっとも平太の体が持たないという欠点があることを書けて、これはこれで良かったと思っています。

さて次回の「妖怪の山(タイトル未定)」ですが、ガイドやリアクションにも書いたように、今回の上位三名及びそのパートナーさんたちは、北門平太もしくは真田佐保&丹羽匡壱のコンビのどちらかと優先的に(つまり最後まで一緒にいるという前提で)行動できます。
もちろん強制ではありませんので、単独で行動したければ、その限りではありません。また、入賞者以外のPCさんたちもアクション次第でどのような行動も可能です。上位入賞者以外が妖怪の山に行けないというわけではありませんので、どうぞお気軽にご参加ください。
詳しいことは次回のガイドに書きますが、平太は何でも願い事を叶えてくれる神さまを目指し、佐保たちは妖怪の山の探索をすることになるでしょう。それぞれ行動が別になるので、どちらにするか予め考えておくのもいいかもしれません。

それではまた、お会いしましょう。