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狂乱せし騎士と魔女を救え!

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狂乱せし騎士と魔女を救え!

リアクション

「小童共! 数をなしてその程度か! 片腹痛い!!」
 空に風穴を開けんばかりの拳圧を無秩序に振り抜き、はらい、かざす。
 拳聖、そして蒼空学園第三代校長兼理事長である正子。
 エリザベートとは逆方向から巨人の足止め行っていた。
 プラスで。
「フハハハ! 我が名はごほごほっ!」
「に、兄さん? どうしたんですか?」
「ハデス様?」
「ひ、久々にこんな動いたから、肺に、きた」
 さながらロッククライミング並のハードさの巨人登りにヘタれたるはドクター・ハデス(どくたー・はです)
 そのパートナーである高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は健在である。
 仕方ないのである。彼は天才科学者なのだから、仕方ないのである。
「き、気を取り直して……フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!」
「そっちに数体モンスターがいったぞ」
 ハデスと愉快な仲間たちの喜劇を尻目にモンスターを次々と殴り伏せていた正子の声。
 その言う通り、モンスターが三人をターゲットしていた。
「くくく! モンスターまで出せるとは、ますます配下にしたくなったぞ! 咲耶!アルテミス! この化け物を操っている者を倒し、化け物を我らオリュンポスの手駒とするのだ!」
「了解しました、ハデス様! 騎士として、こんな化け物、放っておくことはできません!」
「手駒はともかく、この怪物が世界樹に辿り着いたら大変です! すぐにやっつけましょう!」
 それぞれ微妙にニュアンスが違うがこの巨人の足止めには十分な戦力だった。
 襲い来るモンスターたちをなぎ倒して進む四人。
 そこに現れる騎士を模ったシルエットの群れ。
「ほう、先ほどまでのモンスターとは訳が違う気配。面白い、かかってこい!」
「同じ騎士として、負けられません」
「……あそこ、あそこから何か感じます」
 咲耶が黒光りする魔方陣を感じ取り、ハデスに報告する。
「ははーん。この灰色でトロピカルな脳細胞を持つ俺の脳が告げる。あれが弱点だ、と。あつまりあそこを狙えば」
「フンッ!!」
「てやぁー!!」
 弱点なんてなんのその! 騎シルエットにまったく怯まず叩きつける正子! 斬りつけるアルテミス!
 正に小技など不要、大技で来い!と言わんばかりの剣筋と拳筋が猛威を振るう。
「……前線はあの二人に任せて、俺たちはあそこを攻撃するか」
「……今ならささっといけそうですね。援護するので、兄さん、よろしくお願いします」
「お、おう」
 いいところを全て持ってかれた二人はそそくさと行動し、あっさり弱点への攻撃に成功。巨人の動きが鈍重になる。
「むっ? 急に遅くなったか? 彼奴らもいなくなりおって」
「ですが今がチャンスです! 頭頂部へ向いましょう!」
「足止めも出来て一石二鳥。行くぞっ!」
「ハデス様! 行きましょう!」
「あ、ああ。なんか、あんなにいきいきしてるアルテミス久々に見たな……」
「私もちょっと、驚きです。でも今は急ぎましょう」
 今度手合わせでもどうか、是非お願いします、などとやりとりする正子とアルテミス。
 その後方では不に落ちないの顔をしたハデスと苦笑する咲耶がいた。
 
「さーってと、そろそろ行かせてもらうぜ!」
 巨人の前に飛ぶはカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)。一歩も引かず、威風堂々と空に滞留する。
「でかいだけじゃ、これ以上の前進はできないぜ?」
 笑うカルキノスの後ろからは大津波が押し寄せる。
 巨人を流し倒すことはできないものの進行もさせない、『群青の覆い手』。
 その大波を割るように岩が隆起する。
 尖った岩が行く手を阻む、『グラウンドストライク』。
 水と岩の間を縫って急成長をし、巨人に絡みつく植物たち。
 巨人の膝までの自由を奪い殺す、『エバーグリーン』。
「そしてこれが、ダメ押しだぁ!」
 カルキノスの体が、そうあるであろう、原始の姿に、原始のドラゴンの姿へと変貌していく。
 波、岩、植物、そしてドラゴン。
 怒涛の四重奏をもって、巨人に真っ向からぶちあたるカルキノス。
 そう彼は、まさに。
「私の座席、ですわぁ」
 最強の、【エリザベートの座席】だった。後に座られるのは言うまでもない。