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狂乱せし騎士と魔女を救え!

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狂乱せし騎士と魔女を救え!

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 一方、左側に逃げた野盗を追っていた五人。こちらも野盗を追い詰めつつあった。
「さっさと諦めてくれると、ありがたいんだけれどね」
「頑張り屋さんどすなぁ」
 前を必死で逃げる野盗を見つつ声を漏らすルゥと知流。
「でももうとっ捕まえるだけよ。そしたらすぐに引き返すわ」
「そうだね」
「わたくしが飛べればよかったのですが……」
「仕方ないよ。まさか瘴気によって飛べない範囲が、こんなに広いなんて思わなかったもの」
 アデリーヌが【我は纏う無垢の翼】を発動したとき、発動したものの飛ぶことはできなかった。
 巨人の出す瘴気が想像以上広範囲なことが原因だった。
「……」
「綾原さん、どうかした?」
 急に大人しくなったさゆみに質問する雅羅。
「い、いえね? 私って極度の方向音痴で多分みんなと一緒じゃないと迷っちゃうの」
「そうなの?」
「それで、雅羅も結構不幸体質じゃない? だからもしこのメンバーにルゥさんたちがいなかったら詰んでたかもなーってちょっと思って」
「……」
 言われて見るとという顔つきになる雅羅。その後ゆっくりとルゥを見る。
「な、なによ?」
「下手をすると、あなただけが頼りだわ。よろしくお願いね」
「よろしくお願いします」
「そんなことをお願いされても、ねぇ……」
 変なところで切り札になったルゥもこれには困惑。
「あらぁ、あの人、逃げるのをやめましたなぁ」
 知流の言う通り。逃げていたはずの野盗が立ち止まり、こちらを見てニヤニヤ笑っている。
「どうしたのでしょう? 大人しく指輪を返してくれるのでしょうか?」
「まずありえないわね。あーいう輩がニヤニヤ笑っているときは、大抵……」
 五人が戦闘態勢を取る。その読みは見事的中。
 辺りに潜んでいたと思われる野盗の仲間が五人を取り囲んでいた。
「保険をうっといてよかったぜぇ。さあ、べっぴんがたとの追いかけっこもこれまでだ。お前ら! 畳んじまえ!」
 野盗の掛け声を合図に仲間たちが五人に襲い掛かる。
「畳んじまえって、久々に聞いたわ。知流」
「よしなに〜」
 ルゥは【プロボーク】を使い注意を自分に引きつける。
 野盗たちの攻撃が来る前に【ソードプレイ】の圧倒的剣技でたやすく迎撃。
「おまけどすえ〜」
 知流からもダメ押しと言わんばかりに荒れ狂う炎、【ファイアーストーム】が放たれる。
「殺しはしないけど、それなりに痛い目にあわなきゃね!」
 ルゥたちの先制攻撃にたじろんでいた敵に悠々と近づき【スタンクラッシュ】で次々と平伏させるさゆみ。
「指輪を、大切な指輪を返してください」
 痛烈な光と共に仇名すものを討つ【我は射す光の閃刃】で的確に相手を気絶させるアデリーヌ。
 即席にも関わらずそのチームワークは万全で、
 野盗たちはやられにきたのかとツッコみたくなるほど無様に倒れていった。
「さあ、大人しくしなさいって」
「あいつ、仲間を見捨てて逃げる気!?」
「はっ! どうせやられると思ってたんでな! ズラからしてもらうぜ!」
 既に逃げ始めているため、このままでは逃げ切られてしまう。
「私が飛べれば……!?」
「どうしよう、ルゥさん!」
「平気よ。だって彼女がいるもの」
「えっ……あ!」
 四人を振り返りながら逃げる野盗の前。
 そこには既に雅羅が武器を構えて待ち構えていた。そして、思い切り。
「成敗ってきゃぁ!」
 蹴り上げた脚が、男の足と足の間にすべりこみ。

キーーーーン!!!!!!

 ホームランと見まごう程の金的攻撃に早代わりしたのだった。
 野盗は白い泡を吹きながらその場に倒れこんだ。
「……うわぁ」
「ま、雅羅って意外と大胆……」
「ち、違うの! これは足が滑っただけで別に意図したことじゃないの!」
 ただでは終わらない雅羅・サンダース三世。恐るべし。
「はて、これがその指輪どすかなぁ?」
「きっとそうですよ。……綺麗です」
 いささかハプニングはあったものの、無事に指輪を奪還した五人は一足先に巨人へと踵を返した。
 ……野盗よ、南無。