リアクション
しばらくした後。
医務室のドアがノックされる。
「どうぞ。開いてるよ」
ドア越しにアヴドーチカが言うと、ややあって入って若い男の声がする。
「失礼します」
その声がした後、入ってきたのは蓮華のパートナーであるスティンガーだった。
「待ってたよ。ま、座りな」
礼を言ってスティンガーはデスクの前に置かれた患者用の椅子へと腰掛ける。
といっても、今回の彼は診察を受けにきたわけではないが。
「まず、おまえさんのパートナーなら今はまだ大丈夫だ。念の為に隣の処置室に寝かしてるけど、もうすぐ復帰できるだろう」
ほっとした様子のスティンガー。
だが、アヴドーチカはすぐに説明を続けた。
「けどね、このままあんな機体に乗せて、あんな薬物を使わせ続ければ……遠からずあの子は駄目になる。あの子にそれをそれを言った所で、「団長の為になるなら構わない」って言うだろうからね。だから、おまえさんに言うことにした」
ある程度予想していたことだったのか、スティンガーは動揺することなく耳を傾けている。
「まあ、あの子に限ったことじゃないけどね。他のパイロットにだってあんな機体はできれば使ってほしくない。医者として、あの機体には賛成しかねるところがあるんだよ。あの薬物の補充が必要になったとして、一応技術的に調合は可能だけど、できればしたくないしね」
二度に渡り搭乗し、メインパイロットである蓮華ほどではないにしろ、実際にその負荷を味わったスティンガー。
嫌というほど盾竜という機体の危険性を知っている一方で、蓮華の思いも知っている彼は板挟みになっているのだろう。
しばし彼は黙り込む。
そんな彼の心境を察してか、アヴドーチカは静かに言うのだった。
「おまえさんが支えてやりな。あの子、ともすれば自分が砕けるまで突っ走ってしまうタイプのようにも思えるからね。もちろん、私も医者としてできる限りのサポートはする。けど、やっぱり一番支えてやれるのは契約相手のおまえさんだろう?」