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とある魔法使いの灰撒き騒動

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とある魔法使いの灰撒き騒動

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■ヒラニプラ

【What do you need to be addressed】
 
 ヒラニプラで暴れていると言う、偽アッシュをどうにかしてほしい! と言う事でイルミンスールから帰って来た金元 ななな(かねもと・ななな)は現場へと急行する。
 現場はヒラニプラの中心から離れた軍の施設、武器やイコンを開発する研究棟の3階。周囲では、偽アッシュが危険なためか他の人が入らないように封鎖止めがされていた。
 一般人が入らないように見張っている一人の男性に話を付け、研究棟に入ったのはよかったのだが……。

「まったく! 研究室に一人残ってるなんて聞いてないよ!!」
 
 言われた研究所は爆発が起こったかのように壁は焦げて、所狭しと積み上げられていた紙の資料は炎で燃えている物もあった。
 部屋の隅で怯えていた女子学生をかばう様にリリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)が【召喚獣:不滅兵団】を召喚し、人数が座れるぐらいのスペースを確保した後、なななは女子学生に向けて一言言った。

「ごめんなさい。どうしてもあのロボットを完成させたかったのですが……」
 
 あれロボットだったのね。と言いたげな眼で不滅兵団の隙間からリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が暴れている鎧姿の偽アッシュ:胴を見た。

「ふはははは! 鎧なんざ俺様だけで十分だ!」
 
 そう言いながら、偽アッシュはララ・サーズデイ(らら・さーずでい)と闘っていた。周りには無残に壊されたロボットの試作品が転がっている。ララは【ペガサス:ヴァンドール】に乗り、時には空を。時には床に落ちている壊されたロボットのパーツを拾い偽アッシュへ攻撃を仕掛ける。

「それにヒラニプラが危ないって言うのに、なんで教導団の人達は他の場所に行くのかなぁ!」
 
 なななが地団駄を踏みながら、悔しがってはいるが誰も止めようとはしなかった。
 リリは壁の真ん中で持参した水筒に入っているお茶を飲んで鎧とララの動きを観察している。
 女子学生はなななの怒りにどうする事も出来ずにおろおろとするばかりだ。
 ガシャン! と言う音と共に鎧から灰を吹きかけられたララは、一旦体勢を立て直そうと身を引きリリの隣へとペガサスごと降り立った。

「駄目だな。あの鎧は、斬撃に微小の傷はつくがそれがダメージには繋がらない。穂先の通る隙間も無さそうだ」

 そう言いながらララは顔に付けていたポータラカマスクを外すと、軽く頭を振った。金色の巻き毛から灰の一部が落ちると風に漂いながらリリの飲んでいた水筒へと吸い込まれる。
 水筒に吸いこまれた灰を見つめた後に、リリは片眉を上げてララを見つめたがララは気が付いていないようだった。
 
「そんな壁などぶち壊してやるわ!」

 偽アッシュは、ララが不滅兵団の奥に引っ込んだのを見ると高笑いをしながら壁となっている不滅兵団に向けてタックルを仕掛けはじめる。
 不滅兵団の甲冑と偽アッシュの甲冑の金属音が室内に響き始めると、リリは立ちあがりララの乗っているペガサスの後方に跨った。

「そこの少女よ、ここから動くでないぞ」

 リリはそう言うと女子学生を中心に今のスペースよりも一回り小さい円状に不滅兵団を召喚する。

「……はい。私はここで応援しかできませんが頑張って下さい」

 不滅兵団に囲まれて声だけだが女子生徒はリリ達に向けて応援した。

「ところでこの状況を打破するような作戦はあるの?」
 
 ペガサスに跨っているリリとララを見上げながら、リカインがリリに作戦を聞いてみる。

「他の隙間は無いが、唯一隙間がある場所があるではないか」
「ふむ……あの鎧の面……ブレスだったか。あそこから灰が吹くのを見れたからな」
 
 ララがリリの言葉にフォローを入れる。

「それなら……私とななな君で鎧を引きつけます。その間にリリ君とララ君で鎧に攻撃をお願いします」
「お願いされるまでもない。リリからもフォローを頼もうと思っていた所なのだよ」
 
 リカインの言葉を聞いてリリはニヤリと笑った。

「えっ……あの鎧を叩いていいの?」
 
 まだ地団駄を踏んでいたなななはリカインの発言を聞いて、足を止めてリリ達の方を振り返った。

「そうよ。教導団が誰一人来なかったその怒りをあの鎧にぶつけるのよ!」
 
 リカインはバッグから【伝説のハリセン】を取り出すとなななに渡した。