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理不尽世界のキリングタイム ―デブリーフィング―

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理不尽世界のキリングタイム ―デブリーフィング―

リアクション

「ねえ、質問いいかなぁ?」
 フラット・クライベル(ふらっと・くらいべる)の言葉に、なななは「どうぞ」と答えた。
「フラット思ったんだけどぉ、研究所に一番被害与えたのってなななだよねぇ? 最初に恐怖で言う事聞かせてフラット達をけしかけたんだからさぁ。まあ、気付けなかったのは鈍いフラット達が悪いのは解るけどねぇ」
「さて、私は任務と言っただけ、というのは先ほど言ったはずですが?」
「でもでもぉ、こーんな理不尽な事をしてばっかりで何の被害も無いっておいしすぎるお話じゃないかなぁ? さっきもあったけどぉ、『全員自害すべき』っていうならなななもしないと反逆者じゃないのぉ?」
 フラットがなななに詰め寄る。その表情は笑顔であるが、何処か異質なものを感じる。

(あーあ、フラット相当怒ってるなー)
 その様子に気付いたミリー・朱沈(みりー・ちゅーしぇん)が愉しそうに笑う。
 実際、フラットは怒っていた。任務中、『失礼します』と扉をノックしただけで爆死させられたのが頭にきているようである。実際にあの任務は頭に来ることだらけなのだが。
(あれだと詰め寄るだけじゃ終わらないなぁ、きっと)
 何かを感じ取ったミリーは、少しばかり後ろへと下がる。そして、今自分が持っている物を確認した。

「貴方達が自害する、というのであれば考えましょうか。尤も私は貴方達を処刑する立場なので、手立てを持っているのは私だけ。私が先に自害してしまっては、貴方達が自害する手段は苦痛を伴う物しか残らないではありませんか」
 ななながフラットに笑みで返す。自害する気など全くない、と誰もが感じ取れていた。
「ふぅん……でも安心していいよぉ?」
 そう言うと、フラットは任務中に獲得していたナイフを数本取り出した。
「手立てならフラットにもあるからねぇ」
 そう言うと同時に、フラットはナイフを投げる。最初に三本、左右と前。それはなななを狙っていなかった。
 狙ったのはその後の数本。こちらは真っ直ぐなななへと向っている。
 最初のナイフが炸裂する。煙が巻き上がり、なななの姿が覆われてしまう。
 続いてのナイフが炸裂した。煙は更に深くなり、完全になななの姿は見えなくなる。
 それでもお構いなしにフラットはナイフを投げた。周囲の事など気にしていない様子に、他の者は下がって距離を取る。
「あーあ、フラットえげつないなぁ」
 そう言いつつ愉しそうに笑うミリーは、同様に任務中獲得したライフルを構える。深い煙の中、僅かに影の様な物がスコープを通して見えた。
 それを狙い、引き金を絞る。一発で終わらず、弾倉が無くなるまで。
「ミリー、どぉ?」
 ナイフが無くなったのか、フラットがミリーに振り返って問いかける。
「んー……煙でよくわかんないなぁ。当たったとは思うんだけど」
 手ごたえをあまり感じないせいか、ミリーが首を傾げる。
「よぉし! ここでダメ押しぃッ!」
 その時、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)オリバー・ホフマン(おりばー・ほふまん)が飛び出した。
「甚五郎、おまえ一体何する気だ?」
 よく解らず飛び出したらしいオリバーに問われると、甚五郎は笑みを浮かべた。
「くっくっく……儂はすっかり忘れていた……残機があるのが儂等だけだと決まってないという事をな!」
 そう言うと、甚五郎も獲得して余っていた爆弾を取り出す。
「この場にいるという事は上官殿、いやなななにも残機は存在するんだろうよぉッ!」
 そして爆弾を投げつけた。
 爆弾はナイフよりも大きな爆風を巻き上げ、なななを包み込んだ。
 危うく何人か巻き込みかけたが、逃げていた為ギリギリで避けた様である。ちっ。
「……流石にやったか?」
 オリバーが爆風を見て呟いた。おいこらフラグ立てるな。

「気が済みましたか?」

 フラグが立ったせいで案の定「なん……だ……と……!」だった。要約するとなななは無傷であった。
「まあ、あの程度で終わるわけないよね……っとぉ!」
 ミリーはライフルを捨てると手斧を取出し、一気になななに駆け寄ると振り下ろす。だが刃はなななに届かず、金属音を響かせ弾かれてしまう。
 ならば、と手斧を捨てると奥の手、武器界のエクスカリバーことバールを振り下ろすが、こちらも弾かれてしまった。どうやらなななの周囲には見えない壁のような物があるようであった。
「私への攻撃は無駄ですよ。こんな事もあろうかと攻撃に対して対策を取らせていただきました。さて、貴方方のその行為、私への反逆と受け取ります」
 そう言うとなななはボタンを取り出し、押す。
「残念だねぇ、出来ればなななお姉さんを仕留めたかったねぇミリー?」
「そうだねぇフラット。まあ、死ぬ経験できたのは良かったかな?」
 そう言ってフラットとミリーが愉快そうに笑う。直後、ミリー達と甚五郎達の身体は爆散した。ミリー達は残機は無い為、ガメオベラだ。
「まさかオラ達も爆破させられるとは……おい、拙くないか甚五郎よ?」
 残機が辛うじて残っていた為、戻ってこれたオリバーが甚五郎に耳打ちする。
「拙い。非常に拙いぞこれは」
 甚五郎の頬に冷たい物が伝う。
「さて、次は貴方達です。私にも残機がある、と狙ってきたその気概、積極的に任務に挑んでいた姿勢も気に入りました。それに免じて殺すのは最後にしてあげましょう。それでは貴方の意見を聞きましょうか」
「結局殺されるのか儂は……ははは……」
 なななにそう言われ、甚五郎は乾いた笑い声を漏らす。
「……まあ、任務失敗の原因として考えられる事だったな。先のVTR……あれも一体いつの間に撮っていたのやら気になるところだがまあいい。それで所々『お前は契約者だろ?』と容疑をかけて『ZAPZAP』言いながら処刑している輩がいただろう?  彼等のせいで任務は失敗したと言えるのではないだろうか?」
「ほう、何故ですか?」
「彼等が処刑した事で最後までたどり着けていない者が居る。その者らが居れば任務が成功した可能性はあったのではないかと推測できる。それに、だ。処刑された者が仮に『契約者』だったとしよう。その者をあっさりと何でも無い武器で処刑したり、背後を取ってみたり出来るモノだろうか? それも、何回も、何人もだ。答えは否。彼等こそが、任務失敗の為の何者かが送り込んだ反逆者であり、彼等こそが契約者であると儂等は考える。どうだ?」
「ふむふむ」となななは言いながら、何処かからか持ってきたホワイトボードに『ZAPプレイに走った奴らが原因』と記入する。
「成程、参考になりました。容疑者甚五郎、他に何かありますか?」
「いや、儂は無い」
 そう言って甚五郎は頷く。その際『問題はなななにもあるがな』と聞こえない程小さい声で呟いた。
「そうですか……ところで容疑者甚五郎」
「なんだ?」
「さっき殺すのは最後と言いましたね。すまん、ありゃ嘘だ」
「……は?」
 そう言うとなななはまたボタンを押した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 甚五郎の悲鳴が木霊し、同時に体が爆散する。今度こそガメオベラである。
「じ、甚五郎!?」
 散った甚五郎にオリバーが呼びかけるが、残ったのは最早塵芥だけである。
「はい次、容疑者オリバーですよ」
「お、オラも何か言わないといけないのか!?」
 オリバーは考える様に頭を抱えるが、ポツリポツリと話し出す。
「……任務失敗の原因、って事だが……そもそも『任務』ってもんが明確になってない以上、失敗も成功も無いんだよ。つまり何が言いたいかっていうと……今回の件は無かった事になる訳だ。確かに悲しい事件が一つ起こっちまってる。だがな、過ちを気に病む必要はねぇ。ただ認めて次の糧にすればいいのさ。そうだろ?」
「遺言はそれで充分ですか?」
 そう言ってななながボタンに手をかける。
「ちょっと待て! そ、そうだな……あえて誰が悪いって言うなら……」
『任務について色々と隠し事が多過ぎたななな』と言おうとしてオリバーは言葉を止める。
「誰が悪いというなら?」
 何を言うべきか悩むオリバーに、ななながボタンをちらつかせる。悩みつつも、オリバーは口を開いた。
「……ネタ切れだからって殺しにかかるマスt」
「面白い事を言いますね。気に入った、今すぐ殺してあげましょう」
 ボタンを押され、悲鳴を上げる間もなくオリバーが散った。残機はもう無い。