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殺人鬼『切り裂きジャック』

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殺人鬼『切り裂きジャック』

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 時見 のるん(ときみ・のるん)は路地裏でしゃがみこみ、誰かと連絡をとっていた。
 路地裏にいるのは、国軍や空京警察に見つかれば補導されかねないからである。
 念のために【賢狼】を発動し、周囲を警戒。さらに橙 小花(ちぇん・しゃおふぁ)ジャンヌ・ハミルトン(じゃんぬ・はみるとん)にも警戒させている。
 さて、のるんが連絡をとっている人物だが。
『のるん、お前何やってるんだ。夜中に寮をぬけだして。皆心配するぞ』
「【稲荷様の使者】を身代わりで置いて来てるから大丈夫だよ! それよりアレン! はやく調べてよ、『切り裂きジャック』について」
『それくらい出る前に調べておけよ……。仕方ない。少し待ってろ』
 寮で勉強中だったアレン・オルブライト(あれん・おるぶらいと)は文句を言いながらも【博識】を利用して、ジャックについて調べる。調査はすぐ終わったようで、のるんの携帯にすぐ連絡がきた。
『……今ジャックを捕まえようとしている人達がネットに情報バラまいてたよ。一応メールで送るから。まぁ気をつけろよ。じゃ』
 しばらくすると、のるんの携帯にメールが届く。
「えーと、ジャックの名前はりん。女の子。外見からして12、3歳。のるんちゃんと同じじゃん! 武器はワイヤーとかナイフとか。外見は髪が白、目が赤くて、肌も白い。そして……」
 そこで、のるんの言葉を、小花が遮った。
「パーカー、ズボン、タクティカルベスト、それも全て、白。見た目は目を除き、全て白、ですか?」
「わぁ、小花すごい! 何で分かったの!? 心読めるの!?」
 のるんは驚くが、小花とジャンヌの目線を辿り、
「あ、成る程。いたの」
 と呟く。
 彼女達の目線の先には、殺人鬼少女、りんがふらふらと歩いて来ていた。
 りんはのるん達に気づいたようで、
「うん? んー……、疲れたからいいや……ってうわっ!」
 りんの言葉は遮られる。ジャンヌが【ハルバード】を振りかぶっていたからだ。
「【チェインスマイト】!」
 路地裏は狭いため、武器を横に振るうことはできない。ジャンヌは縦方向に思い切りハルバードを振るう。
 りんはそれを最小限の動きで、す、と身体を横に逸らし、躱す。
「そんなもの振り回すと危ないよ?」
 それだけ呟き、手をしゅっ、と動かす。すると、今の一瞬でジャンヌは糸に縛られたようで、前のめりになった状態で動きがとまる。
 続いて小花とのるんも拘束しようとするが、小花が前に出て、
「のるん様はわたくしがお守り致します!」
 と、【ガードライン】を発動する。だが、ガードラインは自分の背後にいる人物を守るスキルだ。のるんは糸を逃れたが、小花は拘束された。
「面倒くさいなぁ」
 そう言って、さらに糸を繰り出そうとしたところで、りんにとってはさらに面白くない状況になった。
「おっと、そこまで!」
 と、二人の男女が間に入って来たのだ。
 そしてその女の方、双葉 葵(ふたば・あおい)は何の躊躇もなくりんに特攻する。
(【超人的精神】+【超人的肉体】で強化。【ディメンションサイト】で視界の確保。さらに【ポイントシフト】で不意打ち。いける!)
 双葉はりんの懐に飛び入り、
「【ブラインドナイブス】!」
 ありったけの打撃を叩き込んだ。顎、脇、膝、股、鳩尾。どれも的確に撃った。はずだった。
「……、畜生」
 りんはその全てを避けきっていた。顎は首を動かし、鳩尾は身体を逸らし。そしてその全ての攻撃に、仕込みナイフでカウンターしていた。
 おかげで、双葉の拳は切り傷だらけになっている。
「しばらく人を殴れそうにないじゃない。どうしてくれるの……よッ!」
 吼え、蹴りを繰り出す。さすがに少し怯んだところをみて、双葉のパートナー、遠部 明志(えんぶ・ひろし)も攻撃に出る。
「【鳳凰の拳】!」
 拳でりんの胴を撃とうとする。しかし、
「それは喰らったらヤバそうだね」
 りんは拳が繰り出される前に、糸で縛り、動きを止めた。
 遠部は腕を動かすが、びくともしない。
「んー……。なんか皆私を狙ってるみたいだね。少し身を隠すかー」
 りんは呟き、近くにあったパイプを頼りに、壁を上っていく。あっという間に姿は見えなくなってしまった。
 呆然とそれを見つめ、遠部は呟く。
「あぁ、くそ。逃げられたかぁ。それにしても、本当に真っ白だったなぁ。それでいて刃物使いの殺人鬼。まさに『白い悪魔』だな」