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夏合宿、ざくざく

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ほりほり



「とりあえず、海の中から探すといいうさー」
「それじゃあ、ゴムボートか小船を調達してくる」
 ティー・ティーの言葉に、源鉄心が巫女さんたちの服を見て、乗り物を探しに出かけようとしました。
「必要ない……」
 いうなり、テンク・ウラニアが、バッと着ていた巫女服の前をはだけさせました。テンコ・タレイアも、勢いよく白衣を脱ぎ捨て、続いて緋袴をストンと下に落とします。もちろん、下には水着を着用しています。準備万端です。
「さあ、いこー!」
 編み上げのロングブーツをポイと脱ぎ捨てたテンコ・タレイアが、ジャブジャブと海の中に入って行きながら、テンク・ウラニアに声をかけました。
 テンク・ウラニアの方は、脱ぎ捨てられた服をテンコ・タレイアの分まできちんとたたんで海岸に積んでいるところです。
「うんうん、海の中なら、突然幽霊に遭遇しても、水に濡れているから大丈夫うさー」
 ちょっと、昔の百物語のときの黒歴史を思い出しながら、ティー・ティーが安心しました。水着を着ていますし、腰から下は海の水に現れています。備えあれば、憂いなしです。
「二人共巫女さんなのに、ずいぶんと性格は違うようでござるな。テンクにテンコ……。まさかとは思うが、正体は狐ではござらぬよな?」
「まさかあ」
 スープ・ストーンの言葉に、テンク・ウラニアが肩をすくめて否定しました。
「早くうー」
 海の中から、テンコ・タレイアが源鉄心と共に手を振ります。その豪快にゆれるたっゆんに、ちょっとスープ・ストーンが注視しました。
「そう言えば……、拙者、ぷるぷるにゆれるプリンを持ってきているのでござるが、出発する前にみんなで食べてはどうでござる? あっ、もちろん、鉄心殿の分はござらぬから、安心して……」
「さっさと行くにゃ!」
 イコナ・ユア・クックブックの命令で、ミニいこにゃたちが、ミニいこにゃナイアガラキックで次々にスープ・ストーンに蹴りを入れて海に叩き込みました。
 とりあえず、宝探し会場の一番沖の所の1番区画を目指して、進んで行きます。
「こんな浅瀬に、幽霊って出るうさ?」
 結局腰のやや上程度しかない深さに、ティー・ティーが首をかしげました。確か、船を難破させるという話でしたので、沖の方が可能性は高いように思えます。とはいえ、ゲームとしての宝探しですから、あまり深いところに埋めるのも探すのも大変です。この程度の深さが妥当という判断なのでしょう。
「これだけ人が集まっていますから、きっと引き寄せられて来ますよー」
「ええ、いい囮……」
 しれっと、巫女さんたちが言いました。
「その幽霊というのは、何者なんだ?」
 ジャブジャブと水をかき分けて進みながら、源鉄心が巫女さんたちに聞きました。
「正確には幽霊ではないはず。もし、彼女が私たちの探す方であるならば、それは長く封印されてきた剣の花嫁」
 テンク・ウラニアが答えます。
「知り合いですかうさ? もしかして、その人も巫女さんうさ?」
「いいえ、離れ離れになったのはまだ私たちが巫女となる前でしたから。もうかれこれ、数千年前のことになるでしょうか」
 さりげなく、テンク・ウラニアがとんでもない数字を出します。
「いずれにしろ、もし、ここで幽霊と呼ばれている者がコウジン・メレ様であれば、連れて帰るのが私たちの役目です」
「着いたにゃ」
 浮き輪代わりに浮かべたスイカにつかまりながら歩いていた、イコナ・ユア・クックブックが言いました。どうやら、最初の哨戒場所に着いたようです。
「うさー」
 周囲を調べていたミニうさティーたちが、何やら水中から箱を掘り出しました。お宝として埋めてあった『メカ小ババ様型貯金箱』のようです。
「ちゃんと、元通り埋めておくのですうさー」
 ティー・ティーが、元通り戻すように、ミニうさティーたちに言いました。
「何もいないようですうさ」
 ティー・ティーが言いました。ミニうさティーたちをからの報告を聞くまでもなく、見れば分かります。
「パトロールだからな。移動しよう」
 源鉄心が、皆をうながしました。

    ★    ★    ★

「ここも異常なしだな」
 周囲を見回して、源鉄心が言います。
うっ、迷惑だなあ……
 5番区画でお宝を探していた清泉北都が、ぞろぞろとそばを通りすぎていった源鉄心たちを軽く睨みました。
 海の中に全身を沈めて、四つん這いでそっと海底の砂を掘っていたのです。乱暴に掘り起こしたのでは、海底の砂が舞いあがってしまって何も見えなくなってしまいます。
 それだけ注意を払って探していたのに、無神経なミニいこにゃーやミニうさティーたちがジャブジャブと半ば溺れているのではないかと思うように派手な水飛沫を上げて通りすぎていったのでした。
「こういうのは、丁寧に探さないと、ダメなんだよお。いい物を見つけて、クナイに見せてやらないとお」
 超感覚全開の犬耳尻尾の犬かき状態で、清泉北都が丁寧に砂を掘っていきました。
 つん。
 指先に、何かがぶつかります。
何か見つけた?
 いそいそと、清泉北都が砂を掘って、お宝を掘り出しました。
 出て来た完全防水の箱を開けてみると、中から何かの木彫りの人形が出て来ました。どうやら鳥のようです。
「見覚えがあるような、嫌な感じのような……」
 説明書があります。
 ――『鷽人形』、この人形に祈ると、一度だけ本当のことを嘘にできる。
「こ、これは、どう使ったらあ……」
 なんだか、とても危険なお宝を掘り当ててしまったようでした。